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映画『閉鎖病棟 ─それぞれの朝─』は、長野県のとある精神科病院で出会った人々が不器用ながらも心を通いあわせ、「生きていく力」を分け合っていく姿を描くヒューマンドラマだ。本作で小松菜奈が演じたのはDV被害を受けている少女・由紀。繊細な人物表現で過酷な状況の只中に“居る”ことに徹した撮影の日々を振り返りながら、作品に込めた思いの強さを語ってもらった。

「人間のリアル」を任せてもらえたことが嬉しかった。
この映画はとても“強い”作品です。

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―― 社会的弱者、マイノリティーな人々の“リアル”に踏み込んだ本作。難しい役どころを託されたことに、迷いはなかったのだろうか。

「このお話をいただいたとき、今まではどちらかというと“陽”な作品をやってきた自分にも、本当に重くて陰のある“人間の話”という作品を任せていただけたことが、まずはとても嬉しかったです。役柄的にはとても苦しく、撮影現場もたぶんものすごい精神的にくるのだろうなと思いましたが、でもこの作品自体がとても挑戦的な作品ですよね。もしかしたら、観る方によっては差別的なイメージで捉えられてしまうかもしれない。それでもやっぱり“これを描きたいんだ”という熱い思いを制作側の皆さんからすごく感じましたし、そこに“私を”と考えていただけたのはすごく光栄だと思いました。なので、出演のお返事はすぐにお伝えしました。ぜひこの作品に参加して、私も一緒に戦っていきたいです、と」

―― 派手さはないが、芯の強さを備えたヒューマンドラマ。小松自身、「そういう演技、そういう作品をいつかはやるべきだ、やりたい」という思いも抱いていた。そしてそれはおのずと演技に対するアプローチにも反映されたという。

「もちろん物語的にきれいに作っているというのはあると思うのですが、でも私はやっぱりそこにあるリアルさというものをちゃんと大切にしたくて。ト書きには“ここで泣く”とか、“ここで◯◯する”と書いてあるけど、でも実際に自分が演じてみると意外とそこで泣けなかったり、反対に別の台詞の部分ですごく泣けてしまったり…心って、そんなに単純ではない。私はそういう気持ちのリアルを表現したいんです。由紀のように過去に本当にひどい体験があった人間って、そんなに簡単には立ち直れないと思うんです。だからこそ自分は由紀としての思いの中に本当に小っちゃい光みたいな灯みたいなのものがあって、それを信じて、それを頼りに…時には前に進めなくなっても、それでもやっぱり最後は自分の力で前を向く。由紀の歩んでいく気持ちをちゃんと表現できたらいいなと思って。観ている方が由紀がちょっと笑ったりしたことで“良かった、この子はまだ生きる力があるんだ”って感じてもらえたりとか、今回はそういうとても繊細なお芝居を心がけました」

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―― 実際の病院を借りた地方ロケで丁寧に撮影された映像は、善と悪があっても共に同じ距離から捉えるような客観性と、人間を好きにならずにはいられない優しさとが同居している。現場の空気はどうだったのだろうか。

「実際の病院を使っていたので、やっぱりそこに漂う空気に助けられた部分もありました。私も、他のキャストの皆さんも。患者さんそれぞれにも明確なキャラクター付けがあって、本当にそこでそのまま過ごしていました。誰とも話していない人、仲良しのグループでずっと一緒にいる人…すごく独特な雰囲気なのでずっといるとちょっと苦しくなることもありましたけど、でも“ここは帰ってくる場所”みたいな感覚というか、みんなと一緒の居心地の良さというのを実感していました。由紀が(笑福亭鶴瓶演じる)秀丸さんたちと4人で出かけるシーンではみんなで一緒に公園に行ったんですけど、セッティングをしている待ち時間に滑り台やシーソーで遊んだりもしました。とにかく寒かったので、ガンガン(一斗缶の簡易ストーブ)の前でみんなでくっついて温まりながらおしゃべりしたり。由紀単独のシーンはかなり緊迫感もあったので、そういうみんなといる時間はホッとできてすごく愛おしかったです」

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―― 本作のメガホンをとった平山秀幸監督と積極的にディスカッションを重ねた日々。酷い乱暴を受けるシーンにも正面から挑み、傷ついた由紀の心も全身でさらけ出した。

