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佐野徹夜の小説を月川翔監督が映画化した『君は月夜に光り輝く』で、初共演にしてW主演を果たす永野芽郁と北村匠海。すっかり打ち解けた雰囲気の中、役に込めた思いや撮影時のエピソードを語ってもらった。

一緒にお芝居をして気持ち良かったし、お芝居っていいなって思いました

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―― 『君は月夜に光り輝く』は、永野にとって連続テレビ小説「半分、青い。」以降初の映画作品、北村にとっては月川監督と組んだ『君の膵臓をたべたい』に続くタッグとなる。それぞれオファーを受けた際の心境をこう語る。

永野芽郁「朝ドラの出演を経て、私にとって1年ぶり以上の映画の現場で大丈夫かなと不安がありました。でも、以前、CMの現場で月川監督とご一緒したときに、お芝居の現場でもまたご一緒したいと思っていたので、監督が月川さんと聞いてやりたいと思いました。また、まみずという余命がないところから始まる女の子が一生懸命生きている生き様を演じたいと思いました」

北村匠海「このお話をいただいたとき、僕でいいのかというお話をしました。『君の膵臓をたべたい』と作品の内容も含めて共通点が多い中、こういう立ち位置の役をやっていいのかという話をしたときに、北村匠海以外考えられなかったと月川監督のお言葉をいただき、すごくハッとしました。あえて差別化は図らず、好きなように演じてほしいということだったのでやらせていただきますと。そして、同じ事務所の永野芽郁ちゃんが相手役というところでもすごく楽しみでした。月川監督とまたご一緒できることも嬉しかったです」

永野「私は匠海くんとお芝居するのは初めてだったので、どんなお芝居をされるのかなって思ったんですけど、月川監督をはじめスタッフさんが「匠海は何でも受けてくれるから」っておっしゃって、「絶対大丈夫だ」って思いました。これだけいろいろなものを作ってきた方々が絶対大丈夫っていうことは大丈夫だろうと思いましたし、すごく楽しみになりました」

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―― 月川監督に絶対の信頼を置く2人。月川監督愛をそれぞれ語ってくれた。

北村「本当に自由にやらせてもらいました。卓也は家庭の中で大きな問題や自分の過去などがあって、含みをもたせる部分では僕がお芝居でプレゼンテーションしたところもあります。家のシーンとかが意外と難しかったです。でも、そこは月川監督が何を求めているのか、月川監督も僕がどんな芝居をするのか、お互いに想像できていた部分があると思います。逆に、それを超えるもの、現場マジックみたいなものを僕も求められているだろうなって思いながらやっていました。でも、案の定、芽郁ちゃんとのシーン含めて、いろんな奇跡や偶然が起きた現場でした。今日(取材日2月19日)もスーパームーンですし」

永野「そうなの?」

北村「すごくない?」

永野「スーパームーンってスーパーな月でしょう?(笑)」

北村「そうだよ(笑)」

永野「月川監督は私たちが提案したことを受け入れて、それがさらに良くなるにはと考えながら柔らかく包んでさりげなく進めてくださって、否定がまったくないんです。みんながついていくというよりも、ついていっちゃうという感じ。監督の存在にすごく感動しましたし、私たちがお芝居をしているところを見て涙する監督がいるんだという感動がありました。月川監督が脚本も担当されて、監督自身が生み出した言葉もあるし、物語の展開ももちろん全部わかる中、私たちがお芝居したものを見て、あそこが良かったって言ってくださって、これほど寄り添ってくださる監督と今の私が出会えたことはすごく嬉しかったし、月川監督だからこそできた「君月」の世界があったなって思います」

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―― 今回演じた役について、まみずは発光病という不治の病を患い、余命ゼロなのになぜ笑っていられるのか、そして、卓也はなぜ外出が許されないまみずに代わり、彼女の願いを実行し、その感想を彼女に伝える「代行体験」を引き受けたのだろうか。

