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第63回小学館漫画賞一般向け部門受賞、2018年1月にはテレビアニメ化されるなど幅広い世代から支持を集める人気コミック『恋は雨上がりのように』が実写映画化。W主演を務めた小松菜奈が演じたのは、28歳年上の冴えないファミレス店長に恋をする女子高生・橘あきら。インタビューでは役へのアプローチや撮影現場でのエピソードを振り返った。

またひとつ壁を乗り越えて、愛おしい作品が増えました

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―― マンガ実写化作品で、これまで何度もヒロインを務めてきた小松菜奈。『恋は雨上がりのように』では、ケガで夢を絶たれた陸上部のエースであり、28歳年上の男性に不器用な恋をする女子高生をみずみずしく演じきった。

「マンガ原作の作品は、マンガ上では読んでいて素敵なシーンでも、演じるとちょっと大げさすぎたり、キレイすぎてしまうこともあって、そのバランスの取り方がいつも課題だったり、プレッシャーになります。今回演じた橘あきらという女のコは、初めての恋をして、不器用ながらも真っ直ぐ気持ちをぶつけていくんですが、現実で考えるとちょっと怖いかも!?と思うこともありました。でも、あきらを演じていく中で、少しずつ彼女のことを理解して、少しずつ好きになっていくうちに、どうして衝動的に行動してしまうのか腑に落ちたし、心を寄せられるようになっていきました。あきらは普段はあまり感情が出ない部分があって、『怒ってる?』と勘違いされがちなんです。そんな部分は私と似ているなぁって思えたし、初めての恋に真っ直ぐぶつかっていく姿に愛おしいとさえ思うようになりました」

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―― 疾走感溢れるオープニングシーンに始まり、作品内にちりばめられた風を切るようにぐんぐんと走っていくシーンは、あきらの人となりを印象づけるにも欠かせない表現。

「走るのは好きなんですが、どちらかといえば長距離タイプ。あきらは短距離走の選手で、しかも陸上部のエース。走る姿に説得力がないと作品が成立しないので、ランニングフォームの矯正や体幹トレーニングをして撮影に臨みました。ランニングフォームは今までまったく意識をしたことがなかったんですが、自分の走る姿を見てびっくり。無意識だけどクセみたいなのものがあって、それがすごくダサくて(笑)。作品にも登場していただいた大学の陸上部のみなさんに教えてもらって、練習をする日々が続きました。大会のシーンで一緒に走ってくださっている人は、それこそ100mを11秒、12秒台で走るアスリートの方たち。もちろん本気で走れば私なんて相手にならないのですが、一緒に走るたびに自分の中の負けず嫌いが“発動”してしまって、『小松、ちょっとやるじゃん』なんて思われたくて走っていたことも(笑)。速い人と一緒に走るとつられて自分も足が早くなる。完成した映像を見ると自分がとても俊足に見えました」

―― 今回、一緒にW主演を務めたのが大泉洋さん。前々から「いつか一緒にお仕事をしたい」と願ってきた。先程の「速い人と走ると自分まで早くなる」という話しが、大泉さんとの共演で芝居にも起こったという。

「大泉さんの出演されている作品はもちろん、バラエティ番組に出ている姿をずっと見てきて、いつかお会いできたらいいなぁって。きっとそれは共演者としてなにか作品をご一緒できたときに叶うんだろうなと思っていました。今回の作品で大泉さんのお名前を見たときに、早く作品に入りたいと思ったし、もうニヤニヤが止まらなくなっちゃって。初めてお会いするときも、登場から面白いのかな?なんて期待をしてしまいました。素敵な俳優さんとのお芝居は、同じ画面に映る自分まで素敵に見せてもらえます。引っ張られるのか、引き出されるのかはわからないんですが、今回で言えば大泉さんがいてくださって、感情が動いて生まれるお芝居がたくさんありました。以前、『役者が役者を育てる』と耳にしたことがあるんですが、きっとこういうことなんだろうなって」

