「映画化されることが発表されたのは、2019年の舞台『HERO~2019夏~』の初日のカーテンコールのときでした。観に来てくださっていたお客さんたちと同じで、僕たちキャストもサプライズで知らされました。そもそも映画化になるということ自体が嬉しいのに、お客さんたちと同じ瞬間に知ることができて、みんなで喜べたのは本当に嬉しかったですね」
「映画版では、北原里英さん演じる浅美とのデートシーンが回想で入っていたので、広樹と浅美のこれまでの2年間がどのようなものだったのかを、より伝えることができるなと思いました。舞台では演出の都合上、少しかいつまんでやっていた部分もあったので、そういう部分を映画版でしっかりと表現できるなと。自分としても、役を作る上で表現の幅が広がるのは有り難かったです」
「広樹という役は、感情表現が陰というか、内に入る芝居が多かったので、舞台では大げさに表現できないところがありました。西条監督とも、広樹の繊細さをどう伝えるかというのを、一から話しあっていました。舞台版のときに、西条監督からは「広樹を生きてほしい」と言われていましたし、僕としても、演じるのではなく、広樹を生きていないとできない役だなと感じていたんです。とは言っても、役を生きるというのはとても難しくて、自分の中で昇華させるまでに時間がかかりました」
「役を生きるのって、時間も必要なんですよね。例えば、『今、その人を生きてください』と言われても、演じはできても生きることはできない。生きるというのは、その人に向き合った時間があってこそのもの。時間を重ねれば重ねるほど、その人になっていけるものだと思うんです。僕は、舞台の稽古期間中も本番期間中も、ずっと広樹のことを考えていました。その時間があったからこそ、映画版で広樹という役を生きることができたと思っています」
「映画の撮影中は、他のキャストさんたちと、あえて距離を取っていたんですよ。広樹はパッと切り替えて入り込める役ではなく、先ほども言ったように、ずっと広樹として生きていないとできませんでした。だから、撮影待ちのときも、みんながいる部屋とは違う別の部屋で待機していたんです。みんながいる部屋から笑い声が聞こえてきて、いいなぁって思ったり(笑)。でも、撮影最終日の待ち時間のときに、北原さんがカードゲームを持ってきてくれて、そのときばかりは自分から「それ何?」って話しかけてゲームに参加しちゃいました。最終日だしいいかなって。それまで我慢していた反動もあって、僕が一番楽しんでゲームをしていましたね(笑)」
「松尾さんは同じシーンはなかったのですが、現場でご挨拶させていただきました。広樹の父親役ということもあり、完成した作品を見て、こういう父親を見て、広樹は育ってきたんだなと自分の中でもしっくりきましたし、共演した斎藤さんは死神大佐役として、ものすごいオーラを放っていたので、何度もそのオーラに飲み込まれそうになりました。お二人は撮影期間が短かったんですが、その短い時間の中でパッと仕事をして、颯爽と去っていくお二方の姿を見て、僕にはヒーローのように感じたんです。改めて、すごい俳優さん方だなと思いました」
「カズさん(三浦知良)は、僕がサッカーを始めたキッカケをくれた人で、今も昔も変わらず、僕にとってのヒーローです。僕はサッカーはやる方が好きだったので、観戦することにはそこまで興味がなかったんですが、カズさんだけは別でした。親に頼んで、試合を観に連れて行ってもらっていましたね。いまだに第一線で活躍されていますが、それって本当にすごいことだと思うんです。僕も役者という仕事を始めて10年ぐらい経ちますが、プロは厳しい世界だということを身を持って知っている分、ずっと第一線に居続けるというのは並大抵の努力ではないなと。カズさんが今も活躍していて、ヒーローだと思わせてくれる存在でいてくれていることが嬉しいんです。めちゃくちゃカッコいい人です!」
「今のこの情勢の中、映画『HERO~2020~』を公開できるというのは、とても幸せなことです。この作品は、人の心の温かさに触れることができる作品です。悩みや不安なことを抱えている人たちへ、一歩踏み出すキッカケの作品になれたらと思っていますので、ぜひ観ていただきたいです」
Writing:makie enomoto/Styling:小林美月/Hair&Make-up:前川泰之
ジャケット ¥39,000/パンツ ¥29,000 共にネサーンス(エリオット)
※価格は税抜き価格
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