永野「まみずの場合は、余命ゼロで死ぬ。だから悲しい、毎日しんどくて泣いているって全部イコールでつなげるのは、作り物っぽくて嫌だなって思いました。余命ゼロだってわかってから2、3日の話ではなくて、ずっと病室の中で自分自身と向き合って、逃げる場所は読書することだったり、たまに来るお母さんとの会話だったりという中、突然卓也という人物が現れて、そこに救われる部分がすごく多かった。でも、人を好きになるということは、もっともっと自分の死を近くに受け止めないといけなくて、そこで葛藤しているほうが人間ぽいし、笑っているほうが泣いたときは悲しくて。思っていることと表情とかが、食い違っているほうが良いのではと思っていたので、全部をシナリオ通りにするのは絶対嫌だなと。そこだけは意識的にぐちゃぐちゃにしてみようって思いました。途中からは、自分から軸がどんどん卓也になって、卓也がこうだからとか、私が死んだら卓也は可哀想だから私はこうするって、どんどん変わっていきました」

北村「卓也が代行をなぜ引き受けたのか、それは卓也の過去が関係しています。発光病は岡田家からしたらタブーというのもあって、お姉ちゃんに関する経験と重なったと思うんです。だからまみずに対して何かを償わせてほしいというのは、お姉ちゃんを止められなかったことに対する後悔、懺悔、贖罪みたいなことと重なっていたと思います。でも、段々まみずの代行をしていくうちにまみずのお父さんへの思いとか、病室でまみずと話すうち、お姉ちゃんの存在を通り越してまみずという人物だけが目の前に現れる感覚が卓也の中にあって、まみずとは逆でどんどん衝動的になっていくんですよね。最初は淡々としている人間に見えていたかもしれませんが、走ったりとか、まみずのお父さんに会いに行って訴えたり、衝動的になっていくのが卓也なのかなって。でも、まみずの前にいるときはどこか平静を装って、それはまみずを大事に思うからであって、まみずの前で涙を流したり、マイナスな感情は出さないっていうのは卓也の優しさだったのかなって思います。最初は受け身な卓也がどんどん前に出てくるというのは、この映画において僕がやったことです」

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―― 卓也の代行体験のシーンも楽しく見どころの一つ。永野&北村のお気に入りの代行体験はーー。

北村「遊園地の代行です。ロケをした遊園地は昔、家族でよく行っていたので一人で行くというのが、恥ずかしかったです(笑)」

永野「そこ?」

北村「そこ(笑)。やっぱり遊園地は一人で行くもんじゃないなって思いました。ほかにもいろいろやって、胸ポケットに携帯を入れてるんですけど、撮影も一人だったとはいえ、一人じゃない感覚ではあったかなって。意外とバッティングセンターは楽しかったし」

永野「いいなあ、病院から出られなかったから」

北村「でも、代行体験を一人でやるシーンもあったけど、ショッピングとか2人でやるシーンもあって楽しかったです」

永野「私はバンジージャンプのシーンが楽しかった! 病室でアフレコしていたじゃない。病室から叫び声が聞こえたよ」

北村「そうそう」

永野「感動的なシーンの前の日だったよね」

北村「そんな中一人で叫んでいて恥ずかしかった(笑)」

―― 卓也のとあるシーンでの女装も美しく、見どころといえる。

北村「自分でもいけるなって思いました(笑)。あと、このシーンの撮影日が11月3日で僕の誕生日だったので、女装のままケーキのろうそくを消して、エキストラの方もたくさんいらして、すごい大人数のかたにハッピーバースデーを歌ってもらってすごい体験をしました。芽郁ちゃんとはこの日にぐっと仲良くなったんです。それまであまり話してなかったんですけど、突然誕生日プレゼントをくれて」

永野「そこなの?」

北村「うん。それだけじゃなくて、いろいろくれたよね。気遣いがすごく嬉しくて」

永野「たいしたものは渡してないよ(笑)」

北村「ちょっと疲れたときは、エナジードリンクとかね。その気持ちがすごく嬉しかったです」

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―― 今回、難しい役どころに挑んだ2人。役者としてお互い刺激し合って、得るものも大きかったようだ。