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―― 撮影の序盤、役柄をつかめず苦しい思いをしたことがあった。そんなときに寄り添ってくれたのが大泉さんだったそう。

「大泉さんが演じる近藤が風邪を引いてしまって、台風の中、あきらがいきなり自宅へお見舞いに行くシーンがあるんです。撮影が始まって数日で、あきらの人柄や気持ちにまだ自分が追いつけなくて、うまくセリフが言えないことがあったんです。腑に落ちないというか、違和感があるというか……。そのときに大泉さんが空気を読んでくださったのか、ちょっと休憩を取ることになって、その時間にあきらがどんなことを考えていたのか、台本の前後のシーンをたどりながらどうしてこの行動したのかを一緒に考えてくださったんです。この作品は、そういった意味でも乗り越えなきゃいけない壁にたくさんぶつかりました。その度に大泉さんが助けてくださったし、近藤が大泉さんで本当に良かったなぁって思いました。その気持ちがラストの土手のシーンへつながっていったんだと思います。序盤ではあきらの気持ちがわからなくて、セリフも涙もうまく出なかったのに、土手のシーンではリハーサルから涙が止まらなくなってしまったから。あきらの初恋が近藤のような人で本当に良かったと心から思えたんです」

―― これまでにも様々な役柄を演じてきた小松。自分が演じる意味をどう見出してきたのか。

「きっと天性でお芝居が上手い人もたくさんいる。ただ、それはもしかすると努力をしている部分が人に見えないようにしているかもしれないので、本当のところはわからないけれど。私は努力をうまく隠せないし、不器用だからとにかくぶつかっていくタイプ。がむしゃらでも、一生懸命やって気持ちが伝わればいいなと思って演じています。役としてその感情になれて、観てくださる人と共有できたらいいなって。なので自分が演じる意味は自分で見出しているわけではなくて、観てくださる方に委ねている部分もあるかもしれない。私にできるのは正直に心が動くまま演じ、それを映像に残していただくことです」

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―― 今でも、現場に入る度に「映画っていいな」と胸が高鳴る、と。

「本当に映画が好きで携わっている方々がたくさんいて、その熱に触れるたびに映画の現場が愛おしくなります。華やかなように見えて地道に取り組んで、チームで一つの作品を作り上げていくのも、やりがいであり魅力のひとつ。こうしてチャンスをいただけてこの世界にいさせてもらえて、作品の中で生きていける喜びがあります。振り返るのはまだ早いけれど、作品は自分の生きてきた記録みたいなもの。作品を重ねるごとに家族が増えていく感覚なんです。それにどの現場でも、キャストやスタッフが1人も変わらずまったく同じであることは二度とない。何かのご縁があって一緒に作品作りが出来ていることを思えば、こんなに運命的なことはないし、自分が置かれている環境を大切にしなきゃと思えます」



Writing:長嶺葉月

インフォメーション

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(C)2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会
(C)2014 眉月じゅん/小学館

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『恋は雨上がりのように』

5月25日(金)公開


テレビアニメ化もされた眉月じゅんのベストセラーコミックを原作にした恋愛青春物語。冴えないファミレスの店長の男と、彼に初めての恋をする女子高校生が織り成す恋模様を描く。監督は『世界から猫が消えたなら』『帝一の國』などの永井聡。『渇き。』『溺れるナイフ』の小松菜奈、『探偵はBARにいる』シリーズや『アイアムアヒーロー』の大泉洋のW主演で実写映画化。
ケガで陸上の夢を絶たれた高校2年生の橘あきらは、雨宿りのために偶然立ち寄ったファミレスで、店長を務める近藤に出会う。近藤はあきらより28歳も年上で子持ちのバツイチだったが、あきらは密かに近藤への恋心を募らせていく……。

▼公式サイト
http://koiame-movie.com/


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