「ずっとストレートプレイをやりたいと思っていたので、お話をいただいたときは純粋に、すごく嬉しかったです。演出の森(新太郎)さんの舞台も見させていただいていたので、“あの森さんとご一緒できるの!? ”っていう嬉しさも大きくて。ただ、台本を最初に読んだときには一度読んだだけではわからない壮大さというか難解さというか…初めて“わからない”と思ったんです。本当に“これ、どうしよう”って(笑)」
「すごく難しい話かなと思いきや、稽古前の準備としてみなさんと行った読み合わせでは言葉のテンポとか掛け合いのリズムで笑えるところも多く、“このお話ってこういうテイストなんだ!”という発見がありました。森さんも“これ、実はコメディなんですよ”って。確かにそうなんです。欲望にまみれてがむしゃらにやりあっているからこそ、周りから見るとその様子がちょっと滑稽に思えてしまう。特にアレー以外の人たちは相手をおちょくるような言い回しとか“覚えるの大変そうだな”って思う表現をたくさんされていて(笑)、聞いていて本当に“面白い!”と思いました。その経験を踏まえてまた自分で台本を読み込んだりしていると、台詞量は多いけれどその台詞の中にひとつのベースがあって、さらにそれぞれの人物のリズムがあって……きっと、ちゃんと届けばすごく笑ってもらったりとか、お客さんを言葉ひとつでいろんな気持ちにさせることができるような演目なんだと改めて実感しています。そして自分自身がそこに加わることがすごく楽しみ! 人間の醜さを描いているんだけれど、それをいかに軽快に表現できるかというのがテーマ。そのためのハードルはすごく高いと思うんですけど、すごく素敵なキャストのみなさんとご一緒できるので、遅れを取らないように飛び込んでいくだけです」
「初めは自分の中で“アレーってなんなんだろう?”というハテナがたくさんあって、本読みにもそのハテナを抱えたまま参加したわけなんですけど、やはりやってみてわかったことがたくさんあります。アレーはみんなが争い、いろいろ謀っている中で唯一そこに加われない人物というか…アレー自身が交渉の材料になっているような、ある意味人権のないような立場ではあるんですけど、そういう彼女の存在というのがこの物語の時代背景を写し取っているなと思いますし、謀りごとに参加したいんだけどできない若さだったり純粋さだったり無知な部分が、実はすごく可愛らしく美しく映るのかなと思っています。年齢もちょうど自分と同じくらい。アレーなりに頑張っているんだけど実は何にもわかっていない純粋さがすごく鍵になると思っていますので、今の自分の感性も活かしながらそこをうまく…まだ稽古に入ってみなければわからないところではあるんですけど、彼女らしい存在の仕方を表現できればと考えているところです」
「“アレーは実は何もわかってなくて、でも最終的にはアレーが一番強く欲望を持ち、みんなと同じ獣になってしまうというところが皮肉で面白いよね”っておっしゃっていた森さんのその言葉が、私の中でとても腑に落ちました。家督争い、一族の大問題というお話の根幹にはひたすら関われずにいるアレーはどうしたらいいんだろうっていう命題に、ひとつの道筋が見えた。アレーにはアレーの時間が流れていて、彼女だけの物語が流れていて、そして最終的にはアレーもなにかが変わっていく。すごく面白いキャラクターなんです」
「舞台ってなんのフィルターもない状態、生でお客様と接することになるので嘘がつけないというか、油断できないなといつも思いますし、そのためにもひとつの作品、ひとつの役にすごく長く向き合えることも嬉しいし…。失敗できない気持ちも大きいけれど、360度その役を全身で演じるということもそうですし、とにかく勉強になることがすごく多い場所。ある意味“修行”というか(笑)。そうやって究極な状態でお芝居をするのっていいですよね。その経験は舞台に限らずどんなお仕事をする上でもとてもいい栄養となってくれています。あとはやはり実際に客席にいるお客様と出会うこと、そしてみなさんのリアクションを肌で感じることはすごくレアだと思っていて。自分が表現したことがどうやって目の前の人に伝わっているのかっていうのが、言葉はなくてもなんとなく空気でわかってしまう。拍手だったり、ちょっと涙ぐんでいる様子が聞こえてくると、“こうやって自分の表現が響いていくんだなぁ”と実体験できて…舞台はもちろんですけど、映像でお芝居をしている時の自分の中にもあっていい感覚だとすごく思うんです。映像の向こうにいる方たちも、舞台のお客様のようにいろんなことを受け取ってくれていて、自分もそのみなさんの気持ちを感じながらお芝居できているな、と」
「不安定な世の中の状況はまだ続いていますので、まずはちゃんと上演できたらいいなって願っています。実際に生で見て、本当にそこで劇中の人物たちが生きていると思えるのが舞台のいいところ。特にこのお話はすごく人間味がありすごく距離が近くて…心と心、感情と感情の距離がものすごく近いお話なので、現代からするとちょっと珍しく映るかもしれないです。同時に、長い間演じられ続けている作品だからこその普遍的な要素もたくさんあります。いろんな人がいろんな時に見ていろんな気持ちになれる物語。それを役者が会話ひとつで見せていくのはすごく大変だと思うのですが、来てくださる方に楽しんでいただけるよう、まずはこれからお稽古、頑張りたいと思います」
「幅広く挑戦したいという気持ちはいつも変わらずなんですが、私、今まではいろんなことをちゃんと自分で決めたいタイプ、だったんです。でも24歳になって、今年はそのこだわりを一回置いて、もっといろんな人の考えだったりとか、いろんな人と触れることによって自分自身もまだ知らない自分に巡り合えるような1年になったらいいなと思っています。なるべくそうならないように意識はしているんですけど、根はすごく頑固なもので(笑)。予定もそうですしなんでもきっちり決めたいほうだから、普通は何か目標があったとしてそこまでいろいろ“遊び”があってたどり着くんだと思うんですけど、私は決めたことに向けては“最短距離”で行きたい(笑)。それはいいことでもあるけど、でも最近は“やっぱりそこに遊びがあるのが大人だな”とも思っていて。だからある意味、今年はもっといろいろと遠まわりしたいなと思っています。何に向かうにしてもその時に生まれる揺らめき、みたいなモノを手に入れたいな。ちょっとした遊び、多少の廻り道、それが…大人のゆとり?? きっとそこには楽しいことも悲しいこともいろいろなコトが詰まってると思うので、それを知りたい。何事にもこだわらず、ゆとりを持って生きていけたらというのが今年の目標。“遊び”を大切に、俳優としても女性としてもさらに豊かになれれば素敵ですよね」
Writing:横澤由香
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