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『アオハライド』、『青空エール』、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』など、次々と青春映画の傑作を世に送り出してきている三木孝浩監督。最新作は、第57回小学館漫画賞一般向け部門受賞、「このマンガがすごい!2009オンナ編」第1位に輝き、2012年にテレビアニメ版も放映された名作コミックの映像化となる『坂道のアポロン』。一生ものの友情、一生ものの恋、ともに奏でた音楽…自身の運命を変える出会いを10年に渡り描く本作は、知念侑李、中川大志、小松菜奈らフレッシュなキャストを迎え、感動的な青春映画となった。今作の魅力に迫るため、三木監督にインタビュー。

男女3人の、トライアングルの美しさを大切に描きたいと思いました

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―― 原作者・小玉ユキ氏の作品のファンだったという三木監督。そして、この原作をアニメ化した作品もクオリティが高く、実写化で何かできるのか、プレシャーを感じたという。

「原作はもともと読ませてもらっていました。アニメ化もされていて、クオリティもすごく高かったので、最初に企画をいただいたとき、アニメが良すぎてプレッシャーを感じてお断りしようかと思ったぐらいでした(笑)。アニメがあれほど良かったら、実写化はどこまでできるんだろうって思ったんです。でも、僕は一応ミュージックビデオ畑出身で音楽ものは好きですし、原作も大好きですし、また物語の舞台が佐世保で地方ロケが好きなのも大きかったです」

―― 実写化でもキーとなるのは、音楽の部分。ジャズセッションを通して、友情を深め、人との関係性を学んでいく主人公、西見薫と川渕千太郎の演奏シーンは、本作では絶対欠かせない、大きな見せ場となっている。薫を演じる知念侑李はピアノを、千太郎を演じる中川大志はドラムを猛特訓し、完璧に仕上げて現場に臨んだ。

「知念くんと中川くんが頑張ってくれました。映画の企画を進めていたとき、さすがに演奏シーンは大変だろうなって思っていたのですが、想像以上に二人が頑張ってくれて完璧に演奏ができていたので、監督としては楽をさせてもらった感じです(笑)。10ヶ月ぐらい練習をやってくれたのかな。でも、この音源でやりますって決まったのが3ヶ月前なので、本格的に練習を始めたのはこのときから。ジャズはアドリブがメインなのですごく難しいはずで、音源を作ってくださったプロの方も『2度と同じことはできません』って言うぐらい、アドリブが満載で難易度の高い曲だったんです。そんなことを楽器の経験がほとんどない役者にやらせてしまうという(笑)。でも、二人はそれができてしまったんです。演奏シーンの撮影は本当に楽しかったですし、印象的な場面になったと思います」

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―― キャスティングのポイントについても気になるところ。

「キャスティングをする際、音楽を本気でやってくれることというオーダーは出していて、演奏以外の部分のキャラクター感や、薫と千太郎のカップリング感も大事でした。全然キャラクターの違う二人が反発し合いながらも惹かれていき、友情が芽生えていく。その姿を演じられるのは、どんな二人なのかなって考えたとき、ふと思い浮かんだのが知念くんと中川くんでした。そのときは、二人が共演経験があって仲がいいことを知らなかったんです。そういう意味では、運命的な出会いを感じますね。中川くんは茶色の短髪で筋トレで体も大きく作って、これまでにないイメージ。知念くんも本当に役のイメージにぴったりで素晴らしかったです。そしてヒロイン、迎律子役の小松菜奈ちゃんとは、映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』をはじめ、3回ほどお仕事をさせてもらっていたので、お芝居に関してはすごく信頼していました。律子は意外と難しい立ち位置なんです。薫と千太郎を見る視線だったり、表情によって、二人を見て律子がどう感じているのか、観客にダイレクトに伝わる。いわば、律子の表情一つで受け取り方が全然違ってくるところなので大事なポジションだったんですけど、そこを本当に素敵に演じてくれました。律子が薫の前に初めて登場するシーンでは、自分の作品も含めて、過去作にはない可愛らしさを出したいと思いました」

―― 舞台となる長崎・佐世保の印象は?