北村「芽郁ちゃんはすごかったです。この映画において僕はどんな感情も受け取る大きなお皿になろうと思っていたんですけど、芽郁ちゃんの細かい表現というか、表情一つとってもなんとも言えない表情をしてくる感じ、笑顔の奥に何かがある感じがしました。お芝居の感じは、自分にも似ている部分があるなと。お互いキャッチボールがちゃんとできていたのが、すごくあって。僕は出すのが苦手なタイプだけど、お互いちゃんと投げるし、受け取るというキャッチボールが自然とできていたので、不思議な感じでした。だからアドリブも自然とできたんだと思います」

永野「匠海くんが受け皿になろうと思っていたというのは私も感じていて、クランクインのときから私が何をしても、絶対受け止めて、一回自分の中で落とし込んでから返ってくる。そのスピードが早いので、会話がちゃんと成立するんです。落とし込んで、そのままになって、じんわりじんわりだと会話が成立しないんですけど、消化して投げ返すまでのスピードが早いから、自然に会話が成り立つことの気持ち良さがありました」

北村「お互いに処理能力が早いし、爆発力もあるのかもしれないです。芝居が気持ちいいという言葉がすごくハマるねって2人で話していました。キャッチボールという言葉もそうですけど、気持ち良くお芝居ができるんです。僕は初めての感覚でした。不思議な感じだったよね」

永野「うん」

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―― ここはお芝居が気持ち良かった! そう感じたシーンは?

北村「いろいろありますが、一番は屋上に行く前に病室で手をつなぐシーンです。何も発さずともお互い受け取り合っている感覚がありました。芽郁ちゃん、温度を感じて泣きそうになっているんです。僕もまみずがまだ生きていると感じられました」

永野「なんで先に言うの?(笑)」

北村「(笑)。絶対言うだろうなと思って、先に言ってみた」

永野「私、今までいろいろな取材でこのシーンのことを話していたのに」

北村「新しい引き出しを開けてみるのもいいかなと思って」

永野「変な気遣いはいらないです(笑)。でも、アドリブが結構多いんです。役のまま言葉を発するって結構難しくて、どこかで素の自分が出てしまうし。でも、普段の会話が成り立っているからかアドリブも役のまま会話が続いていて、構えずに会話できるのは、現場の雰囲気もだし、匠海くんだからできるんだろうなって思いました。ここ、すごいなっていうのが結構ありました」

北村「何の用意もしてないもんね」

永野「私も匠海くんとのお芝居は気持ち良かったです。同世代の方とあまりご一緒しなかったので、また違う刺激をもらった感じがあるし、お互い刺激しあいながら、お芝居っていいなって思うような時間をもらいました」

―― お互いのシーンで好きなシーンは?

北村「芽郁ちゃんの提案でもあったと聞いたんですけど、渡良瀬家が3人で手をつなぐシーンですね。モニターで監督席に座って見ていたんですけど、泣きました。この人にしか出せない空気が動いていました。人の感情を揺さぶるシーンでした」

永野「たくさんあるので、迷っちゃいますね。匠海くんが海に座っているシーンの背中だけで泣きそうになりました。背中だけで感じるってすごいです」

北村「芽郁ちゃんの声を聴きながら芝居してるから。芽郁ちゃんの声あってこそだから」

永野「本当に? いやー、でも、背中だけで泣かせる匠海くんすごい!」


Writing:杉嶋未来

インフォメーション

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(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

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『君は月夜に光り輝く』

3月15日(金)公開


高校生の岡田卓也が出会った同級生の渡良瀬まみずは、不治の病である発光病で入院生活を送っていた。細胞の異常によって皮膚が発光するその病気は、死が近づくにつれて光が強くなり、成人するまで生存した者はいない。卓也は、病院から外出が許されないまみずに代わり、彼女の願いを実行し、その感想を彼女に伝える「代行体験」を始め、まみずは卓也との代行体験を通し、人生の楽しみを覚える。次第に2人の距離は縮まっていくが、卓也とまみずは避けることができない死の恐怖に襲われ…。

▼公式サイト
https://kimitsuki.jp/

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