「マンガ原作の作品は、マンガ上では読んでいて素敵なシーンでも、演じるとちょっと大げさすぎたり、キレイすぎてしまうこともあって、そのバランスの取り方がいつも課題だったり、プレッシャーになります。今回演じた橘あきらという女のコは、初めての恋をして、不器用ながらも真っ直ぐ気持ちをぶつけていくんですが、現実で考えるとちょっと怖いかも!?と思うこともありました。でも、あきらを演じていく中で、少しずつ彼女のことを理解して、少しずつ好きになっていくうちに、どうして衝動的に行動してしまうのか腑に落ちたし、心を寄せられるようになっていきました。あきらは普段はあまり感情が出ない部分があって、『怒ってる?』と勘違いされがちなんです。そんな部分は私と似ているなぁって思えたし、初めての恋に真っ直ぐぶつかっていく姿に愛おしいとさえ思うようになりました」
「走るのは好きなんですが、どちらかといえば長距離タイプ。あきらは短距離走の選手で、しかも陸上部のエース。走る姿に説得力がないと作品が成立しないので、ランニングフォームの矯正や体幹トレーニングをして撮影に臨みました。ランニングフォームは今までまったく意識をしたことがなかったんですが、自分の走る姿を見てびっくり。無意識だけどクセみたいなのものがあって、それがすごくダサくて(笑)。作品にも登場していただいた大学の陸上部のみなさんに教えてもらって、練習をする日々が続きました。大会のシーンで一緒に走ってくださっている人は、それこそ100mを11秒、12秒台で走るアスリートの方たち。もちろん本気で走れば私なんて相手にならないのですが、一緒に走るたびに自分の中の負けず嫌いが“発動”してしまって、『小松、ちょっとやるじゃん』なんて思われたくて走っていたことも(笑)。速い人と一緒に走るとつられて自分も足が早くなる。完成した映像を見ると自分がとても俊足に見えました」
「大泉さんの出演されている作品はもちろん、バラエティ番組に出ている姿をずっと見てきて、いつかお会いできたらいいなぁって。きっとそれは共演者としてなにか作品をご一緒できたときに叶うんだろうなと思っていました。今回の作品で大泉さんのお名前を見たときに、早く作品に入りたいと思ったし、もうニヤニヤが止まらなくなっちゃって。初めてお会いするときも、登場から面白いのかな?なんて期待をしてしまいました。素敵な俳優さんとのお芝居は、同じ画面に映る自分まで素敵に見せてもらえます。引っ張られるのか、引き出されるのかはわからないんですが、今回で言えば大泉さんがいてくださって、感情が動いて生まれるお芝居がたくさんありました。以前、『役者が役者を育てる』と耳にしたことがあるんですが、きっとこういうことなんだろうなって」
「大泉さんが演じる近藤が風邪を引いてしまって、台風の中、あきらがいきなり自宅へお見舞いに行くシーンがあるんです。撮影が始まって数日で、あきらの人柄や気持ちにまだ自分が追いつけなくて、うまくセリフが言えないことがあったんです。腑に落ちないというか、違和感があるというか……。そのときに大泉さんが空気を読んでくださったのか、ちょっと休憩を取ることになって、その時間にあきらがどんなことを考えていたのか、台本の前後のシーンをたどりながらどうしてこの行動したのかを一緒に考えてくださったんです。この作品は、そういった意味でも乗り越えなきゃいけない壁にたくさんぶつかりました。その度に大泉さんが助けてくださったし、近藤が大泉さんで本当に良かったなぁって思いました。その気持ちがラストの土手のシーンへつながっていったんだと思います。序盤ではあきらの気持ちがわからなくて、セリフも涙もうまく出なかったのに、土手のシーンではリハーサルから涙が止まらなくなってしまったから。あきらの初恋が近藤のような人で本当に良かったと心から思えたんです」
「きっと天性でお芝居が上手い人もたくさんいる。ただ、それはもしかすると努力をしている部分が人に見えないようにしているかもしれないので、本当のところはわからないけれど。私は努力をうまく隠せないし、不器用だからとにかくぶつかっていくタイプ。がむしゃらでも、一生懸命やって気持ちが伝わればいいなと思って演じています。役としてその感情になれて、観てくださる人と共有できたらいいなって。なので自分が演じる意味は自分で見出しているわけではなくて、観てくださる方に委ねている部分もあるかもしれない。私にできるのは正直に心が動くまま演じ、それを映像に残していただくことです」
「本当に映画が好きで携わっている方々がたくさんいて、その熱に触れるたびに映画の現場が愛おしくなります。華やかなように見えて地道に取り組んで、チームで一つの作品を作り上げていくのも、やりがいであり魅力のひとつ。こうしてチャンスをいただけてこの世界にいさせてもらえて、作品の中で生きていける喜びがあります。振り返るのはまだ早いけれど、作品は自分の生きてきた記録みたいなもの。作品を重ねるごとに家族が増えていく感覚なんです。それにどの現場でも、キャストやスタッフが1人も変わらずまったく同じであることは二度とない。何かのご縁があって一緒に作品作りが出来ていることを思えば、こんなに運命的なことはないし、自分が置かれている環境を大切にしなきゃと思えます」
Writing:長嶺葉月
MOVIE
5月25日(金)公開
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