「僕は何かと長崎に縁があって『くちびるに歌を』もですし、『アオハライド』もロケ地としてお世話になっています。もともと、僕は坂道フェチなんです。ロケハンに行くとだいたい坂道を探すほど(笑)。坂道って高低差があって登って降りていくというところに、ドラマが生まれやすいと思っていて。僕自身、大林宣彦監督の尾道三部作(『転校生』、『時をかける少女』、『さびしんぼう』)が大好きで、影響を受けているんですけど、坂道は坂道でもすごく細い坂道でどこに行くかわからない路地感だったり、日常から非日常に入っていく瞬間がありそうだったり、坂道は物語を生み出す場所。長崎はそんな坂道が多い土地柄で、坂道フェチとしてこの作品は最高でした。タイトルに坂道ってついているんですから(笑)。よし、じゃあ、どの坂道にしようってワクワクしましたね」

―― 坂道といえば、学校中を巻き込んで名セッションを見せてくれる見せ場の一つであるシーンのあと、坂道を駆け下りる薫と千太郎の姿が眩しい。

「二人がキラキラと走っていく、その一瞬のきらめきは撮りたいと思っていました。原作のイメージが強かったので、いかにその一瞬を切り取れるかというのは課題でした」

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―― 律子の実家の地下室でのセッションのシーンは、音楽へのワクワク感に満ちていて楽しくなってくる。

「ここは、薫が新しい音楽に触れて、自分の中の何かが拓けていくシーン。音楽の初期衝動というか、セッションに参加してワクワクしている感じがすごく大切でした。ディーン・フジオカさんや中村梅雀さんはカメラが回っていないときでも、セッションを始めて、気がつけば全員でやっている。それをそのまま切り取ればいいなって思いました。梅雀さんの笑顔とか素敵ですよね。本当に音楽が好きなんだなって伝わってくる素敵な笑顔でした」

―― 一番見逃せないのは、クライマックスの薫と千太郎二人のセッションシーン。いつまでも二人の演奏を見ていたい、終わらないでほしい!という気持ちになる。

「僕も撮影をしながら同じことを思いました。ここはもう楽しくて仕方なかったです。だから、この時間が終わらないでくれと。本人たちは大変だったと思いますが、楽しくてついつい撮りすぎてしまいました(笑)」

―― 人生を大きく変える出会いを描く本作。本作に込めた三木監督の思いを聞いた。

「僕は毎回映画を撮るとき、キャラクターがどう成長していくのかを常に描きたいと思っています。薫を軸に、自分の存在意義やここにいていいのかという存在価値を誰かと出会うことで見出していく、その瞬間がこの物語の素敵な部分だと思います。一方で薫から太陽のように見えていた千太郎も、実は影の部分があって、薫と出会うことでお互い補いあっていく。その関係性がキュートだなと。文化祭のセッションシーンでは、目線や表情を見るだけで、その感情が伝わってくると思います。それが一番描きたかったことです。もちろん、二人を見つめる律子の表情も、ですね。その三角関係…トライアングルの美しさを大切に描きたかった。知念くん、中川くんのプライベートの仲の良さが役にも非常にいい効果になって、二人をキャスティングできたことが奇跡だと思います。もちろん、律子がいないと観客に伝わらない部分もあるので、菜奈ちゃんに律子を演じてもらって本当に良かったです」


Writing:杉嶋未来

インフォメーション

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(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館

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『坂道のアポロン』

3月10日(土)公開


長崎県佐世保市へと引っ越してきた高校生の友情、恋、ジャズとの出会いを描く青春ストーリー。医師として病院に勤める西見薫。忙しい毎日を送る薫のデスクには1枚の写真が飾られていた。笑顔で写る三人の高校生。10年前の夏、二度と戻らない、“特別なあの頃”の写真。あの夏、転校先の高校で、薫は誰もが恐れる不良、川渕千太郎と、運命的な出会いを果たす。二人は音楽で繋がれ、荒っぽい千太郎に、不思議と薫は惹かれていく。ピアノとドラムでセッションし、千太郎の幼なじみの律子と三人で過ごす日々。やがて薫は律子に恋心を抱くが、律子の想い人は千太郎だと知ってしまう。切ない三角関係ながら、二人で奏でる音楽はいつも最高だった。しかしそんな幸せな青春は長くは続かず──

▼公式サイト
http://www.apollon-movie.com/

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