── 映画『アナザー Another』は山﨑にとって自身初となるホラー作品。主演が決まり、台本に目通したときの率直な感想を伺った。

「ホラーといっても単純なホラーだけではない要素が詰まっているので、新しいジャンルの作品という印象を受けました。実際に自分が演じたときのことを振り返っても、不思議とホラー作品を撮ったという感覚はないんですよね。橋本愛さんが演じる見崎鳴との青春だったり、大人として成長していく姿だったり、いろんなものが盛り込まれて映画の世界観が作り上げられているからかもしれません。もちろん、原作を読んだときに感じた怪しさや独特の空気みたいなものはしっかり表現されているので、原作ファンが観ても違和感なくアナザーの世界に浸れるんじゃないかなと思います。今回、初めてのジャンルの挑戦で、主演をやらせていただきましたが気負いすぎないようにすることを心がけましたね。常にがんばらなきゃと思っていたけど、主演だからといっていつもより張り切るのはちょっと違うかなと。たくさんの共演者さんに囲まれての撮影だったこともあって、主演っていう実感やプレッシャーはなかったですね。撮影を終えて、こうして取材で“主演”といわれてはじめて、主演だったんだなぁと思うくらいでした」

── 映画の主人公である・榊原恒一の人物像についてもたずねると……。

「一見、もの静かでネガティブそうにみえるけれど、意外と好奇心が旺盛だしポジティブな男だと思います。母が亡くなっていたり、父の仕事の都合でいきなり転校したり、肺気胸をわずらっているなど不幸なことが続いているけれど、それでもごくごく普通に毎日を送っているから。演じる上では、今しか出せない若さとか不器用さ、そのときの自然な演技を心がけました。橋本愛さんとは二度目の共演だったこともあり、お互いの間の取り方がわかっているからすごく安心感がありました。すんなり恒一になれたと思います」

── 初めてのホラー作品の現場は「とにかくみんなが仲良く、明るかった」とのこと。撮影現場で撮られた映像がどんな風に編集されるのかも楽しみのひとつだったとか。

「見所のひとつでもある怖いシーンは特殊メイクをほどこして撮影されていました。現場では実際にどんな流れになるかはわからなかったので、出来上がった作品を観たときは“へぇ?こんな風になったんだ”なんて感動したり、意表をつかれたり。共演者のみなさんが特殊メイクしているのを見るとうらやましかったですね(笑)。リアルな特殊メイクも映画の見所ですが、僕の中で印象的だったシーンは、冒頭で見崎鳴と出会うところ。あそこから物語が始まっている……という象徴的なシーンだと思うので。あとは古澤監督ならではの撮り方にも注目してもらえると嬉しい。水の入ったコップ越しに僕の目元が映し出される映像、鏡などを巧みに使って直接ではなく間接的に見せる手法などおもしろいです。監督の撮り方がアナザーの世界観をより独特なものに仕上げていると思います」

── クライマックスである合宿所での撮影は、携帯電話の電波が届かない山の中で行われたとか。

「携帯電話って当たり前にあるものだけど、使えないからといって不便なことはひとつもなかったですね。むしろ縛られなくてすむので、撮影に集中できた。他の共演者さんもないならないで平気そうだったし、その分みんなでコミュニケーションできたんじゃないかな。同世代ならではの恋バナとかで盛り上がりました。撮影は、三重県でオールロケだったんですが、部活の合宿をしているようで本当に楽しかった」

── 現在、山﨑は主演映画の公開とともに連続ドラマ『黒の女教師』にレギュラー出演中。多忙を極める毎日を送っている。

「アナザーの恒一が静かながらまっすぐな正義感を持っているのに比べると、ドラマのキャラクターは優柔不断な感じかな(笑)。どっちが自分に似ているかはちょっとわからないけど、今の自分と同世代を演じているので抱えている悩みに共感はできます。勉強と仕事の両立は大変ですから」

── ８月４日の公開にむけて、最後にメッセージをお願いします。

「自分の学校にあった七不思議と照らし合わせても面白いかと思います。大人が観たら学生時代にひたれるんじゃないかな。ストーリーもホラーミステリーなので展開が読めなくてドキドキすると思います。暑い夏にぴったりの映画なので、ぜひ映画館で観てほしいですね」