北村匠海「とにかくお利口さんで、素晴らしかったです。本能で生きてるんですけど、僕らの感情にちゃんと寄り添ってくれて。言葉が通じないので、『こうしてくれ』と言えないから、毎シーンちえの奇跡に賭けるしかない。毎度毎度、ちゃんと奇跡を起こしてくれました」
小松菜奈「ラストの車内でのシーンでは、私がちえを抱きかかえていました。私のセリフが長かったので、途中で暴れたりしないかと心配しましたが、そんなことはまったくなく、ずっとおとなしくしてくれました。現場の空気も私達の感情も読めていたんでしょうね。日々進化していたし、長谷川家はさくらなしでは成り立たない家族になりました」
小松「かわいいですよね!」
北村「あそこも、『ああなればいいな』というみんなの願いがあって、ちえが奇跡を起こしてくれました。長谷川家で一番の大御所感があったよね。『はいはいやりますよ』みたいな(笑)」
小松「そうそう! 『見たいのはこれでしょ?』みたいな(笑)」
北村「僕らは下っ端でした(笑)。ちえには全部わかってるんですよね」
北村「家族という近い繋がりを永瀬さんと寺島さんと持てること、どんな芝居が巻き起こるんだろうという期待にわくわくしました」
小松「パワフルで明るいお母さんが引っ張って、お父さんが優しく包んでくれたので、子供たちは『何をやっても大丈夫』という安心感のなかで、自由にお芝居させていただいた感覚があります」
北村「家族の団らんのシーンはアドリブが多かったです。映画の中盤で大きな壁が立ちはだかるまでは、ありふれた日常の幸せを噛み締めながら、笑いや会話の幸福感を大事に演じたつもりです」
小松「美貴は自由奔放で天真爛漫な末っ子です。欲や感情のままに生きていて、次になにをやらかすかわからない小悪魔っぽさもあるので、観た人が『この子は何なんだろう?』と戸惑うような、得体のしれない子になればいいなと思いました」
北村「絶対的ナンバーワンの兄の背中を見て育った薫は、無個性な自分に悶々としています。コンプレックスを糧にする少年を演じることは、美貴や一の気持ちを受ける芝居が多かったこともあって、難しくはなかったです。ただ、ストーリーテラーとしてナレーションも担当しているので、主観の薫と切り離して、薫の気持ちが声に乗らないように、気をつけました」
小松「美貴の気持ちは、100%わからないわけではないです。私も兄が2人いて、兄が家に連れてきた彼女に『あなた誰!?』という気持ちになった経験があります(笑)家族しかいない空間に、兄が恋愛感情を抱いている人が入って来る状況は、妹にとってはちょっと複雑なものがあるんです。その感情があそこまで狂気的になるのは、わからない部分もありましたが、演じながら発見するものもありました」
北村「小栗旬さんを初めとする先輩たちが起こしたような波を作る人なんだろうなと思います。平たくいうと同じ世代なんですけど、僕らも引っ張ってくれる人。本人は「そうじゃない」と否定するかもしれないけれど。力量が別格だと思います。純粋に芝居が上手い。それでいて良い意味で芝居にすがっていないドライなところも素敵です」
小松「一瞬で空気を作って、スッと役に入り込んで、飄々とやれてしまう人でした。あまりにも器用で、内面の葛藤があったとしてもまったく見せないので、何を考えているのかわからないところがあります。一緒にふざけてくれるんですけど」
北村「僕は『さくら』を皮切りに何本かご一緒して、努力や葛藤は見せないけれど、裏のない人だと思いました。眠いときは眠そうだし(笑)。いろんなスイッチがある魅力的な人だと思います」
北村「みんな目が死んでいます(笑)」
小松「三白眼が揃いました(笑)」
小松「そんなに深く考えるようなものではないです(笑)」
北村「ロシアン餃子を食べたときのリアクションをなにかやってということだったので、アドリブで白目をむいたら、菜奈ちゃんもむいてきた(笑)。バラバラになってしまった家族がまた繋がりはじめて、昔のように笑い合うというテーマがあったので、笑える感じにしたいなと思ったんです。原作を読んでも、読後感がすっきりしていたので、悲しいお話で終わりたくなかったというのもあります」
小松「普段の長谷川家に戻った安心感があって、私もすごく好きなラストです。ただ、あの白目が使われているとは思わなかったので、びっくりしました(笑)」
北村「人生って『嘘でしょ』という困難が起きるものなんですよね。今年は誰もがそう感じていると思うのですが。僕自身は経験上、乗り越えようと思って乗り越えるんじゃなくて、結果的に乗り越えていたことが多かった。何があっても、踏ん張ってればなんとかなるという気持ちでいます。長谷川家も試練を経て、幸せな方向に進んでいくと思います。彼らの弱さみたいなものがちゃんと描かれているので、今年公開できる意味がすごくある映画になっていると思います」
小松「個人の人生にも、社会的にも、いろいろなことが起きるけれど、止まることってできないから、前に進んでいくしかない。状況に応じて人の考え方も変わっていくし、時間とともに忘れることもあれば、また思い出してつらいときもあるかもしれない。長谷川家もそんな風にこれから進んでいくなかで、さくらの存在の大きさを感じました」
Writing:須永貴子
MOVIE
11月13日(金)公開
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