「普段の自分にはない役柄を演じさせていただけるのは、すごく嬉しかったです。でもワクワクと同時に、『うわ、これ、できるのか?』っていう不安もありました(笑)」
「脚本を拝見した際には金髪をイメージしていたのですが、監督から『赤にしよう』とお話しいただき、どんどんちひろというキャラクターが構築されていったと思います」
「いつも事前にしっかり役作りをしていくところを、『あえて役作りをしないで現場に臨む』というのが、今回の自分なりの挑戦でした。演じる前は『すごく難しいだろうなぁ』とか、『どうやってやったらいいかわからないなぁ』と思って、怖かったです。もともと私には考え込み過ぎてしまうところがあるんですけど、今回はちひろ自身も自分のことがあまりよくわかっていない、という設定の役柄だったので、事前に役を固めすぎてしまうのも違うのかなと思っていて。大まかな枠組みはイメージしつつ、後はその場でやろうと思って現場に飛び込みました」
「なぜ“おっさん”キャラになったのかは分からないんですけど(笑)。監督はその場で演出を付けて下さる方。もともと台本には、『荒んでる女子高校生』としか書かれてなかったのですが、監督から現場で『もっとおじさんぽくして欲しいんだよね』と言われて、さらに「任侠映画が好き」という設定も加わりました(笑)。『お前ら雁首揃えて』っていうのも任侠映画の影響だし、『チンコロ』って言われて、『あ、密告か』って即座に理解するシーンとかもそうですね」
「西島さん演じる日村に『ありがとな』って言われて、ちひろが「ズバーン!」って胸を打たれるシーンですよね。西島さんと2人でのお芝居はその時が初めてだったのですが、現場でも『すごくいいシーンだな』って感じました」
「台本にはなくて、その場で監督が演出してくださいました。現場でどんどん付け加えていく演出方法は、私自身、初めてかもしれません。すごく新鮮だったし、現場で監督と一緒にみんなで作りあげていく感覚を味わえました。監督がその場のひらめきをキャストの皆さんに提案されていたのが、とても印象的でした」
「このシーンを撮った日は、クランクインしてからまだそれほど時間が経っていなかったのでドキドキしてたんですけど、西島さんが日村みたいに殴り方を教えてくれたんです。西島さんはすごく兄貴肌で面倒見が良い方なので、まさしく日村の役柄とピッタリでした」
「いやいや、普通のガラスだったので、全然割れなくて緊張しました。石もすごく重いので、何度も練習して。3枚連続で割らなきゃいけないので、1枚割れても『2、3枚目が割れなかったらどうしよう』って、結構プレッシャーでした」
「私にとっての“新たな一歩”は、やっぱり役作りをせずに現場に行ったことです。役によってももちろん違うと思うんですけど、今回はそれがすべて良い方向に働いたと思います。監督と『そうきたか』『じゃあ今度はこうしてみよう』みたいなやりとりを繰り返すなかでキャラクターが徐々に形成されて、それがどんどん濃くなっていく感じが毎日面白かったです。もちろんその分『今日はうまくできるんだろうか?』っていうプレッシャーとか緊張もあるんですけど、それを上回るドキドキ感というか。本当に“生”な感じがして、『やっぱり挑戦してみないとわからないことってあるんだな』って、実感しました」
「挑戦する時って絶対、まずそれをやるかやらないかを選ばなきゃいけないじゃないですか。やる方を選択するのは怖いけど、常にやる方を選んでいけるようにするためには、こうやって挑戦してみて、うまくいった記憶を積み重ねていくことが大事なのかなって思うんです。『やってみたら楽しかった』っていう単純なことが、ものすごく自分の糧になっている気がします」
「それが、実は改めて振り返るとないんですよね。もちろんすべてにおいて100%良いことなんてない。私からすれば100%良いかもしれないけど、誰かから見たら100%悪いかもしれない。だからあくまでも自分にとっては、ということにはなるんですけど、やらないより絶対やったほうがいいなって思います。新しいことをやる時って、自分でも普段以上に頑張るじゃないですか。それ自体、すごく大事なことだと思うので」
「今回は『こういう役を葵わかなにやらせてみてもいいかな』って思ってくださったこと自体がすごく嬉しかったので、これからも「こんな役をやらせてみたら面白いかも」って思っていただけるような人になりたいし、ちひろみたいな自分とは全く違うタイプの役柄のオファーが来たときに、ちゃんと打ち返せる人でいたいとも思います。お芝居はこの先もずっと続けていきたいので、『お芝居ができるなら、どんな役でもやらせてください!』って感じです」
「大人になるにつれて、日常生活で心が揺れることって少なくなっていきませんか? でも、映画や舞台を観て心が動かされることもあると思うんです。それはお芝居をしている側も同じで、自分も悲しい場面だったら心が揺れるし、何かが解決すると心がジーンとするし。そう考えるとお芝居って、日常をよりエモーショナルに生きるために欠かせないものなのかなって思います。違う人の人生を借りて経験できる感情は豊かだなって思うし、それが観ている方にも伝わったらいいなって思います」
Writing:渡邊玲子
MOVIE
9月27日(金)公開
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