葵わかな(以下、葵)「台本を読んで、『舞うシーンが多い……!』と覚悟しましたが、それも含めて楽しみでした。クランクインの1ヵ月前に、広島から先生が東京に来て、神楽を教えてくださいました。広島の神楽は跳んだり跳ねたりとアクロバティックで、しかも重心を低く保つので膝が悲鳴を上げてしまい、整体にも通いました(苦笑)」
葵「練習は午前の部と午後の部があったので、学業の合間を縫って、参加しました」
中村ゆりか(以下、中村)「部活みたいだったね。わかなちゃんはこんなに細い体でよく頑張ったと思います。広島でロケが始まってからも、その日の撮影が終わってから、夜は神楽のお稽古をして」
葵「特に後半は怒涛の毎日でした(笑)」
中村「私はわかなちゃんに比べるとゆとりのある日もあったので、役では咲子を見守り、私自身もわかなちゃんを見守る日々でした」
葵「実家のシーンは市役所の方のおうちでしたし、地元の神楽団がお稽古をする集会所で神楽の練習や撮影をさせてもらいました。本当に地元密着という感じで、地元の方とお話する機会もたくさんあったので、「がんばってね」と声をかけていただくたびに、「もっとがんばらなきゃ!」とやる気になりました」
中村「私は長期の地方ロケが初めてだったので、地元の方と馴染めるか不安でした。でも、わかなちゃんが言ったように、地元の方が快く受け入れてくれて、私達が自然体でいられる空気をつくってくださったおかげで、居心地がとてもよかったです。地方ロケならではの心のつながりといいますか、一体感を感じる現場でした」
葵「しかも、事務所が同じで、年齢も近いゆりかちゃんと一緒だったので、全然寂しくなかったです。共演は初めてだけど面識があったので、すぐに緊張も解けました。一緒に御飯を食べに行ったり、スーパーに買い物に行ったりするだけでも楽しかったです」
中村「よかった! 私も全然帰りたいなんて思わなかったな」
葵「ないです。加藤さんは加藤さんです(笑)」
中村「加藤さんはあだ名をつけてほしそうだったんですけど、そこはあえての加藤さんで(笑)」
葵「咲子は家族のことでいろいろと悩んではいるけれど、大まかにいえば普通の子。他の3人のキャラがわりと濃いので、もうちょっと暗めに演じたほうがいいのかなと考えました。でも、これは神楽を知ってもらうドラマなので、視聴者の方が咲子の目線で作品の世界に入っていくのが正解だから、あまり癖のある子じゃなく、普通の子だと念頭に置いたうえで、咲子の悩みや感情の起伏を演じていきました」
中村「私は今までにない役を通して、神楽にもふれる日々が楽しかったです。青春ドラマって今しかできないじゃないですか。年齢を重ねていくうちにどんどん機会が減っていくと思うので、今回、思いっきりできてよかったなと思います」
中村「撮影前の本読みで、監督から『10歳下げて』って言われたのですが、それくらい、前の作品の落ち着いた喋り方を引きずっていたんです。今回は演出を受けながら前の癖をどんどん除去して、キャラクターをつくっていきました」
中村「事前にいただいた方言指導CDを何度も聞いて、声に出して練習して、それでも本番になると崩れてしまったり、直していただいたり、難しかったです。でも、もともとイントネーションに癖があるし、人よりも喋るテンポが遅いので、今回のように自分からかけ離れた広島弁の台詞を言うことで、快活で騒々しい珠希というキャラクターをつくれたと思います」
葵「ふだんはゆっくりと柔らかく話すので、珠希のガツガツとしたきつい話し方がけっこう怖かったです(笑)」
中村「珠希の面倒くさい性格を表現するたえに、リズムやスピードは相当意識しました」
葵「咲子も面倒くさいけど、自分のなかでごちゃごちゃ考える面倒臭さ。珠希は周りに迷惑をかける面倒臭さだよね(笑)」
中村「空気を読まないから」
葵「本人はスカッとしていていい子ですよね。私は好きです」
中村「よかった! 私も嫌いじゃないです(笑)」
葵「当初は1日で撮る予定だったんですけど、どうしたら神楽がよりよく見えるか、咲子が舞い終わったあとに面を外して見せる表情のタイミングをどうするか、監督といろいろ話し合って、2日かけて撮ることになりました」
中村「近くで見せていただいたんですけど、わかなちゃんは、本当に、本気でした」
葵「ドラマでこれだけ長い準備時間をいただけることが貴重だったので、吸収できるものはすべて吸い上げて本番で発散せねばという心境でした。やっぱり、地元の人たちが大切にしてきたものを、それを全然知らなかったよそ者に手渡すのって、気持ちがいいものじゃないんだろうなとも思ったんです。私が地元の人の立場だったら、応援はしますけど、本気でやってもらえなければ、納得できない。だから必死にやりました」
中村「神楽という広島の伝統芸能を題材にした新しい試みの青春ドラマにわくわくしながら参加しました。個人的には、今回の新しい役柄への挑戦を機に、役幅をもっと広げていきたいです」
葵「このドラマを通して、神楽の魅力が全国各地の方に伝わったらいいなと思います。私はこれまで伝統芸能に対して、敷居が高いものだと思っていたんですけど、この作品を経験して、意外とそうでもないことがわかりました。伝統芸能にかぎらず、何事もよく知らないのに印象で決めつけず、踏み込んでいきたいなと思っています」
Writing:須永貴子
TV
11月30日(水)22:00~、NHK BSプレミアムにてO.A
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