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2013年9月20日更新

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クリント・イーストウッドの監督・主演作が、日本映画として生まれ変わった。渡辺謙が演じる十兵衛、柄本明が演じる金吾とともに、懸賞金を求めて旅をする五郎役を手にしたのは柳楽優弥。この作品にどう挑み、何を手に入れたのだろうか?

クランクアップで初めて一発OKを貰えて泣きました

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── 柳楽が五郎役に決まったのは、オファーではなくオーディションだった。

「『許されざる者』は、オリジナルを一度観たことがあったんですけど、もう一度見返してから、「キッドかな…?」と漠然と思いつつオーディションに臨みました。キャスティングの方とプロデューサーの方が投げかける質問に答える僕の素の感じを、李監督が黙って観察しているというオーディションでした。ちょっと経ってから連絡があって、李監督とお会いしたときに、「柳楽君でやろうと思ってる」と言っていただいて、すごく興奮したのを覚えています。」

── 柳楽が演じる五郎は、アイヌと和人のハーフの青年だ。自分とはかけはなれた役柄を、どう掴んでいったのだろうか。

「アイヌについての本や資料を読んで準備しましたが、リハーサルを重ねるうちにそれだけじゃダメだとなって、上川(北海道上川町。この映画のロケ地になった場所)に暮らすアイヌの方と会う機会を作っていただきました。生の声を聞けたことや、現場にもずっといてくださる関係になれたことが支えになりました。」

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── 五郎を演じるために、柳楽はアイヌの人たちに勇気をもって踏み込んでいったという。

「ふだん、いろいろな体験談を聞いてもそこまで共感ってできないんです。やっぱり自分のことじゃないんで。でも今回は、五郎というキャラクターとしてアイヌの人たちの体験談を聞くことで、和人に対する憤りや、アイヌとしての悔しさみたいなものに共感できた。すごく恵まれた環境で、役に近づくことができたと思います。」

── 本作の監督は、『悪人』の李相日。主演は、渡辺謙。共演に、柄本明と佐藤浩市。渡辺が演じる十兵衛、柄本が演じる金吾とともに旅をするため、3人のシーンが多かった。プレッシャーは相当なものだったろう。

「すごいプレッシャーでした。謙さんと柄本さんと初めて3ショットで芝居をしたのは、劇中で五郎が十兵衛と金吾に初めて絡むたき火のシーンでした。五郎も緊張しているから酒を飲んで泥酔してましたし、僕も相当緊張しました。監督から言われた「先輩後輩はあるけれど、同じ土俵なんだから負けてちゃいけないんじゃないの?」という言葉を聞いて、余計なことは考えなくていいやと吹っ切れました。」

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── とはいえ順調だったわけではない。李監督は、「なかなかOKを出さない監督」として知られており、柳楽に至っては「OKが出ない監督」と思い込んでしまっていたという。

「「OKが出ない監督」なんているわけがないのに(笑)。でも、それくらい追い込まれてしまったんです。10回とか20回近くNGが出て、「何か違う」「もう一回」としか言われない。どこが悪いからこう直して、という説明をしない監督なので、その「何か」を見つけるのがものすごく難しかった。今こうして話すだけで、つらい気分になります……(苦笑)。でも、OKをもらうごとにちょっとずつ自信をつけていって、余計な不安が減っていって、自信と不安が良いバランスになった気がします。」

── 十兵衛と金吾の目的は、女郎を傷つけた男を討って懸賞金を手に入れること。五郎は「人を5人殺したことがある」とホラを吹き、道案内もできる自分は役に立つ人間だとアピールして、一味に入れてもらうことに成功する。そんな五郎が、人の命を奪うことがどういうことなのかを初めて実感して混乱した感情を爆発させる芝居は、五郎にとってのクライマックスだ。

「あのシーンでクランクアップだったんですけど、初めて一発OKがもらえてすっごく嬉しかったです。クランクイン前に、「ぜってークランクアップで笑ってやる」と思ってたんですけど、実際は泣きました。今まで一度も褒めなかった監督が、「よく頑張ったね」と言ってくれたので、それはもう……泣きました。」

── 柳楽にとって最大級の大作を経験して、そしてベテランとの共演を経て、何を今感じるのだろうか。

「作品が大きかろうが小さかろうが、現場のテンションは変わりません。ただ、出来上がった作品を観たときに、すごい作品に参加できて幸せだなと感じました。謙さんや柄本さんと時間を共有できることは、若手にとって本当にありがたいことです。浩市さんとは共演シーンは少なかったけれど、宿で食事をご一緒したり、お酒を飲みながら、いろいろな話を聞くことができた。芝居については自分のことで一杯一杯だったんですけど、現場での居方を拝見してとても勉強になりました。例えば謙さんは、僕が緊張しすぎていると、声をかけてほぐしてくれた。本当に小さな例ですけど、周りが見えているんですよね。厳しい部分からも、優しい部分からも、温かい人柄が伝わってくる。本当に尊敬します。自分もいつかああなりたいと素直に思います。」

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── クランクイン前の自分にアドバイスをするとしたら? という質問に、柳楽は「それ以上悩まなくていいよ」と即答した。

「宣伝キャンペーン中に監督から、今だから言える笑い話として、「北海道の現場に来ないかと思った」と言われました。それくらい、リハーサルでの悩み方が酷かったんです。的確な悩みならいいんですけど、脱線して、悩む必要がないところまで悩んでしまう。そこは僕の欠点なので、これから直していきたいです。」

── この映画がどんな風に届いたらいいなと思いますか?

「勧善懲悪じゃないし、明快な答えがあるわけじゃない。李監督がオリジナルについて「頭蓋骨の裏にピタッとはりついて剥がれない作品」と表現されていましたが、この作品にもそれは通じると思います。答えはお客さんそれぞれが出せばいいし、むしろ、答えなんて出さなくてもいい。僕は出来上がった作品を観て、必ずしも悪が悪いわけじゃないなら善ってなんだろうかとゴチャゴチャ考えましたし、女性の強さを感じました。数年後に観たらまた違うことを感じる予感がします。これを観た方が、何かを感じたり考えるきっかけになったら嬉しいです。」

Writing:須永貴子


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INFORMATION

MOVIE

『許されざる者』

絶賛公開中!

クリント・イーストウッドが監督・主演した『許されざる者』に、日本のスタッフとキャストが集結し、新たな日本映画が誕生した。舞台は1880年、明治維新期の北海道。かつて“人斬り十兵衛”と怖れられた男は、亡き妻と出会い生まれ変わり、刀を捨てて生きていた。十兵衛は極貧の生活から子供たちを救い出すために、女郎の顔に傷を付けた男を討って懸賞金を手にするための旅に出る。


▼公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/yurusarezaru/

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(C)2013 ワーナー エンターテイメント ジャパン

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