中川大志「千太郎は、僕にとって一生できない役だと思いました。最初にお話をいただいて、マンガを読ませていただいたとき、なぜこの役が自分のところに来たんだろうって(笑)。これまで演じたことがなかった役ですし、自分でもこういうイメージがなかったので、今まで僕の作品を観てくださっている方はなおさらだと思います。でも、ビジュアルもそうですけど、実際に演奏をしたり、いっぱい挑戦できる自分にとって未知の役をいただける機会はなかなかないと思うので、嬉しかったです。完成作を観たとき、知らない自分がスクリーンの中にいると思いました。自分だからこそ、このキャラクターにはこの映画でしか会えないんだなって思って。それぐらいこの映画で、この瞬間でしか残すことができない役だったと思います」
小松菜奈「私も出演が決まってからマンガを読ませていただいたのですが、こんなに爽やかな3人の関係が描けるのか最初は不安でした。原作の舞台になった長崎の佐世保で撮影をしたんですけど、知念くんや大志くんと日々一緒にいて、同じ空気を吸って、同じものを食べて制服で過ごしていると、昔からずっと一緒にいる感じで自然な空気感ができて、3人それぞれがキャラクターとして生きている感じがしました。でも、撮影が進む中、二人はピアノとドラムがどんどんうまくなっていって、自分は律子として何が残せるのかなって。みんなどんどん先に行ってしまうし、取り残されてしまう気持ちがあって、不安でした。と同時に、どうしたら、作らないで自然と律子としていることができるのかということも考えました。知念くんも大志くんも本当に仲が良くて、ふと見るといちゃいちゃしていて(笑)」
中川「(笑)。うん、いちゃいちゃしていたかも」
小松「現場で見ていて、本当に仲がいいんだなって。それを見ているだけで安心して優しい笑顔になれました。一歩下がって見ている感じ、それが律子なんだろうなって。最初はそれがわからなかったんですけど、撮影を通して、律子ってこうかなって気付けるように、自然と二人がさせてくれたと思っています」
中川「僕たちからすると、菜奈ちゃんが律ちゃんとしていてくれたから安心感がありました。練習のときから見てくれているし、自分のことのように、終わったあと良かったって言ってくれて。その場で起きている演奏シーンを、菜奈ちゃんが律ちゃんとして受け止めて感じてくれている。律ちゃんのそのリアクションで観客の方々には感動が伝わると思います」
小松「お互いに高め合いながらできたと思います」
中川「本当にそう思います」
小松「スタッフさんも同じで、二人が演奏を始めるとすごく嬉しそうで楽しそうでしたしすごく熱のある現場でした。撮影が終わったあともみんなで熱く語って、一緒に泣いたり、感動したり、本当に愛で溢れていました。私も練習を聴いているだけで自然と涙が出てきて。二人が楽しそうな顔をしていたり、時に真剣になったりというのが音楽で伝わってきて、心に響きました」
中川「ずっとずっと演奏していたかったです。撮影の前、10ヶ月ほど練習をしたんですけど、映画の『セッション』をすごく意識して、こういうことをやりたいなって参考にしました。半分の5ヶ月は基礎練習に費やし、クランクインの3ヶ月前ぐらいにようやく台本と映画で使う曲が出来あがって、はじめて聴いたとき、鳥肌が立ったことを覚えています。『なにこれ!かっこいい!!』って。でも、しばらく経って、『あれ?これ俺がやるのか』って(笑)。残り3ヶ月切っているぐらいのとき、この曲をやらせるなんてある意味賭けだと思うんですけど、逆に言えば僕たちを信じてくれているって思って燃えました。おおまかにこういうふうにやっていこうっていうのは決まっていましたが、ジャズって基本的にアドリブなので、今振り返るとよくやったなって自画自賛(笑)。もう2度とできないと思います」
小松「ちょっとどころでなくすごくかっこよかった! 一から自分たちでやって、二人の音楽を作っていましたから。手元は別撮りっていう場合もあると思いますが、二人は本当に演奏していました。ここまでできるなんてすごいって、スタッフさんもみんな言っていて、感動していました。三木(孝浩)監督は弾いたり、叩いているのをちゃんと見せたいって、撮影はなるべく手元から顔にカメラがいくようにスタッフさんたちと練っていました。どうやったらかっこよく撮ることができるのか。もうすでにかっこいいんですけど、さらに魅力的にってみんな試行錯誤していて、この現場本当にいいなあって感じました」
中川「なんとここでは、三木監督が自らカメラを持ったんです。2日間セッションを撮ってきて、自分もこの音楽の中に入りたいって。最後の知念くんのピアノのカットを撮らせてくださいってカメラマンさんにお願いされたみたいです。ずっと練習を見てくれていて、それぐらい三木監督の愛があったんですよね。でも、それを聞いたあと、なんで僕のドラムは撮ってくれなかったんだろうって思いました(笑)」
小松「あはは(笑)」
小松「どこを撮っても絵になるんです。狭い道とか味があって、ここを律子は千太郎と歩いていたのかなって想像できました。佐世保のおじいちゃん、おばあちゃんがすごく元気で、おばあちゃんしかいないお店なのに朝5時までやっていたり、パワーに満ち溢れていて、元気をもらいました」
中川「場所がきれいなので、菜奈ちゃんはよく写真を撮っていたよね」
小松「うん、たくさん撮った。あと、ごはんもおいしくて! みんなで佐世保バーガーを食べました。差し入れでいただいたんです」
中川「佐世保バーガー食べたね! 佐世保バーガーもおいしかったし、佐賀牛の焼肉もおいしかったです。大分では豊後牛を食べました。あと大分ではお肉屋さんが作っているとり天も食べたんですけど、人生で一番おいしいっていうぐらいの勢いでした。あと、コロッケもおいしかったです」
小松「昔ながらのお店がたくさんあって、毎日昭和に触れていました。地方ロケはやっぱりすごく楽しい」
中川「一ヶ月ぐらい行っていたよね。土地の力はすごいなって思いました」
小松「学校の屋上から佐世保を一望できたんですけど、すごくきれいでした」
中川「海の遠くのほうに軍艦が止まっていて、こっちでは絶対見られない風景でした。海も山もきれいで印象に残っています」
中川「登場人物みんなが生き生きとしていて、すごく魅力的です。また、音楽を通して、千太郎と薫、周りの人達が繋がりあっているんです。いろいろ抱えながらも、そういうものから解放させてくれる音楽だったり、友だちだったり、恋だったりに出会っていきます。また、主人公の薫は、新しい場所にきて、新しい友だちに出会い、新しいことに挑みます。千太郎が「細かいこと気にせんと飛び込め!」っていうシーンがあるんですけど、まさにこの言葉の通り、ワクワクするような予感に満ちていて、新しいことが始まる春にぴったりな、背中を押してくれる映画だと思います。そして、青春を思い出させてくれる映画だと思います」
小松「年齢を問わず観ていただける作品だと思います。千太郎の気持ちでも、薫の気持ちでも、律子の気持ちでも見られて、自分も映画の中に入っている気持ちになると思います。美しさや温かみが、映画にぎゅっとつまっていて、画面から溢れ出ていているんですよね。一人でも多くの方に、この作品の魅力を味わっていただけたら嬉しいです」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
3月10日(土)公開
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