「ストーリー自体、テンポがよく4週目には生まれ育った京都から大阪へ舞台が移ります。撮影もあっという間に過ぎていき、気づいたら終わってしまうんじゃないかと思うくらい(笑)。今はまだ少し余裕があって、チャンスがあればもう1回ヒロインを演じたいなと思えるほど楽しんで撮影をしています。もちろん楽しいだけではなく、撮影をするたびに次への課題が見えてきて、日々、試行錯誤。“笑顔”ひとつとっても、表情の違いを出せたらと考えています。子ども時代は顔全体を使って笑いたいなって思ったし、次は体も使って表現したい、さらに年を重ねたときの笑い方は……とバリエーションをちゃんと作りたいんです。課題に向き合い、挑戦していくことができるのは長丁場の“朝ドラ”ならではなのかな。普通のドラマだったら撮影が終わるころですが、てんが自分のなかにすっと入ってきた今が、本当のはじまりのように感じています」
「台本を読んだときは明るくて、笑い上戸で、表情がコロコロ変わる女の子という印象でした。私は熟考して行動するタイプだし、どちらかというとネガティブ(笑)。楽天的なてんは自分とかけ離れた女の子だなと感じていました。でも、てんはただ明るいだけでなく、辛いことがあっても気持ちをポジティブに変換できる人なんですよね。藤吉(松坂桃李)の母・啄子(鈴木京香)に厳しく当たられるのですが、逃げるのではなくしっかりと受け止める強さとおおらかさがある。相手の悪いところに目を向けるのではなく、良いところを見つけて好きになり、笑わせてあげたいと思えるのってすごいことですよね。また、落ち込むことがあっても前向きに笑っていられるところが魅力的だなと感じます」
「結婚して子どもができるあたりから、てんと自分が一緒になってきていると感じたんです。てんが母になるとき、私も役ではありますが初めてお母さんを経験するわけです。どう気持ちを作ればいいのかと悩みましたが、お互い初めてなので、そこで自分とてんがリンクしたんですよね。赤ちゃんを抱いたときに“子どもってこんなに重いんだ”と感じたことや、“なんでこんなに泣くんだろう”と戸惑ったことも初めての経験。それはてんにとっても初めてなので、気づいたら一緒になっていた感じですね。ただ、10カ月という短期間で30代、40代、50代と経験していくのは大変なことだと思っています。普通の女の子が、さまざまな人と出会ってたくさんのことを吸収して、寄席の経営者になっていく。その過程を私も一緒に歩んでいくことで役とともに成長できたら嬉しいです」
「幼なじみの風太を演じている濱田岳さんは毎回アドリブを入れてくるんですよ。リハーサルと本番でいつも違うことをするので、驚かされてばかり。京都編では藤吉さんからの手紙を渡してくれたあとの細かい芝居に注目して見てもらえたら楽しめると思います。NGにはならなかったけど、肩が震えるほど笑ってしまったこともありました。大阪編で登場する芸人役の藤井隆さんのリアクションも面白いです。一日一笑いはしてます。夫となる藤吉さん役の松坂さんも芝居中に色々と仕掛けてこられるので、笑わないように耐えています(笑)。松坂さんは撮影の合間もスタッフさんの動きにカッコいいナレーションをつけて“情熱大陸”風に語られたりお茶目なところがあるんです。私、笑いに関してはシビアなほうだと思っていたのですが、『わろてんか』の現場ではついつい笑っている自分がいます。毎日、大笑いしています!」
「朝ドラが初めてということもあり、撮影現場の雰囲気だったり、どう撮影していくのかわからないことだらけで最初は不安でした。ヒロインに決まったときはプレッシャーを感じていなかったのですが、撮影が進むにつれて少しずつ感じるようになってきたんです。全て背負っていたら押しつぶされてしまいそうで、受け止めることよりもどう避けるかばかり考えていました。てんが成長していくなかで、自分がその年齢に追いついていけるのか悩んでいたころ、松坂さんが『(わろてんかは)てんと藤吉の話でもあるからなんでも相談してね。僕も相談するから』と声をかけてくださったのがとても嬉しかったですね。そこから、監督や共演者の皆さんに自分が考えていることを話せるようになったんです。皆さんの思いを知ることで、助けてくださる方が周りにたくさんいることがわかって、一人で頑張らなくていいんだって気持ちがラクになりました。サポートしてくださる方達に私がお返しできることといったら明るく、笑顔でいることだって気づいたんですよね。それはてんと通じるところ。『辛いときは無理して笑わなくていいよ』と言ってくださいますが、現場で笑いが起きると心がほっこりするので、私が笑顔でいることで誰かを和ませることができたらいいなと思うんです。そういうことを考えられるようになったのも、成長の証なのかなと思います」
「宝塚やマンガ、猫など好きなもの! 家族の存在も大きいですね。仕事は趣味に負けないくらい好きなことなので、辛いことがあっても頑張れるし、終わって振り返れば楽しい思い出ばかり。今は、大阪での暮らしを楽しんでいますよ。おいしい焼肉屋さんやお寿司屋さんを見つけたので、ときどきパワーを注入して。おいしいものを食べると幸せな気持ちになれますからね!」
「作品のなかでは母のしずさん(鈴木保奈美)が素敵だなって。可愛らしくてやさしくて、朗らかな藤岡家はしずさんの存在が大きいと思います。ただやさしいだけじゃなくて、悪いことをしたときはきちんと怒ってくれる。しずさんのような母親になれたらいいなと思います。私が大切にしたいのは、気配り。気をつかうのではなく、気を配れる人。自分がしてもらって嬉しいことを自然としてあげられる人でありたいですね。当たり前のことがちゃんとできる大人の女性になりたいです」
「先日、『ひよっこ』のヒロインを演じた有村架純さんとバトンタッチセレモニーをしましたが、まだ先のことは想像がつきません。ゴールを考えると、その前に50代をどう演じたらいいのかと不安になりますし……。今は撮影がとても楽しいので、この気持ちをキープしたままクランクアップできたらと思っています。スタッフの方を含め、共演者の皆さんは家族のような存在。10カ月限定ではありますが、皆さんと悔いが残らないよう完走したいです。撮影が終わったらきっと淋しいんだろうな……。ドラマはまだ始まったばかりなので、てんの成長を楽しみにしていてください。新井美羽ちゃんが演じる幼少期のてんは笑顔がとってもチャーミングなんですよ。最初の1カ月でストーリーが目まぐるしく展開していきます。京都から大阪へ舞台が移ると衣装もガラリと変わりますし、全体のトーンが変わるのでその変化も楽しんでもらえたら嬉しいです。笑いの力がどう広がっていくのかも見て欲しいですね。あわただしい朝の時間ですが、皆さんの一日のはじまりにクスッと笑えて元気が出るドラマになるよう頑張ります」
Writing:岩淵美樹
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