「役が決まってから脚本を読んで、まず、『私にこの役を演じられるのか?』と思いました。絹子さんは、まっすぐで、ユーモアもあって、強さもある、すごく魅力的な人。特に、嘉雄さんに一目惚れされるわけですから、とても大きなプレッシャーを感じました」
「三島さんとご一緒してみたいと思っていたので、声をかけていただいて嬉しかったです。三島さんは、現場の空気感をすごく繊細に作っていく方でした。細かいことを話し合うわけではないけれど、常に確認して同意しながら進めていくので安心感がありました」
「衣装とメイクに助けてもらったなと思います。悩みながらやっていましたが、東出さんとお芝居をしていくうちに、共有した時間を積み重ねている感覚があったので、次第にやりやすくなっていったと思います。常に大切にしていたのは、絹子の揺れ動く思いを丁寧に表現すること。絹子の思いが現代につながっていくので、現代のパートにバトンを渡すために、本(夏目漱石の『それから』)への思い入れがきちんと伝わることを意識しました」
「あまり古書を手に取ることがなかったんですけど、古書ってすごく素敵だなと思いました。過去にその本を所有していた人が、どういう思いでその本を手に取り、なぜ手放したのか? 単純に物語を読むだけではなく、本そのものがまとっているドラマに触れる面白さもあることに気付かされました。母が若い頃に読んでいた小説を、『これ、私が夏帆くらいの年齢で読んでいた本』と、鷺沢萌さんの『海の鳥・空の魚』を譲ってくれたことがあります。母がどんな思いで読んでいたのかを、考えるのが楽しかったです」
「『予兆』のときは敵対する関係の役柄でしたが、今回はまったく違う関係性だったので、とても新鮮でした。東出さんは『予兆』のときと変わらず、役に真摯に向き合う、ストイックな方でした。もともと本を読まなかった絹子は、嘉雄さんに出会って本の魅力を教えてもらいます。自分の知らない世界を教えてくれて、新しい扉を開いてくれるところに、惹かれたんじゃないかなと思います」
「自分の言葉で会話をするのではなく、同じ本を読むことで距離が縮まっていく様子を描くのは、とてもロマチックだと思います。特に、2人で一冊の本を読み合うシーンがすごく好きです。あまりにも2人が真っ直ぐで純粋なので、演じている私が照れてしまうこともありました。試写で、スクリーンに映っている自分を見て、恥ずかしくなることも…(笑)」
「栞子役の黒木華さんや大輔役の野村周平さんと現場ですれ違うことはありましたが、面と向かってお芝居をすることはなかったので、スクリーンで見て感動しました。一歩間違えればキャラクターになってしまいそうな難しい役を、繊細に演じていらっしゃって素敵でした。そして、映像と音楽がとても美しかったです。特に、絹子と嘉雄さんが海で遭うシーンはとてもきれいな映像でした。ちょっとした息遣いも丁寧に拾ってくださっていて、ぜひ映画館の音響で楽しんでほしいです。ミステリーと謳っていますが、これは古書を通してさまざまな人間関係が描かれている人間ドラマだと思います」
Writing:須永貴子
MOVIE
11月1日(木)公開
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