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不慮の事故で視力と家族を失った柏木明香里と、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた篠崎塁を主人公に、残酷な運命に引き裂かれる男女の切なくも激しい純愛を、吉高由里子と横浜流星のW主演で描いた映画「きみの瞳(め)が問いかけている」。監督を務めた三木孝浩に、撮影の舞台裏や吉高と横浜を演出する上で心掛けたこと、そして「ついに夢が叶った!」という本格的なアクションシーンについて、熱く語ってもらった。

横浜くんで念願のアクションシーンが撮れて、撮影中はずっとワクワクしっぱなしでした

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―― 「きみの瞳(め)が問いかけている」は、これまで三木が手掛けてきた“キラキラ系”とは少し異なり、甘酸っぱい恋愛のエピソードのみならず、かなりダークな部分も描いたスリリングな作品に仕上がっている。どのような経緯で本作の監督を務めることになったのだろうか。

「プロデューサーから企画の提案を受けたのは去年の6月頃で、出来れば年内には撮影したいという、かなりタイトなスケジュールでした。でも韓国のオリジナル版を観せてもらったらすごく面白くて。いままで僕があまりやっていないテイストの作品だったこともあって、『是非やりたいです』とお伝えしました。オリジナルでは塁役の男性が明香里役の女性よりもかなり年上の設定なんですが、日本版では年下の設定にしたいなぁと思った時に横浜流星くんの顔がパッと浮かびました。『でもさすがにこのタイミングじゃ、横浜くんは無理だよなぁ』と思っていたら、なんと横浜くんのスケジュールも奇跡的に合って(笑)。キャスティングって、決まらない時はなかなか決まらないのに、決まる時はこんなにもとんとん拍子に行くものなんですよね。その時点ですべて上手くいくような予兆がありました」

―― 運命に翻弄される男女の純愛を描いた本作だが、三木がこの作品に惹かれた理由は、意外にも「ラブストーリー」の部分ではなかったようで……。

「これまで恋愛映画を多くやってはいますけど、こう見えて僕は大の格闘技好きなんです(笑)。横浜くんが極真空手の世界チャンピオンだったことももちろん知っていたので、『いつか横浜くんで本格的なアクション映画が撮れたらいいな』って、実はずっと狙っていて。だから今回はラブシーンと同じくらい、アクションシーンにも力が入っているんです」

―― 三木が語るとおり、本作には「罪を犯し、夢を絶たれた天才キックボクサー」役を演じる横浜による、迫真のキックボクシングの格闘シーンが登場する。念願のアクションシーンを撮る上で、横浜ならではの身体能力の高さが大いに発揮されたという。

「アクションシーンって、普通は技術的に足りない部分を編集で補ってカッコよく見せたりすることもよくあるのですが、横浜くんの場合、格闘技のポテンシャルというかスペックが高すぎて。全編吹き替えなしで本人がやっています。最初の練習風景を見た瞬間『これはもう、本人が全部やれちゃうな』と悟りました。撮影では上半身裸になるので、クランクイン前にも記録写真を撮っておいたんですが、横浜くんは撮影までに10キロ近くパンプアップしてきていて、その役者魂もすごかった。もし許されるなら、ビフォーアフターを皆さんにもお見せしたいくらいです(笑)」

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―― 視力を失った明香里役を演じた吉高とは、『僕等がいた』以来の再タッグとなる。既に気心の知れた吉高と、三木とは初タッグとなる横浜だからこそ生まれたものがあるという。

「『僕等がいた』は、自分の監督人生においてまさにターニングポイントというべき作品で。あの映画がヒットしたことで、いろんな企画のオファーをいただけるようになりました。吉高さんには『僕等がいた』の撮影時に本当に助けてもらったし、その後も主演作を沢山重ねられてきているので何の心配もありませんでした。むしろ今回は、横浜くんが出してくるものを、吉高さんがどんな風に受け止めるのか楽しみにしていたんです。横浜くん本人もずっとやりたかったアクションが出来るということもあって、すごくモチベーションが高かった分、気負いすぎてしまう時もあったんですが、そこを吉高さんが年上の包容力でほぐしながらもリードしてくれて、すごく頼もしかったです(笑)。横浜くんが吉高さんによって引き上げられていく部分も感じられて、二人のお芝居のコンビネーションが現場でうまくいきました」

