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2013年7月2日更新
大ヒットコミック『兎 野性の闘牌』を完全実写化した『真 兎 ー野性の闘牌─』で主人公の通称・兎こと武田俊を演じた佐野和真。役者人生の中でこれまでにないアプローチで撮影に臨んだという本作での経験がもたらしてくれたモノとは──
身を削るような思いで作品に没入していきたい。
── いじめられっ子の高校生が、天性の才能を生かして麻雀という勝負事の世界に挑んで行く“異色の青春ストーリー” 『真 兎 ─野性の闘牌─』。その物語の中に生きる佐野の姿は、これまでの彼の印象とはまた少し違う、そこはかとなく無垢な存在感を放っていた。
「そう観てもらえたのならとてもうれしいです。実は今回兎としてお芝居を作っていくにあたっては、基本的には監督に全てをゆだねて、監督の抱くイメージを忠実に演じていった、という形で…撮影中はそれこそチェックもしなかったので、本当に出来上がりがどうなるのかまったくわからない状態でした。完成したモノを観たときも、作品と自分との距離感が今までになかった感じだったので、なんかちょっと不思議な感覚でしたね。だからこの作品に関しては自分から“ここがいいから観てくださいね”という感じではなく、“こういうの出来ましたけどいかがですか? どこが好きですか?”って、投げかけている気分なんです。観てくださった方がどんな感想を持ってくださるのか、僕の芝居がどう評価されるのか…。興味津々です」
── 台本を読み込み、原作を読み込み、自分の中で準備していたプランも初日の数カットを撮る段階ですべてボツに! そこからはまさに“丸腰”の感覚で挑んだ。
「どんな作品でももちろん“いい作品を作りたい”と思って撮影に入りますし、そのために監督とお話する時間も必ず作っています。人と人ですから考えがまったく同じにはならないけれど、でも僕意外と頑固なんで(笑)、こっちも100%で押していくので、そうですねぇ…“110%くらいで押し返してもらえないと折れないぞ” っていうタイプです。そうやってディスカッションしながら役が見えてくる。でも今回は、もちろん納得の上ですけど、完全にバッサリ折ってもらったという(笑)。それはもう瞬時に“持ってる武器全部捨てろ!”って言われたような、全裸になったような気分。そういったことが、これまで役者をやってきて本当に初めての経験でした。だから2日目からはもう気持ちを切り替えて、ゼロの状態で臨みました。とにかく監督にすべて委ねて行こう。それしかないぞって。監督の中には兎の目線のやりかたひとつから、心の声のトーンや言葉の抑揚=“音”までも細かいビジョンが明確にあって、自分はそこへ辿り着くよう毎シーン毎シーン、消化はしつつですが、不安と戦い、常に葛藤を抱えながら演じてました。兎のことを“無垢だ”って思ってもらえたのは、たぶんそうやって“ゼロの状態の自分”でやったからだと思います。だからこそ自分で観るのは…ちょっと恥ずかしいんですよね。あ、ちなみに監督に唯一褒められたのは、“女の子へのニヤつきがいいね”ってことです(笑)」
── 生気のない目をしたいじめられっ子から、仲間に出会い麻雀という“武器”を得て前を向いて進み始める精悍な顔つきへ。劇中の兎は物語が進むのに相まって、着実に成長を見せてくれている。その歩みはそのまま佐野自身の大いなる葛藤の結晶。繊細な積み重ねが作品にしっかりと深みを与えている。
「麻雀もほとんどやったことなかったので、友だちと雀荘へ行って知らない人と打ってみたり。もちろんボロ負けですけどね(笑)。でも勝負が始まるとフッと目つきが変わるとか、打つスピードや目のやり方とかは、実際に見ることですごく勉強になりました。撮影が年始だったので、牌さばきなんかはリアル感をしっかり出すためにも、年末年始にお餅食べながらずっと家で練習したり。麻雀を打つ芝居に関しては、顔に出ちゃうと勝負にも影響してしまうので、どちらかというと我慢する、抑える表現のほうが多かったです。また、麻雀をやっている方にはよりリアルに、麻雀を知らない方にもこの作品を通して麻雀の面白さを知ってもらえたらいいなという部分にも終始気持ちを注いでやりました。まぁ…ずっと座っているっていうフラストレーションの蓄積も、立ってお芝居するシーンをさらに楽しんでできるっていう効果になりましたね(笑)」
── 無理難題を言われるとさらに燃える。絞られる現場は辛いけど好き、という佐野。どうやら己に負荷がかかるほど、役者魂が燃え上がるようだ。
「最近、現場に入っているとこう…僕じゃない僕になっているっていう感覚になるんです。今回もそうですけど、基本、自分がやっていることは同じだと思うんです。変わっていくとすると、やっぱり監督とかスタッフのみなさんとか、その現場でしか味わえない感覚、その現場にしかないモノ、そういうすべてとの共同作業の結果、“今回はこうなったぞ”ということなんじゃないかと。だから、そのためにはできることはすべてやりたいんです。僕、物事に対して“嫌だ”っていう気持ちがあまり芽生えないんですよ。高いところから飛び降りるのでも、海に潜るのでも、身体を絞るのも、長期間不便な地方で缶詰になるのでも…なんでもやりたいし、なんでも好き。せっかく自分のやりたい俳優という仕事をやってるんだから、いろいろ挑戦したいじゃないですか。今しか出来ないってこともたくさんあるわけだし。苦手は…お化け屋敷と蜘蛛くらいかな。でも蜘蛛食べろって言われたら“食べられるんですよね? じゃあ食べます”と。欲しがり屋なんでね(笑)。無茶ぶりされるほどテンション、あがるんです」
── 「外見的にはさすがに制服よりスーツがしっくりくるようにはなりましたけど」と笑う。デビュー以来走り続け、来年は25歳。大人の役者としてさらに役柄も広がっていくであろうこれからの自分にわくわくする、とも。
「それこそ2週間先、1ヶ月先がわからないような生活ですけど、それが逆に楽しみでもありますね。だって、来年の今頃の自分は?って考えても、ホントに何をしているかわからなくて、想像しただけでも楽しくなっちゃうし(笑)、実際楽しく過ごせるように必要なこともそれ以外のこともやっていたいし。人間、自分が可能性を潰してしまわなければ、いつだってなんだって出来るんですよ! だから、瞬間瞬間に“やりたい!”と思ったことにはトライしていきたい。そう考えると一日ってすぐだな、24時間短いなって感じることも増えました。これからまたいろんな作品、そしていろんな役柄と出会っていくと思いますが、一作一作、身を削るような思いで作品に没入していきたい。今はそんな思いでいっぱいです」
Writing:横澤由香
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『真 兎 ─野性の闘牌─』
2013年7月6日(土)~7月12日(金)池袋シネマ・ロサにて一週間限定レイトショー
累計300万部突破の大ヒットコミック「兎 野性の闘牌」、本格麻雀漫画を完全実写化!
運気支配の男、武田俊、通称「兎」。技巧派の女、山口愛、通称「ユキヒョウ」。そして、「園長」と呼ばれる豪運の持ち主、風間巌が率いるZOOが戦いの原野へと挑んでいく!
主演は佐野和真、水崎綾女、榊 英雄、東亜優、黒澤はるか、今井雄太郎、福永マリカ、松田賢二ほか出演(敬称略)
(C)2013 伊藤誠/竹書房/オールイン エンタテインメント
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