「ひとえにこの作品を愛してくださったお客様方のお気持ちの賜物ですので、本当に感謝しています。脚本を読んだ際、シーズン2ならではの魅力でたくさんあふれていると思いました。神野ゴウの卒業というメインテーマがありますが、それと並行しながら甘利田と学年主任の早苗先生の関係性がどうなるのか。また給食のシーンも今までになかった演出で描かれるので、おいしい給食の新たな面を楽しんでいただくことができると思いました」
「甘利田というキャラクターが強すぎて、押し潰されそうになることもありました(笑)。今まで精神的に追い込まれる役どころや、ハードなアクションを携えた作品などで、いろんな感情表現をしてきましたが、心身ともに一番過酷な現場でした(笑)。そして、その中にもこの作品では、あらゆるところに遊びがあり、それは監督が俳優部に信頼を置いてくださっている証でもあるのですが、その分甘利田をどう生み出していくのかという戦いにずっと追われていました」
「給食を食べる前にどう踊るのか。給食はどう食べて、どんな反応をするのか。ナレーションもどう抑揚をつけていくか…etc。すべて自分で構築し、まずナレーションを録ってから芝居をのせていきます。自分ですべて考えて決めて現場に入らないといけないので、毎日眠れなかったです。この作品は完全オリジナルで原作がない、そこが強みなんです。原作のないゼロの時点から、目の前にあるもので、どう楽しもうかと考えながら常にエンジン全開です」
「大志は、自然体で現場にいてくれていて、どんどん自分から何かをキャッチしようとする気持ちが強くなっています。そこにプラスして芝居で遊びだす姿から、僕もやられたな、負けてられないな、と思うことが増えてきました(笑)。大志の芝居によって、僕の芝居も変わります。僕が演じる甘利田は、全力で大志が演じる神野ゴウについていっていますよ(笑)。負けたくないと思いながら。甘利田のすばらしいところは、負けたと思ったら子供にも負けを認めるところなんですよね。ゴウがおいしい給食の食べ方をしていると、負けを認めてそれにつられていく。その様が面白くて、建前と見せてはいけない姿が混沌として歯車がずれていきます。ゴウの存在があるからこそ、全身で給食を楽しみ、翻弄される男を今回も全力で演じられました。今回でいうと机にダイブするシーンなど、なぜそんなことをしたのか自分でも記憶がない程に現場に没頭していたのですが(笑)、思い切り演じることができました」
「1980年代が舞台ですので、コンプライアンスや労働基準法の改革がなされる前で今より人間臭く、人の感情に踏み込み、密になることで相手に関わり、支え合い称えあう時代だったと思います。給食については、今も昔も変わらなくて、子どもにとってはビックイベント。僕も学校で給食を食べることがすごく楽しみで、給食一つでその日がハッピーになったり、すごく悲しい1日になったりしていました(笑)。子どもは単純なので、女の子におかずをもらったらその子を好きになってしまったり(笑)、きなこパンが余ったら、みんなでジャンケンをしたり。じゃんけんに勝ってパンを食べたい思いもあるけども、同じクラスの友達たちと、勉強しなければいけない義務教育の概念から外れて、純粋に楽しめる時間でした。大人目線から見ると、その時代の経済や情勢も見えて、義務教育の中でこれからの時代を担っていく子どもたちに伝えたい歴史や文化などを含めて、すべてを給食にこめていたんですよね。そうやっていろんな観点から給食を見ていくと、すごく面白いんです。今回の映画では給食センターが出てきますが、給食は栄養とバランスなどいろんな事が考えられていて、多くの人たちが関わり献立ができていることを、この作品を通して様々な視点で見ていただけると思います」
「シーズン1のときも監督とも話していたのですが、コロナを経て改めて大衆に向けるエンタテインメントの必要性を感じています。家族で見て目を背けるシーンがないようにしましょうと話し、柔らかく優しい光のような、それでいて教養を培っていける作品を目指しやってきましたので、純粋に小さなお子さんたちにも楽しんでいただけた事がすごく嬉しかったです。僕の周りで学校に行くことが嫌になって、学校に行けなくなった子がいたんです、その子がこの作品を好きで見てくれていた事を聞き、僕は甘利田として、手紙を書いて精一杯応援するエールを送ったら、その手紙を凄く喜び飾りながら頑張って学校に行ってくれたみたいで…その動画を見せてもらったんですけど、僕も嬉しくて涙が止まらなくなりました。作品を作る意義を心底実感いたしました。お客様に観ていただき、夢を提供したり、活力を持っていただくことが、映画やドラマなどエンタテインメントの根源だと改めて感じさせてもらいました。僕にとっても本当に大切な作品です」
「監督との信頼関係があり、強固の絆で繋がっているので、今回も共にいろいろな壁を乗り越えて形にしました。撮り終えたことが奇跡だと思うくらい、たくさんの壁がありましたので感慨深いです。そういった意味で、一緒に作品を作った生徒の子たちへの思いも深いです。生徒のみなさんとは顔合わせから始まって、集まったときに『目に見えない力、目に見えない達成感、なんでもいいから何かを持ち帰っていただきたい。みなさんが携わっているこの作品がなぜ作られ、お客様に楽しんでいただくために作品の存在意義を見出さないといけないこと。作品の存在意義は僕らが作っていかなければいけない、お客様から必要とされる作品にしないといけない。常に何事にも本気で向き合って、本気で受け止めて、本気で悔しがることが大切です』と話ました。精一杯作品に対して共闘しましょう、と。今回も生徒のみなさんに卒業証書があって、“ひと夏、一緒に走り抜いてくれてありがとう、本当に頑張りましたね”って一人ひとりに手渡したら、みんな号泣でした。子どもたちに対する愛情はしっかり根付いている作品ですので、そこはすごく自信があります。絵にもしっかり映っていると思いますし、カメラのないところでも大人たちが愛情をしっかりと伝えていました。なので、生徒を演じる子供たちみなさんもとても生き生きとしています。生徒一人ひとり細かいところでも面白いことをしていて、キャラクターが立っているので(笑)、ぜひ注目していただきたいです」
「昨年の夏、外は約40度越えの灼熱の中、この作品に関わる撮影クルーとともに一生懸命必死に走り抜けてきた思い出は、生涯ずっと残っていく自分の誇りとなりました。唯一無二の世界観を放つ今作では、滑稽な姿をさらけだしながらも、好きなものを胸を張って好きといい人生を謳歌する甘利田の姿から、ご覧いただくみなさまにも、人生を楽しめる余白が自分にも秘められているかもしれないと思っていただけたら嬉しいです」
Writing:杉嶋未来/Photo:笹森健一
MOVIE
5月13日(金)公開
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