「ただ歩いている、というシーンもやっぱりその中には気持ちの段階があって、台詞にはない心情の揺れは常に意識していました。とぼとぼと歩いた先で知らない人に声をかけられ、最後にハッとなって大泣きするというシーンは、子供のように泣きたいと思った。彼女が今までの過去の経験もなにもかも吹っ飛ばして子供のようにわーって全部出して、すごい泣いて。でもやっぱり生きているからこそお腹も空いてくる。で、自力でおにぎりを食べて、気づけば朝日が昇り──日常の繰り返しの中でどんな人でも一人一人がちゃんと戦っているんだっていうところがちゃんと描かれているのがすごくいいですよね。由紀だけじゃなく登場人物それぞれにそういうシーンがいっぱいある。現場に入ってまだお互いに由紀のイメージが探り探りだったとき、私は先になにも言わずにリハーサルでバンって、私が思う由紀を出したんです。そこで監督は“そうくるんだ。面白いね”と。そういうことをやっていくうちに、“私はこういう風にしていきたい”“俺もそう思っていた”と、私が思っていることと監督が思っていることがだんだん合ってきて。こんなにもちゃんと監督と役としての自分のアプローチが、言葉なんかなくてもお互いが分かるんだなって感動しました。やっぱりお芝居をするには他の人が思う想定内ばかり行くのではなく、自分の中から必然的に生まれた意外性を見せて、それを“面白いね”と受け入れてもらえることが楽しいですし、そういう考えはこれからも大事にしたいです」

―― そうして完成した映像から感じたのは「体温」。

「監督の人柄や優しさが詰まっていて、全体にちょっと今の映画にはない昭和感というか、クラシックな雰囲気があるのもいいなと思いました。登場人物みんながちゃんとそこにいて、目と目を向き合わせて話したり、抱きしめあったり。本当に人と人との直接的なコミュニケーションってめちゃくちゃ大事だなというのがすごく伝わってきます。人間って誰かのせいで人生を狂わされてしまうことは避けられないかもしれないけれど、そんな中でも救いになるような誰かからの一言をもらったり、ちょっと触れ合えるだけでも大きな力やきっかけが生まれる。そのことを伝えてくれるこの映画は、すごく温かくて強い作品だと思いました」

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―― では、本作を通じて女優として自身が得たモノとは?

「この1年くらい、女優としての自分の気持ちの流れがすごく変わってきているんです。今までは喜怒哀楽の表現が苦手だと思っていて、特に泣くこととか…すごい怖かったんです。でもいくつもの現場を経験して素敵な役者さんたちとお仕事をしていく中、ちょっとずつでも自分が成長しているなと実感するときがあった。もちろん全然まだなんですけど、地道にでもひとつひとつちゃんと頑張っていくと、ちゃんと見てくれている人は見てくれているし、苦しいときは寄り添ってくれる人がいるのだなということもわかりました。あきらめずに、楽しく、頑張る。そういう気持ちでお仕事に取り組めるようになりました」

―― 今秋から来年にかけてもすでに複数の映画への出演がアナウンスされている。“映画人”としての小松菜奈はここからどこへ向かうのだろう。

「私、映画デビューをさせていただいてほんとに良かったなって思っています。それはいろいろなお仕事をしていく中、“やっと自分がしたいことが見つかった”という気持ち。映画の現場に入っていると、ゆっくり凝縮した時間の中で役と向かい合えるというか、自分のペースでちゃんと自分を見つめていけるし、周りの皆さんからもしっかり見つめてもらえる。そのやり方がすごく好きなんです。お客様がお金を払って劇場に観にきてくださるというのも改めて一作一作の深みを感じますし、今まで演じてきた作品は全て自分の歴史としても残っていきますし…。振り返れば思い出もぎっしり。演じる身としては、やはりこれからもずっと映画に関わっていきたいです。そして、いろんな表現に挑戦し続けていきたいと思います」


Writing:横澤由香

インフォメーション

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(C)2019「閉鎖病棟」製作委員会

MOVIE

『閉鎖病棟 ─それぞれの朝─』

11月1日(金)公開


長野県のとある精神科病院。それぞれの過去を背負った患者たちがいる。
母親や嫁を殺めた罪で死刑となりながら、死刑執行が失敗し生き永らえた梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)。
サラリーマンだったが幻聴が聴こえ暴れ出すようになり、妹夫婦から疎んじられているチュウさん(綾野剛)。
不登校が原因で通院してくる女子高生、由紀(小松菜奈)。
彼らは家族や世間から遠ざけられても、明るく生きようとしていた。
そんな日常を一変させる殺人事件が院内で起こった。加害者は秀丸。彼を犯行に駆り立てた理由とは―?

▼公式サイト
https://www.heisabyoto.com/

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