「脚本にも書かれていなかったので、その部分は自分で想像しました。性格とかを文章に書いたりして。多分、良い家庭ではなかったんだろうなと。誰かに愛されたこともなければ信頼できる人もいなくて、孤独に、何かにしがみつきながら必死に生きてきたんだろうなと思いました。そんなレオにとって、音楽を一緒にやろうと誘ってくれたハルとの出会いは運命的なものだった。ただ一緒にいる、ご飯を食べる、音楽を作るということを共有できたことにレオは感動したし、光が差し込んできたような感覚だったと思います」
「ハルは硬くて、レオは自由奔放。性格は全然違うけれど、シマも含めて、3人とも自分をうまく伝えられない不器用さが似ていると思います。レオを演じるときは、心のなかに小さな子どもがいるような感覚でした。座り方や歩き方も、いちいち大きく動く感じ。セリフに関しては、塩田監督が『言いにくければ、レオが言いそうな感じであれば、しっくりくるように語尾を言い換えていいよ』と言ってくださいました。監督自身が言葉がなくても気持ちは伝わるという考え方だったので、まずは自分が思うように自由に動いて、それを見ていただいて、役を固めていきました。そういうやり方は楽しかったですし、今まで演じた役のなかで、感情移入も一番しやすかったです」
「使われている映像が少ない場面でも、現場では長回しで撮っていただけたので、感情は作りやすかったです。私、カチンコが鳴るとすごい緊張しちゃうんです(笑)。顔がこわばったり、泣くシーンで余計な力が入っちゃったり。でも、塩田監督がカチンコを使わない方なので、自然な流れでお芝居ができました。カレーを食べるシーンでは、レオの奥にあるピュアな部分が言葉じゃなくて涙で出てきたんだと思います。自動販売機のシーンは、実は撮り直しました。一度撮ったあと、麦ちゃんも私も、ハルとレオの感情に到達しきれなくて、『なんか気持ち悪いね』『わからないままだね』と困惑が残ってしまったんです。納得できずに終わってしまって『んー』とずっと言いあっていた私たちに、塩田監督やスタッフさんが気づいてくださって。気持ちよく終わるために再撮しようと言ってくださって、クランクアップの日に撮り直しました」
「撮り直しがきまってからは、監督と麦ちゃんと3人で話し合いながら、相手を引き寄せたり、離したり、背を向けたり、向けなかったり、いろいろと動きながら探っていきました。些細な動きの違いで、映像に映るニュアンスが変わるし、2人の感情の伝わり方も全然違う。再撮できて本当に良かったですし、いいものを作るには話し合いが一番だなと実感しました」
「まずは『3曲も!?』とびっくりしました。弦の抑え方や右手の使い方など、初歩の初歩から始めて、しかも歌いながら弾くということで、不安でいっぱいでした。まずは先生に教えていただいたことを家で繰り返し練習するという地味な作業をするしかなくて。孤独な戦いを続けるうちに、麦ちゃんはどれくらい進んでるのかが気になって、2人で一緒に練習をしようということになりました。最初はほぼはじめましてだったので、お互いに遠慮があったけれど、プライベートでギターを担いで渋谷のカラオケ店に行ったりするうちに、どんどんいい雰囲気になっていって。歌とギターも、バラバラで練習するよりも、弾きながら歌ったほうが上達が早いことに気づいて、どんどん楽しくなっていきました。初めてのことをやるのは大変だけど、追い込まれると意外とできるんだなと思いました」
「純粋に、驚きです(笑)。もちろん、実力よりもうまくできているように見せてくれるカメラマンさんたちの協力もあるんですけど、大事なのは“気持ち”だなと思いました。上手い人はたくさんいるし、全然敵わないので、上手い下手じゃなくて、レオの気持ちや、ハルレオの2人の温度がちゃんと伝わったらいいなと思いながら演奏しました。たくさんの人に伝えるのも大事だけれど、私が大事にしたのは、『みんなに』ではなく『誰かに』伝えたいという気持ち。そう考えると、自然と声を張らなくなるし、誰かに語りかけるような歌い方になったんです。とにかく硬くなりすぎず、レオらしくのびのびと自由にやることを心がけました。せっかく秦さんとあいみょんさんが作ってくださった楽曲なので、この映画を観た人に口ずさんでもえたらいいな、と思っています」
Writing:須永貴子
MOVIE
5月31日(金)公開
pagetop
page top