「原作というベースがあるなかで、まさに西谷監督ならではと言える重厚な表現が物語の随所に散りばめられていて、登場人物の表情や心情がとても繊細に描かれているなと感じました。通常のミステリー作品を観終わった後に感じる、『なるほどこういうことだったんだ!』という、謎が解けた満足感だけでは収まらない、とても奥深い人間ドラマが展開されていて……。2時間にここまでの人間ドラマが詰まっていることに、感動を覚えました」
「ドラマ版から培ってこられた世界観をお二人が変わらずに持ち続けて下さったので、一緒のシーンでは自然と私も『シャーロック』の一員になれているようで嬉しかったです。私は岩田さん演じる若宮との共演シーンが一番多かったのですが、岩田さんはすごく優しくて紳士的な方だったので、緊張することもなく撮影に入ることができました。本当に温かく迎えてくださって、感謝の一言です。ディーンさん演じる獅子雄はドラマ版では自分の感情をあまり表に出さない印象が強かったのですが、今回の劇場版では感情が大きく動くシーンが描かれるところも見どころになっているように感じました」
「蓮壁家の一族自体が、物語の冒頭の登場シーンからずっと異質な感じがするというか、複雑な家庭環境が垣間見える一族の長女という役柄です。まるで蓮壁家全員が寂しさを抱えているような、そんな雰囲気が台本からも伝わってくる感じもあったので、それをしっかりと表現できたらと考えながら演じていました」
「アンテナを張って、『監督の考えていることをキャッチするぞ!』という気持ちでやっていたので、監督とお互いに信じ合ってできた役であり、作品だったのではないかと思います。監督から唯一リクエストがあったのが、蓮壁家のリビングで弟の千里(村上虹郎)と言い合いをする場面。紅の激しい感情をもっと強く千里にぶつけて欲しいという指示を監督からいただいたんですが、犬も絡んでくる場面なのでそこは大変でした。蓮壁紅は、私自身これまで演じたことのないようなとても挑戦的な役どころでしたが、監督を信じて頑張ったので、“新木優子”の新たな一面を見ていただけるのではないかと思います」
「小泉さんもこれまであまり見たことがないくらい異質な雰囲気をまとわれていた役だったのが新鮮でした。もちろん小泉さんご自身はイメージ通りの爽やかで紳士な方だったので(笑)、役柄とのギャップが素敵だなと思いました」
「きっと、誰かに愛されてるなって感じられた時が、人として一番幸せなのかなと思います。そうすることで、自分もまた他の誰かを愛せると思うから。逆に愛情が枯渇していると、どうしても人に対しても優しくできなかったり、素直になれなかったりすると思うんです。そういった意味では、自分が本当に愛してもらいたい人から愛してもらえるのが一番ですが、もしそれが叶わなかったとしても、誰かの愛情があれば、その人は救われると思うんです」
「私自身が西谷監督のファンでもありますので、監督の作り出した上質なミステリーを純粋に楽しんでいただきたいという気持ちもありつつ、とはいえ、本当に一筋縄ではいかないミステリーでもあるといいますか。誰が犯人なのか、といった単なる事件解決だけでは、決して語れない映画になっています。事件を解決するのは正義かもしれないけど、解決することだけが全てじゃない。果たしてこの物語をどうやって解決するのがベストだったのか――。きっとそれも観る人によって変わってくる物語だなと思うので。『あなたが思うベスト解決方法って何ですか?』と、逆にこちらから問いたくなるような、捉え方によって物語から受ける印象がガラッと変わってくるような、そんな映画になっていると思います。西谷監督が作り上げた一つの結末に、みんなが一丸となって向かっていったことで、深い人間ストーリーが生まれているので、登場人物ひとりひとりの気持ちを感じ取りながら、観ていただけたら嬉しいです」
Writing:渡邊玲子
MOVIE
6月17日(金)公開
pagetop
page top