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2016年本屋大賞第2位、Yahoo!検索大賞2016小説部門賞受賞など、“泣ける小説”として話題を呼んでベストセラーとなった住野よるのデビュー作「君の膵臓をたべたい」が実写映画化された。今回、映画初主演でクラスメイトの山内桜良が重い膵臓病を患っていることを唯一知ることになる“僕”を演じる北村匠海と、映画、ドラマ、ミュージックビデオなど幅広いフィールドで活躍し注目を集める月川翔監督に、この感動作が誕生した背景をインタビュー。

“僕”の感情に嘘のない芝居ができました

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――映画「君の膵臓をたべたい」の試写がスタートすると、「北村匠海が素晴らしい」「号泣した」という評判が駆け巡った。

月川翔「関係者やキャストのみなさんに観てもらう初号試写の日、1日3回上映したんですけど、すべての回で試写室から出てくる人たちがみなさん目を真っ赤にしている光景を見て『これはいけるんじゃないか』と思いました」

北村匠海「僕も、試写で観たときに、『これはいいものができたな』と思ったし、泣きました。自分が主演で立つ映画を月川さんに撮ってもらえたことや、この作品で自信が持てたことが嬉しくて。『早くみんなに観てほしい』と思う映画でした」

月川「泣いている匠海くんを、『自分の出ている映画で泣くかよ!』とバカにしながら次の回の試写室に入っていった桜田通くんが、誰よりも泣いて出てきたときに手応えをつかみました(笑)」

北村「アハハハハ(笑)」

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――北村が泣いたシーンとは、感情に蓋をして生きてきた“僕”の目から、思わず涙が溢れてしまうシーンである。

北村「まさかの、自分で自分に泣かされるという(苦笑)。映画を観ながら徐々に感情が高ぶってきていたので、『俺、あそこで泣くのかなあ』となんとなく予感していたら、案の定涙が溢れてしまって……」

――クライマックスとなるこのシーンについて、北村と監督は、撮影当日を迎えるまで一切話さなかったという。

北村「“僕”という人間にとって、あの出来事は突然体験することなので、そこに向かうお芝居をしないようにしていたんです。だから、台本もあのシーンに関しては前日まで深く読み込むことはしませんでした」

月川「構えて出す涙じゃないですし、何かを話してしまったら何も話していない状態には戻れないので、あのシーンについて話すことは徹底的に避けました。自分からは絶対に言い出さないようにしましたし、匠海くんから何か質問されたらどうかわそうかとすら思っていたくらい。撮影当日は、一回しかできないだろうという緊張感がありました。台本では『泣いてもいいですか』というセリフを言ってから“僕”が泣き始めるけれど、本番ではそのセリフを言う前にもう泣いていた。僕は感動してモニターの前で泣いてしまったんですが、お芝居として正解かがわからなかったので、セリフを言ってから技術で泣くお芝居もやってもらいました。でも、編集してつないでみると、やっぱり一回目のお芝居のほうが嘘がなくて、胸に強く迫ってきた。編集しながら正解をつかんでいった感じです」

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北村「“僕”の感情に嘘のないお芝居ができたことには満足しつつ、俳優ですから、やっぱり脚本通りにお芝居をしたいので、セリフを言う前に泣いてしまったことに関しては悔しさもあります。でも、あそこではどんなにこらえても涙が落ちてきてしまって、自分でも制御できなくて。終わったあと思わず監督に『いやあ~、悔しいです』と言っちゃいました(苦笑)」

月川「そのこらえている感じが良かったんですよね。“僕”は、自分が泣いていると認めていない状態でずっと耐えているんですけど、我慢しきれなくなって『泣いてもいいですか』と言うときにはもう泣いている。嘘のない芝居を見れましたし、何度見てもぐっときます」

――“僕”は極端に言えば、人との交流を経て感情を獲得していくが、その感情を制御できず戸惑うロボットや宇宙人のようなキャラクター。北村はこの“僕”という役を、脚本を読んだ時点で「あ、俺に似てるな」とシンパシーを抱いたという。

