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ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれたイギリスのハートウォーミング小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を原作に三木孝浩が映画化した『TANG タング』が8月11日より公開される。実写とCGのキャラクターを融合した世界を描くうえで、どのような工夫があったのだろうか。

キャラクターの裏にある感情の揺らぎのようなところが刺さるといいなと思っています

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―― 原作で特に惹かれたポイントはどこにあったのだろうか?

「原作は、いろいろな場所を旅する冒険ファンタジーなので、壮大な話かと思いきや、主人公・ベンの心の旅をテーマに、とても狭い世界での心の動きを丁寧に描いているパーソナルな作品だと感じました。物語で描かれている世界は広いけれど、テーマはすごく小さいところにあると気づいたときに、すごくいいなと思うと同時に、日本を舞台にするのは全然可能だとも思いました」

―― 日本の観客に馴染むよう調整を入れた箇所のひとつとして、主人公夫婦の関係性があるという。

「原作からは、夫婦間のやりとりがかなり直接的だという印象を受けました。映画でも主人公夫婦は結構バンバンやり合っていますが、日本の観客のみなさんが受け入れやすいように、馴染むようにかなり調整しました」

―― コロナ禍で海外ロケは叶わなかったが、だからこそできた表現があると説明する。

「企画がスタートしたのはコロナ禍前。プロデューサーからの『一緒に海外に行きましょう!パラオ行きましょう!』という誘い文句に乗り(笑)、密かに楽しみにしていました。ロボットとダメ男が世界のいろいろな場所を旅する、僕の今までの映画でもロケーションがいろいろと変わる作品はほとんどなかったので、そこも面白いと思っていました。このような状況になったので、もちろん行けず、結局いろいろな合成技術を使って世界を作らなくてはいけなくなったのですが、だからこそ、より派手にデフォルメした世界を作ることができたというメリットがありました。背景の撮影で沖縄などへロケハンやロケに行きましたが、合成なのでキャストは実際に行っていないんです」

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―― 冒頭から、海外の住宅街のような雰囲気が漂う作品となっている。

「日本が舞台の映画だけど、原作が海外の小説だから、せっかくなら思いっきり海外っぽくしちゃおうという話になって。物語も寓話的なので、観客が冒頭で『そういう世界観の話なのね』と入りやすくすると、後から出てくる映画の中の世界も理解しやすくなると思ったんです。参考にしたのはティム・バートンの『シザーハンズ』に出てくる住宅街の感じです」

―― 出来上がった映像で想像以上に良いと感じたのはタングのCGだという。

「現場で『こんな仕上がりになります』とある程度のサンプルは見ていたのですが、タングの芝居がどうなるのかは、やはり出来上がりを観るまでは気になっていました。役者の芝居を撮影した後で、あとはタングの芝居にかかっていたため、正直ソワソワしました(笑)。VFXを担当した白組さんが本当に頑張ってくださって、見た目も芝居もすべてかわいく、ずっと見ていられるキャラクターに仕上がりました」

―― タングに感じる魅力は「何もできないアナログ感」だと微笑む。

「原作でも映画でも録音程度は多少できるけれど、ほとんど何もできません。走っているけれど、歩くよりも遅くて、なかなか前に進まないし(笑)。でもむしろ、何もできない、ただ寄り添っている存在だからこそ、タングの様子を見る側が、いろいろと自由に想像できるところが魅力なのだと思います。ダメ男・春日井健を演じる二宮(和也)くんは最初の顔合わせで、タングは映し鏡のような存在という話をしていて。健はタングに話しかけているようで、実は自分のことを自分に問いかけている。タングが何もできないからこそ、ただ寄り添うだけの存在が成立したと感じています」