―― 「役者のベストアングルを引き出す監督」として定評のある三木だが、本作の主演の二人からも、これまで見たことがないほど魅力的なショットを数多く引き出している。

「吉高さんは今回目が見えない役どころだったので、あえてベストなアングルから少しずらした部分もあるんです。『本当はこの位置から撮りたいんだけど、そこにカメラが入ると塁と目線が合ってるように見えちゃうから、違う位置に入ろうか』といったような足枷が、今回はむしろ良い方向に働きました。『僕等がいた』の時とは、また一味違った吉高さんの魅力が引き出せたんじゃないかなと。一方、横浜くんの場合は、憂いを帯びた表情が素敵なので、映画の中でもそこをうまく見せたいなと思っているうちに、なぜか女優さんを撮っているような錯覚に陥っていることに気付いて、自分でも驚きました(笑)。もともと僕はアンニュイな部分に興味をそそられるタイプで、美しさとか儚さとか切なさとか、笑った後のちょっとした真顔とか、何かを見つめるときの視線とか、陰りがあるけど美しく見える瞬間だったりとかを、撮影中に探ることが多いんです。『横浜くんの場合はどのアングルが一番素敵に見えるかな?』って、普段僕が女優さんを撮る時のようにずっと探っていたような気がします。カッコいいので、どんどん撮りたくなっちゃうんですよね(笑)」

―― 緩めのウェーブがかかったヘアスタイルも、横浜の繊細な雰囲気と見事にマッチしている。一見すると無造作風のラフな髪型だが、実はかなりの手間が掛けられているという。

「実は、塁のヘアスタイルは、目が見えるか見えないかのギリギリのところで、かなり厳密に微調整しています。明香里と付き合い出してから、ほんのちょっと前髪が上がってるんですよ! 絶妙な前髪の長さを現場で調整しながらやっていたので、ヘアメイクさんには相当苦労をかけちゃったんですけどね(笑)」

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―― 映画のタイトルである『きみの瞳(め)が問いかけている』のこだわりを訊いてみた。

「実はタイトルを『きみの瞳(め)が問いかけている』にしたことで、自分の中で『この映画はこうするべきだ』という道筋が見えて、全体像を掴めた感じがしたんです。『目の見えない明香里が塁を見つめている』というのがポイントになっているので、塁が見つめ返した時に感じたことを、観客の皆さんにも共有してもらえたらいいなと思っていて。そういった意味では、今回はエンディングから逆算して作ったようなところもあります。“光の象徴”である明香里と“影の象徴”であるはずの塁が、物語が進むにつれて徐々に反転してくるのも見どころの一つかもしれません」

―― 映画の中には、明香里が塁の声だけを頼りに、彼の姿を「おじさん」だと想像するどこかコミカルな場面もある。声の芝居にも、三木ならではのこだわりが詰まっているらしい。

「もともと僕はミュージックビデオを作っていたこともあって、ある種、ビジュアル以上に、音やセリフの微妙な上げ下げについても、実はすごくこだわっているんです。表情のお芝居よりもむしろ声のお芝居の方をディスカッションしながら微調整したりはするんですけど、今回はあまり自分を出さない塁のキャラクターの低めのトーンが、横浜くんの声にピッタリだなと思っていて。吉高さんとの声の対比もすごく気持ちよかったです」

―― 世界で活躍するBTSが、本作のために書き下ろした主題歌「Your eyes tell」の美しいメロディーも、明香里と塁が紡ぎ出す本作の映画の世界観を彩っていく。