北村「“僕”が考えていることが、手に取るようにわかったんです。撮影に入る前に監督からいただいたお手紙に書かれていた、監督が考える“僕”のイメージも、僕が思い描く“僕”にかっちりとハマったので、リハーサルで目線や癖などを自分なりにやってみて、そして監督が調整してくださいました。ここまで自分の枠のなかにカチッとはまる役は初めてでしたし、ものすごく演じやすかったです」

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――2人が仕事をするのはこれが2回目。初顔合わせは7年前、月川が監督したRADWIMPSの「携帯電話」のPVだった。当時、北村はまだ中学1年生。

月川「オーディションで匠海くんを見て、なんてイノセントで憂いのある子なんだ! と驚きました。そのままいい形で大人になってくれた状態で、今回仕事ができました。そして、先程の話題に出た泣くシーンで、僕が正解かどうか判断できない芝居、つまりこちらの想像を超える芝居を見せてくれたことに、ものすごいポテンシャルを感じます」

北村「月川さんは、ものすごくいい意味で、“THE 監督”という感じじゃないんです。俳優と同じ目線で考えてくださったりするので、話しやすいし相談しやすい。RAD(WIMPS)のときから、子供ながらに『心地よい現場だなー』と思っていました」

月川「アハハハ(笑)」

北村「RADのオーディションで、月川さんから『携帯電話の中に人がいたら何をしてると思います?』みたいなことを質問されたとき、『メールの仕分けとかしてるんじゃないでしょうか』と答えたら、月川さんはもともとそういうコンセプトでPVを撮ろうと思っていたらしくて、いざ現場に行ったら自分のイメージがセットになっていてびっくりして! 自分も一緒にPVを作れた感覚があって嬉しかったんです。今回も、自分が思い描く“僕”を一緒に作っている感覚があってすごく楽しかったです」

月川「中学生なのに面白いことを考えてるな、と感心しました。僕自身、正解は監督がすべて持っているという考え方ではないので、一緒に相談しながら作れる人とやりたいと思っているんです。キャストやスタッフと共同作業をしたいので、『こうしてください』とは言わないですね。匠海くんへの手紙にも『僕がイメージする“僕”はこういう感じです』と書いたと思います」

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北村「そういう雰囲気があったので、この現場では現場のスタッフさんのお仕事にも目を向けていました。カット割りを確認しているときも全部聞いてました」

月川「普通、俳優部は控室や待機スペースに戻るのに(笑)」

北村「『役者は役者』みたいな線引きが僕はあまり好きじゃないんです。カメラマンさんに露出を聞いたり、どうやって照明を当てているのかを見学したりして、すごく楽しかったです。RADのPVも今回も、自分に近い役柄だったので、いつか月川さんの映画で自分とはかけはなれたキャラクターを振り切って演じてみたいです」

月川「僕は青春ものやラブストーリーが好きで、そういう映画を多く作っているけれど、映画を撮り始めた頃はアクション映画が好きだったので、そういう映画を匠海くんと撮れたら面白そうですよね。『ゆとりですがなにか』を観て、『北村匠海とこんなのやりてえな』とちょっと悔しかったですし」

北村「殺陣とかやったことあります。アクションやりたいです!」

月川「一緒に振り切りましょう!」



Writing:須永貴子

インフォメーション

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(C)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (C)住野よる/双葉社

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『君の膵臓をたべたい』

公開中!


“僕”(小栗旬)は、高校時代のクラスメイト・山内咲良(浜辺美波)の言葉をきっかけに教師となり、母校の教壇に立っている。教え子との会話中に、“僕”は桜良と過ごした日々を思い出す。腎臓の重い病気を患っている咲良の「共病日記」(闘病日記)を偶然見つけたことから、彼女の病気を唯一知っている人間として、“僕”(北村匠海)は咲良と次第に一緒に過ごすようになったのだ。あれから12年、彼女の親友・恭子(北川景子)もまた、結婚を控えて、桜良のことを思い出していた。そしてある出来事により、2人は桜良の本当の想いを知ることになる。住野よるのデビュー作にしてベストセラーを実写映画化。12年の時を越えて、感動の真実が明らかになる青春ストーリー。

▼公式サイト
http://kimisui.jp/


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