「私がこの作品のすごく好きなところは、藤井監督が小坂さんのご家族のみなさんにインタビューをして、作品の中に小坂さんの存在を漂わせているところです。小坂さんとして描いた作品なので、ご家族を通して、小坂さんの生きた言葉が脚本の中にたくさん存在していて、私自身、何回も何回も読みながら心が動いたし、気持ちがすごくわかって自然に泣けたんです。脚本は夏バージョンと冬バージョンと春バージョンの3冊あったのですが、藤井監督が一人ひとりのキャラクターにこめる愛情も伝わってきたし、泣かせようとするわけではないリアルさも魅力だと思いました。きれいに描きすぎてないところ、登場人物一人ひとりの苦しみ、痛みなどをリアルに描いているからこそ、私たちも感情移入しやすかったし、どの登場人物の立場になっても理解できました。誰1人としてかけて良い人はいないと思ったし、みんなが光っていました。それぞれちゃんと生きている感じがしました」
「メディアに出す文章を100文字以内で書かないといけなくて、ものすごく悩んだんです。気づいたら1000文字以上書いていて。本当はもっともっといくらでも書けたんですけど、思いが強すぎて、これも伝えたい、あれも伝えたいって伝えたいことがすごく多く、伝えたいことしかなくてどうしたらいいんだろうと思いました。もちろん他の現場のどの役に対しても愛情をたっぷり持っていますし、全身全霊をかけて演じていますが、この作品の中で演じた茉莉に対しては、私の中で特別すぎて。茉莉を演じる前に、小坂さんのご家族に私もきちんと挨拶をさせていただき、お墓参りもさせていただきたいと思ったんですけど、コロナ禍でお墓参りや直接ご家族に会ってお話するのは難しいということで、リモートでご家族とお話しをさせていただきました。失礼があってはいけないのはもちろん、ご家族から小坂さんの話を聞くことで、思い出を引き出してしまうことに対する敬意を払うために、自分で質問もたくさん考えて臨んで、真剣に向き合いたいと思いました。小坂家のお母さんとしばらくお話をするうちに、お互い気持ちが解けてきて、その時画面上だったんですけど、茉莉を演じさせてもらう上で妥協なく戦いますと意思を伝えることができて、お母さんの顔もだんだんと和らいで、いろんなことを話してくださいました。その時、お母さんは『私たちのことは気にせずに映画は映画なので描き切ってください。応援しているから』と言ってくださって、茉莉として生きること、一生懸命生きる姿を見せる覚悟が決まりました。また、今もその病気と闘っている患者さんにもお会いしてお話を伺ったことも大きかったです」
「映像として伝わりやすく見せないといけないと思ったので、1回演じてみてそれをお医者さんに見てもらってやりすぎていないかを確認していただきながら進めていました。一秒一秒、一瞬一瞬を向き合って、息をすることさえも大事に描かないといけないと思いました。私は減量もしていたので、現場中はみんなと一緒にお昼ご飯を食べた記憶はなく、大変ではなかったと言うと嘘になるほど、作品にのめり込んでいました。茉莉の気持ちを自分が少しでも感じて、リアルな気持ちがちゃんと出せたらいいなと思いました。前向きでいられる時と、ちょっと立ち止まってしまう時がありましたが、現場に行くとみんながいるし、この撮影の約1年という時間は何にも変えられないし、お金では買えないことってこういうことなんだなって思いました。本当に不思議な時間でした。自分ではないけど、自分の人生も同時に歩んでいるし、役の人生も一緒に背負っている。自分の人生の中に2つの人生を歩んだ1年で、かけがえのない時間が詰まっている作品です」
「撮影が終わった後は放心状態というか抜け殻になりました。何もできなくなってしまって、当時はこの作品を越えられるものはあるのかって思っていました。これほどに役を引きずって未練があるのは初めてだったので、貴重な体験になりました。終わってから次の作品までしばらく期間があったので、まずは食事を直していって普通の食事が取れるようになった時に、定食屋さんに行って鯖の煮込み定食を食べたんです。こんなにおいしいご飯は初めてかもってすごく感激して、ほっとしたからか涙目になってうるうるしてしまいました(笑)。今振り返って、作品に入る前も撮影中も、撮影が終わった後の未来は明るいから大丈夫ってただただ前を向いて信じるしかなかった。それぐらいの思いがありました」
「藤井監督とは今回初めてお仕事をさせていただいたんですけど、体育会系というか、ものづくりに対してストイックだし、熱さがあって、それをちゃんと出す方という印象です。熱さを出しながら、一緒に戦ってくれる方で、私の性格とすごく合っていたと思います。不安なことがあったり、ちょっと誰かに話したいっていう時は藤井監督に全部伝えていたし、同じスタート位置に立って同じ気持ちでいてくれました。何でも話せる部活の先輩と後輩のようでしたね。お互い妥協せずにちゃんと燃え尽きようっていつも話していて、藤井監督のこの映画にかける思いは私も受け取っていました。この作品は全編ドキュメンタリーではないんですけど、『ドキュメンタリーっぽく撮っていきたいから、きれいには撮れないかもしれないけど、そこはごめんね』と言われて、きれいに撮ってもらおうなんて思っていないことを伝えました。出るものすべて、出てしまったものすべてを映せたらいいなって思いました。また、藤井監督は繊細な部分もすくってくれていたので、気持ちが乗らない部分のセリフについても、今は気持ちが乗っていなかったよねと気づいて、こういう風に変えたら言いやすいかな?と直してくださったり、より自分の言葉として言いやすいように、茉莉の言葉として出せるように探ってくださったのでありがたかったです。藤井監督が台本を書ける方だからこそ、一人ひとりのキャラクターが魅力的になっていたんだなと思いました」
「この作品を見た後、出目金のような目になってしまいました(笑)。自分が出演しているのにそれぐらい泣いてしまいました。スタッフさんも同じ気持ちで、作品を見た後に自然とみんなで円になって作品について話す時間がありました。普通は作品を見た後お互いお仕事があったり、作品から時間を置いているので、改めて作品についてみんなで集まって熱く語るのも恥ずかしいなっていう感じなんですけど、この作品のチームは2時間位立ちながらずっと喋っていて、こういうことがあったねって思い出もたくさん語り合いました。撮影に時間をかけていたし、作品のテーマ的にもみんなそれぞれすごく濃い時間を過ごしていたんだなと思いました。命のことなど、普段なかなか話せないことも、この作品を通して語れると思います。実際、初号試写の時に、ある男性がずっと涙をこらえていらっしゃったようで、話し始めたら涙が止まらなくなってしまって。ご家族が亡くなってしまって、この作品で描かれている気持ちが痛いほどわかるとおっしゃっていました。その方は涙がずっと止まらなくて、私ももらい泣きをしてしまいました。そういう風により添える、お互いに寄り添いたくなる作品だと思いました。心が優しくなれる作品だと思います」
Wrting:杉嶋未来/Styling:遠藤彩香/Hair&Make-up:小澤麻衣(mod’s hair)
<衣裳>
ジャケット¥99,000・パンツ¥49,500・ピン¥20,900/以上TOGA(トーガ)
リング
(左手ひとさし指)[2個セット]¥41,800/BLANCILIS(ブランイリス)
(左手中指)¥86,000/CHARLOTTE CHESNAIS(シャルロット シェネ)
MOVIE
3月4日(金)公開
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