―― キャストとの会話の中で、「この映画は成功する」と思った瞬間があると教えてくれた。

「映し鏡の話もそうですが、二宮くんは『自分自身の芝居を見つめ直すきっかけになるんじゃないか』というような話をしていました。だから、チャレンジとして面白いと思ってくれていたようです。映画の中で、健はタングと出会い、その関係性の中で自分を見つめ直すというストーリーが描かれます。そこを二宮くんが役者として何か感じ取ってくれていた。普通なら、ロボット相手にどんな芝居をしようかと考えるのに、本読みの段階でそこまで理解していることにちょっと鳥肌が立ちました。僕の大好きな映画『恋はデジャ・ブ』のフィル・コナーズのようなキャラクターを日本人で演じられる人、そんなことをイメージしてキャスティングしました。あのような塩梅は、二宮くんは絶対巧いだろうと思ったし、結果、やっぱり巧かったです。満島(ひかり)さんは、役者とのキャッチボールをしながら芝居をするのが巧い人、そういう環境で魅力を発揮する人というイメージがあったので、こういう類の作品はどうかな?と思っていましたが、むしろ楽しんでくれました。ちょうど、子どもたちに届く作品に興味を持っていたようです。『ドラえもん』をイメージして、絵美は大人になったしずかちゃん、健はダメなのび太くんを想像していたと、教えてくれました。二宮くんも満島さんもアイドルから俳優という、たどってきた歴史が似ていることもあり、現場に入ったときにはすでに長年連れ添った阿吽の呼吸のようなものがありました」

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―― 原作者が最初の観客とたびたび口にしている三木。原作者のデボラ・インストールとはどのようなやりとりがあったのだろうか。

「ストーリーの中に日本を出してしまうくらい、もともと日本がお好きな方のようです。ロボットと人間の絆や交流はむしろ日本人にとってすごく親和性のある題材だと思うんです。そういった背景もあって、海外の方の原作だからという不安はまったくなく、むしろ、すごく共感できるテーマの作品だと思っていたので、早く完成版の感想を伺いたいです。脚本の段階で、かなり気に入ってくださっていたようだし、最初のビジュアルを出したときもTwitterで反応してくださって、すごく気さくな方という印象です」

―― 三木自身が手に入れたいロボットを聞いた。

「『パーマン』のコピーロボット一択です!やりたいことが2倍できるし、記憶も共有できるところが最高ですよね。同じ時間を2倍使えるのは魅力的です。自分で経験する喜怒哀楽が2倍になることで、人生が豊かになる気がします。同じ時間に一人は南の島、一人は北極に行くことも可能だし、その記憶を共有できるなんて、想像しただけでワクワクします」

―― キーワードである宝物にちなみ、三木自身の宝物についても教えてもらった。

「映画と出会えたことです。現実世界でうまくいかないことがあったり、自分自身の心を理解してもらえないとき、フィクションの世界だけど、主人公が同じ気持ちになっていたり、気持ちを共有できたと感じたときに救われました。そして、将来自分も、そういう世界を作れる存在になりたいと思わせてくれた、それが映画です。人生の宝物といえば、映画との出会いが一番にありますね」

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―― 三木はタングや健のようにポンコツな一面はあるのだろうか。

「物覚えが悪くて、なかなかのポンコツです。だからこそ、映画にして形にすることで、見直せるようにしているのかもしれません(笑)。日常生活を送る中で、例えば空が素敵だなと思った感情を留めておくために映画を作っているようなところもあります。ポンコツだし、記憶力が弱いのはコンプレックスでもあるけれど、それがある種、クリエイティブのモチベーションにもなっています。むしろポンコツでよかったと思っています。だから、映画作りは天職だと思えるのかもしれません」

―― 公開を楽しみに待つファンの方々にメッセージを!

「子どもには、かわいいタングを愛で、純粋に冒険ファンタジーを楽しんでほしいし、大人には、自分を見つめ直すような作品になってくれればうれしいです。キャラクターの裏にある感情の揺らぎのようなところが刺さるといいなと思っています」


Writing:タナカシノブ

インフォメーション

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(C)2015 DI (C)2022映画「TANG」製作委員会

MOVIE

『TANG タング』

8月11日(木・祝)公開


人生に迷うダメ男と記憶をなくしたロボットが繰り広げる冒険を、日本版にアレンジして描く。ある理由から、自分の夢も妻との未来も諦めてしまった春日井健。そんな彼の家の庭に、記憶を失ったロボットのタングが迷い込んでくる。時代遅れな旧式のタングを捨てようとする健だったが、タングが失った記憶には、世界を変えるほどの秘密が隠されていた。

▼公式サイト
https://wwws.warnerbros.co.jp/tang-movie/

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