「今回、6年ぶりに舞台をやらせていただくのですが、21歳の時に初めて舞台に出させていただいて、そこから4本ほど続けていく中で正直に言うと、舞台に対しての苦手意識が強くなっていました。もちろん学ぶことも多かったですし、どの舞台でも貴重な体験をさせていただきました。でも、自分が舞台の上に立ってお芝居をするということに対しての苦手意識というものが、どうしても拭えずにいて。それでしばらく舞台からは距離を置いていました。“もう一生舞台やらない!”と、頑なになっていたわけではないんですよ。俳優として今は映像の仕事に専念したいという思いもありましたし、次に“これは”と思える作品と出会えたらまた舞台をやろう、とも思っていたので」
「そうですね。この作品のお話をいただいたときに、本当に理屈ではなくて“あ、もうこれはやらないといけないやつでしょう!”って。これをやらない選択肢はないよねっていう自分の中でのスイッチが入ったんです」
「木野花さんが演出をされるのですが、木野さんは初舞台の時にご一緒させていただきました。その作品は演出家さんが稽古をしながら台本を書かれていたのですが、どうしても稽古後半は執筆を優先して自主稽古になることも多かったんです。その時によく木野さんに稽古を見ていただきました。木野さんはとても優しくて愛情深い方。そしてお芝居をしている時は誰よりも本気で、誰よりもエネルギッシュで、本当にすごい方だと思いました。なので今回またご一緒できることはとても嬉しかったです。キャストの方々も小泉(今日子)さんは以前ドラマでご一緒させていただきましたし、小林(聡美)さんと安藤(玉恵)さんは今回初めてご一緒するんですけど、私自身ずっと出演作を拝見してきた素晴らしい女優さん。そういう魅力的な方々とご一緒できるというのと、やはり演目が向田邦子さんの『阿修羅のごとく』であるということ。もう、色々ことが合わさって、これは絶対にやりたい!と思いました」
「本当にすごい作品ですよね。存在は知ってはいたけれどきちんと拝見したことはなくて、初めてドラマ版を見た時にも“こんな作品があったんだ!”ってびっくりして…。うまく言えないのですが、本当によくできた物語だと感じました。四姉妹の描かれ方もそれぞれが違う個性をしっかり持っていて、鋭い視点ですよね。本当にすごい本だなと思いました。私は昭和の時代を生きたことがないので最初は当時の女性との感覚の違いを感じましたが、自分の役を掘り下げたり、改めて脚本を読んでセリフを入れていくと、刺さる言葉がたくさんあり、普遍的な感覚も描かれていることに気づきました。本番までにしっかり向田さんの言葉たちと向き合っていかなければと思っています」
「今はまだ本読みをした段階なので咲子と自分自身が繋がっていくのはこれからだとは思っていますが、とっても強い女性です。姉妹でいる時はすごく達観していてポッと本質をついたことを言ったりしますが、時に奔放さもあって、危なっかしいところもある。一方、ボクサーの彼氏といる時は健気で献身的に支えている女の子で一人の中にも色々な面を持っているので、その咲子という役の多面性を、きちんと舞台上でお芝居していけたらと考えています」
「セリフ劇としてのユーモアもあるし、言葉のリズムもありますし、演出面でも場面展開の仕方とか“こういうふうにやっていこうと思います”というお話を聞いて、“ウワァ、これは果たして成立するんだろうか!”とドキドキしています。稽古場ではそれぞれの役の背景も丁寧にみんなで考え話し合いながら徐々に徐々に作っていく、という進め方。舞台の形もセンターステージで…でもそれが果たしてどれくらい大変なことなのかもまだ全然想像つかないですね。逃げ場がない舞台、後ろからも前からも横からも見られている状況がどれほど怖くてどれほど大変なことなのか、まだ自分でピンときてなくて(笑)。丁寧に向き合ってくださる木野さんのエネルギーに負けないように、一生懸命ついていくのみ!です」
「挑戦的な舞台ですし、見たことのない舞台になるような予感はしています。もちろん自分は周りのみなさんよりも何もかも足りないということはわかっているし、もはや苦手意識どうこうなどと言っている場合ではない(笑)。素直にこの作品を楽しみたいっていう気持ちでいます。新しく何かを打ち出すというような気概ではなく、とにかく全身全霊でこの作品と向き合っていきたい。生半可な気持ちでは到底みなさんと一緒に舞台の上に立つことはできないと思うので。そうですね、戦いに挑むような気持ちで取り組んでいきたいです」
Writing:横澤由香
STAGE
【東京公演】8月30日(火)~9月19日(月・祝)東急シアターオーブ
【大阪公演】9月23日(金・祝)~9月27日(火)オリックス劇場
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