「最初にOKが出たと聞いた時は『うわぁ、本当にBTSが!』って、ただただ驚きました。デモ音源がとても良かったので、エンディングだけではなく、別のシーンにも使わせて欲しいとお願いしたんです。同じ曲でも途中で聴くのとエンドロールで聴くのとでは全然違って聴こえるはずなので、ぜひ楽しみにしていてください!」

―― 爽やかなイメージのある町田啓太が、本作ではあえて「半グレ集団・ウロボロスのリーダー」という悪役に徹しているのも興味深い。

「町田さん、いいですよね。パブリックイメージ的には明るいキャラクターの人が怖い役をやると、得体の知れなさが増すというか。町田さんとも『塁に接する時は物腰が柔らかい方が逆に怖いよね』という話をしていたんです。上手く反転して良かったです(笑)」

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―― キックボクシングジムのコーチ役を演じたやべきょうすけも、実にいい味を出している。

「コメディリリーフ的な立ち回りなんですけど、やべさんご本人もすごく格闘技が好きでキックボクシングの経験もあったので、トレーニングシーンは基本的に全部アドリブでやってもらいました。試合中のセコンドのかけ声も全部お任せだったんですが、すごく臨場感がありますよね」

―― “三木らしからぬ”ダークな要素もある本作だが、もちろん“三木にしか出せない”光あふれる“キラキラ”も発揮されている。ズバリ、三木監督作品における“キラキラ”の秘訣とは?

「岩井俊二さんがカメラマンの篠田昇さんと一緒に組まれていた頃の作品の光の捉え方を、参考にさせてもらっているところがすごくあります。観客は物語のどこに心を動かされるかというと、人が人を好きになる瞬間とかだと思うんです。じゃあ、それをどんな表情で捉えるのかと考えたときに、僕は『なるべく自然光がいいなぁ』と思っているので、その光の捉え方にはものすごく気を遣っていますね。特に今回は塁が寡黙な役どころで、タイトルが『きみの瞳(め)が問いかけている』ということもあって、見つめられたときに言葉にはしないけど、キャラクターの心がどんな反応をしたのかっていうのは、すべて瞳に出るんです。僕の作品にクローズアップが多いのは、『微細な表情の動きを目で表現したい』という気持ちが強いからかもしれないです」

―― これまで数多くのコミック原作の映画を手掛けてきた三木。2次元のコミックを実写化するのと、映画をリメイクをする今回の場合とでは、どのような違いがあるのだろうか。

「原作が何巻にも及ぶ少女漫画の場合『どこをどう切り取るか』から考える必要がありますが、リメイクの場合は『どこを深掘りしていこうか』とか『どんなふうにアレンジしようか』といったところから出発出来たからこそ、思う存分格闘シーンに集中することができました(笑)。横浜くんは僕が要求したことが全部できてしまうので、試合のシーンに思わず見入ってしまい、カットをかけ忘れてしまったことすらありました。彼は決して『できないです』とは言わない人だけど、本当は相当キツかったはず。相手もプロでちゃんと距離感がわかっているので、本気でやってくれているんです。まさにライブのような感覚で撮れたので、撮影中はずっとワクワクしっぱなしでした」


Writing:渡邊玲子

インフォメーション

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(C)2020 Gaga Corporation / AMUSE Inc. / Lawson Entertainment,Inc.

MOVIE

『きみの瞳(め)が問いかけている』

10月23日(金)公開


目は不自由だが明るく愛くるしい明香里(吉高由里子)と、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた塁(横浜流星)。小さな勘違いから出会った2人は惹かれあい、ささやかながらも掛け替えのない幸せを手にした──かに見えた。
ある日、明香里は、誰にも言わずにいた秘密を塁に明かす。彼女は自らが運転していた車の事故で両親を亡くし、自身も視力を失っていたのだ。以来、ずっと自分を責めてきたという明香里。だが、彼女の告白を聞いた塁は、彼だけが知るあまりに残酷な運命の因果に気付いてしまっていた──。

▼公式サイト
gaga.ne.jp/kiminome/

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