「上のふたりがケンカしたとき、何気なく場を和らげるのは千佳だし、すずが来たときも上のお姉ちゃんたちとつなげるパイプ役となります。そういうことを頑張ってやるというより、自然とできる子なんですよね。原作の千佳と映画は、雰囲気がちょっと違っていて、是枝さんが私に寄せて千佳を描いてくださいました。原作の千佳はアフロで、映画化に当たり、千佳のヘアスタイルは変わりました。もちろん原作を尊重して作っているんですけど、映画『海街dairy』として考えたときに、映画の中の千佳の髪型になりました。それでも姉妹の中でも千佳は自分の趣味がはっきりしている子という設定なので、パーマをかけて前髪を短くして、衣装もおばあちゃん子なので、どてらを着ていたりと、個性的な雰囲気となりました」
「私自身、食べることは大好きです。でも、今回は食べ過ぎました(笑)。自分の中で食べることも、テーマのひとつだったんです。姉妹の日常を描く上で、食べるシーン自体多いんですけど、姉妹の中で一番食べるのは千佳だろうなと思って。特に妹のすずとちくわカレーを食べるシーンでは、ずっと口にほうばって食べ続けています。お芝居が違っていたら、監督が止めてくれるだろうと、思い切りやりました(笑)。この作品では、千佳とすずで重い話をする時、千佳がすずにさらっと聞きにくいことを聞くのが印象的でした。そういうことができるのが千佳らしいところなので、そこは大切に演じました」
「千佳は抱えているものが見えにくいキャラクターですが、つねに千佳らしさを考えて、居方や仕草、話し方を意識しました。でも、計算しすぎるとあざとくなってしまうので、そこは戦いでした。ただその場にいることが理想なのかもしれない。千佳の立ち位置が意外と難しかったです。姉妹のバランスについては、私自身、姉妹がいないので、距離感など難しいかもしれないと思ったんですけど、4人の実年齢が役にそって離れていたので、現場に入ってからは難しいことは考えずにできた気がします。みんな本当の姉妹のように仲良くなれて、4人でいろんな話をしました。だいたいくだらない話が多かったんですけど(笑)。撮影が終わってからも、みんなで食事に行ったり、買い物に行ったり、こんなに仲良くなれると思わなかったです」
「はるかちゃんはものすごく面白いんです。笑いのセンスがずば抜けていて、でもしっかりしていて、どっしりしています。現場で動いている姿が古風な感じ、凛とした佇まいですごく素敵でした。まさみちゃんは、子どもみたいなときと大人のときのギャップがすごく面白い人です。にぎやかで楽しいです(笑)。すずは4人の中で一番しっかりしていて、物事に動じないんです。若いのにすごいなあって(笑)。一方で年相応のかわいらしい面もあるんです」
「これまでの作品を拝見して、おだやかな現場なんだろうなって想像していました。実際、現場に入ってみたら、想像以上にゆったりとしていて、いい時間が流れていました。こんなにリラックスして現場にいていいのかなって、あまりにも不安になりすぎて、スタッフの方に『私、ふわふわしているんですけど、大丈夫ですかね?』って聞いてしまいました。そうしたら、『是枝さんの作品に出る人は、みんなそう言うよ』って(笑)。本当に撮影しているのかなって思うほど、日常を切り取られているような感じでした。現場では、かなり自由にやらせていただきました。是枝さんは、現場を見て台本を変えていかれるので、現場で増えたシーンがたくさんあります。私たちが遊んでいる風景を見て、それを入れてみたり。細かいシーンがすごく増えています」
「すずがやってきたことによって、家族の形が変わっていきます。一番変わったのは、幸なのかもしれません。千佳はもうすでに自分の時間があるので、いい意味であまり変わっていないのかもしれません」
「原作と同じく、鎌倉が舞台なのがこの作品の魅力だと思います。夏は夏、秋は秋に冬は冬に春は春と、季節をまたいで撮りました。私は夏から参加したんですけど、夏は海がすごくきれいで、秋は紅葉、春は桜が美しくて。鎌倉は、時間の流れ方が違う気がします」
「日常を淡々と描きながら、ここまでドラマチックなるなんてすごい作品だと思います。最近、振り切れていたり、キャラクターが強い役を演じることが多くて、日常を描く作品が少なかったんですよね。そろそろ日常を描く作品をやりたいと思っていたけど、まさか是枝さんの作品でできるなんて。現場にいる間、ずっと幸せでした。今でも、この作品のことを思い出すと心がほっこり温かくなります。私自身にとって、大事な作品です」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
6月13日(土)公開
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