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鎌倉に暮らす3姉妹と父親がほかの女性ともうけた異母妹が共同生活を送る中、さまざまな出来事を経て家族の絆を深めていく姿を描く『海街diary』。ベストセラーを誇る吉田秋生のコミックを、『そして父になる』などの名匠、是枝裕和が実写化。第68回カンヌ国際映画祭のコンペ部門に出品され、現地でも高評価を集めた本作で、三女、千佳役で出演を果たした夏帆。マイペースで独特なキャラクターを魅力たっぷりに演じた彼女に、是枝監督の演出や共演者たちとのエピソードなどを訊いた。

現場にいる間ずっと幸せでした。
この作品のことを思い出すと、心がほっこり温かくなります。

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―― 今作で夏帆が演じた千佳は、ほんわかとしていてみんなを和ませるキャラクター。そんな千佳について、夏帆は「姉妹の中で緩和剤であり、バランサーなんです」と語る。

「上のふたりがケンカしたとき、何気なく場を和らげるのは千佳だし、すずが来たときも上のお姉ちゃんたちとつなげるパイプ役となります。そういうことを頑張ってやるというより、自然とできる子なんですよね。原作の千佳と映画は、雰囲気がちょっと違っていて、是枝さんが私に寄せて千佳を描いてくださいました。原作の千佳はアフロで、映画化に当たり、千佳のヘアスタイルは変わりました。もちろん原作を尊重して作っているんですけど、映画『海街dairy』として考えたときに、映画の中の千佳の髪型になりました。それでも姉妹の中でも千佳は自分の趣味がはっきりしている子という設定なので、パーマをかけて前髪を短くして、衣装もおばあちゃん子なので、どてらを着ていたりと、個性的な雰囲気となりました」

―― 三女、千佳は、食べっぷりも最高! それは先ほど夏帆が語ったように、是枝監督が夏帆自身に寄せていったためだ。

「私自身、食べることは大好きです。でも、今回は食べ過ぎました(笑)。自分の中で食べることも、テーマのひとつだったんです。姉妹の日常を描く上で、食べるシーン自体多いんですけど、姉妹の中で一番食べるのは千佳だろうなと思って。特に妹のすずとちくわカレーを食べるシーンでは、ずっと口にほうばって食べ続けています。お芝居が違っていたら、監督が止めてくれるだろうと、思い切りやりました(笑)。この作品では、千佳とすずで重い話をする時、千佳がすずにさらっと聞きにくいことを聞くのが印象的でした。そういうことができるのが千佳らしいところなので、そこは大切に演じました」

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―― 苦労したのは、千佳らしさを出しつつ、自然体でいることと、姉妹の中での立ち位置だった、と振り返る。

「千佳は抱えているものが見えにくいキャラクターですが、つねに千佳らしさを考えて、居方や仕草、話し方を意識しました。でも、計算しすぎるとあざとくなってしまうので、そこは戦いでした。ただその場にいることが理想なのかもしれない。千佳の立ち位置が意外と難しかったです。姉妹のバランスについては、私自身、姉妹がいないので、距離感など難しいかもしれないと思ったんですけど、4人の実年齢が役にそって離れていたので、現場に入ってからは難しいことは考えずにできた気がします。みんな本当の姉妹のように仲良くなれて、4人でいろんな話をしました。だいたいくだらない話が多かったんですけど(笑)。撮影が終わってからも、みんなで食事に行ったり、買い物に行ったり、こんなに仲良くなれると思わなかったです」

―― 長女、幸を演じる綾瀬はるか、次女、佳乃を演じる長澤まさみ、腹違いの妹、すずを演じる広瀬すずら共演者の印象も愛情たっぷりに語る。

「はるかちゃんはものすごく面白いんです。笑いのセンスがずば抜けていて、でもしっかりしていて、どっしりしています。現場で動いている姿が古風な感じ、凛とした佇まいですごく素敵でした。まさみちゃんは、子どもみたいなときと大人のときのギャップがすごく面白い人です。にぎやかで楽しいです(笑)。すずは4人の中で一番しっかりしていて、物事に動じないんです。若いのにすごいなあって(笑)。一方で年相応のかわいらしい面もあるんです」

―― はじめて参加した是枝組の印象は?

「これまでの作品を拝見して、おだやかな現場なんだろうなって想像していました。実際、現場に入ってみたら、想像以上にゆったりとしていて、いい時間が流れていました。こんなにリラックスして現場にいていいのかなって、あまりにも不安になりすぎて、スタッフの方に『私、ふわふわしているんですけど、大丈夫ですかね?』って聞いてしまいました。そうしたら、『是枝さんの作品に出る人は、みんなそう言うよ』って(笑)。本当に撮影しているのかなって思うほど、日常を切り取られているような感じでした。現場では、かなり自由にやらせていただきました。是枝さんは、現場を見て台本を変えていかれるので、現場で増えたシーンがたくさんあります。私たちが遊んでいる風景を見て、それを入れてみたり。細かいシーンがすごく増えています」

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―― 死で始まり、死で終わる本作。千佳たちは、その経験を経てどう変わっていったのだろう。

「すずがやってきたことによって、家族の形が変わっていきます。一番変わったのは、幸なのかもしれません。千佳はもうすでに自分の時間があるので、いい意味であまり変わっていないのかもしれません」

―― 実力派女優たちが繰り出す妙演はもちろん、舞台となる鎌倉の美しい四季の折々の風景も見どころだ。

「原作と同じく、鎌倉が舞台なのがこの作品の魅力だと思います。夏は夏、秋は秋に冬は冬に春は春と、季節をまたいで撮りました。私は夏から参加したんですけど、夏は海がすごくきれいで、秋は紅葉、春は桜が美しくて。鎌倉は、時間の流れ方が違う気がします」

―― 四季の移ろいとともにゆっくりと進んでいく姉妹たちの関係や周囲の人々との変化が胸に沁み入る。夏帆にとってこの作品は、どんな存在になっていくのだろう。

「日常を淡々と描きながら、ここまでドラマチックなるなんてすごい作品だと思います。最近、振り切れていたり、キャラクターが強い役を演じることが多くて、日常を描く作品が少なかったんですよね。そろそろ日常を描く作品をやりたいと思っていたけど、まさか是枝さんの作品でできるなんて。現場にいる間、ずっと幸せでした。今でも、この作品のことを思い出すと心がほっこり温かくなります。私自身にとって、大事な作品です」


Writing:杉嶋未来

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(C)2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

MOVIE

『海街diary』

6月13日(土)公開


鎌倉で暮らす、幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)ら三姉妹。そんな彼女たちのもとに、15年前に姿を消した父親が亡くなったという知らせが届く。葬儀が執り行われる山形へと向かった三人は、異母妹すず(広瀬すず)と対面する。身寄りがいなくなった今後の生活を前にしながらも、気丈かつ毅然と振る舞おうとするすず。その姿を見た幸は、鎌倉で自分たちと一緒に暮らさないかと持ち掛ける。こうして鎌倉での生活がスタートし……。

▼公式サイト
http://umimachi.gaga.ne.jp/

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