「人生を精一杯、必死に生きている姿がとても魅力的だと思います。給食に関わる出来事ひとつひとつに感情を動かされて、あんなリアクションをしてしまうくらい何かを好きになれることはとても素敵ですし、甘利田のように人生を楽しむことができたら幸せだと感じながら演じています」
「カロリーはかなり必要なのですが、食事をしてから撮影に臨むと緊張感がよれてしまったり、肉体的にも重くなってしまうので、基本的には食事を制限し挑みました。今回の撮影は、正直すごく大変でした。この作品を愛してくださる方たちが、楽しんでくださることだけを考えて撮影していました。嘘偽りなく、ただただ観る方たちのことだけを考えてやっていたと言えます。甘利田というキャラクターが一生懸命自分の人生を生きる様が、人間臭くて愛くるしくて、はがゆくて、いつまでも観ていたくなるような滑稽な姿になればいいなと思っていました。人が普段、誰にも見せない姿を楽しむことができるのが作品というものです。『おいしい給食』では、ある種“恥”のような部分をさらしている甘利田の姿を存分に楽しんでいただきたいです」
「阿吽の呼吸でやっています。最初から作品への愛の強いチームでしたが、撮影を重ねるにつれ、本当にいいチームになったと感じています。オリジナル作品なので、手作りしてきたという感覚があります。それこそ、衣装ひとつとってもみんなのこだわりがしっかりとあって、“あーでもない、こーでもない”と意見の飛び交う現場でした。持ち道具選びも担当を超えてアイデアを出し合ったり、衣装以外のスタッフがネクタイの候補をたくさん持参してくれたり。甘利田が着けている時計は、助監督の私物でおじいさんの形見でした。すごくいいデザインだね、という話から、ぜひ使ってくださいという流れになってお借りしたり。シーズン2のポスター撮影でもみんなでポーズなどを次々に提案し合ったり。『おいしい給食』の現場に帰ってきたと実感しました。撮影現場以外でも愛は溢れちゃって、僕は前作の打ち上げのときには、監督に抱きついてキスしていますから(笑)。監督のこと、そして作品のことが好きだと声を大にして言いたくなる現場でしたから、思わずしちゃったのかもしれません(笑)」
「今は、打ち上げどころか撮影中も必要以上におしゃべりをしないという状況で作品作りをしなければなりません。意見交換を十分にできない、極力減らしてやる撮影は、物作りの本質からは遥かにかけ離れていると思います。話し合いながら、ときには相手の人間性を知りながら、どんなビジョンを持っているのか、何を見せたいのかなど、いろいろな話をする中で出てきた要素、要因が作品に出てくるものです。それができない今の状況はすごく悔しいです」
「たとえば相手方の表情によったカットの撮影で、カメラには映らない、いわゆる“お付き合い”の芝居をするとき、そこでも本気の芝居をすることは心がけています。泣きの芝居があったら、僕は、テストだろうが、映らないシーンであろうが全部泣きます。あとは現場に入る際、相手の顔を見て毎回笑顔で挨拶することは意識していました。“おはよう”という言葉に、“体調大丈夫?”“一緒にがんばろうね”などありとあらゆる想いを込めて声をかけていました。クランクアップ時には生徒役のみんなに卒業証書を渡したのですが、みんな泣いていたので、積極的に言葉を交わせる現場ではなかったけれど、真摯に作品に向き合ってくれたと感じてとてもうれしかったです。僕も泣きそうだったのですが、まだ撮影が残っていたので、グッと堪えて証書を手渡しました。素敵なスタッフ、キャストで作品作りができたことは僕の宝です。そうやってできた作品をファンのみなさまにお届けできることは、最高のよろこびです」
「ものづくりに欠かせないものを忘れさせずにいてくれる、本当に貴重な作品です。作品に携わる人すべてから愛を感じるし、意見や知恵を出し合いながら作り上げてきました。ものづくりはこうでなきゃ、と感じさせてくれます。現場に泥臭くしがみつき、本番までの時間をいかに大切に過ごすべきか。その大切さを学んできたからこそ、こういう現場に出会えたことを幸せに思っています」
「毎回出し切って演じていますが、挑戦させてくれる現場なので、もっとやれることはたくさんあるとも思っています。シーズン2の話も前作の打ち上げでの “次、書いちゃいますけど、いいですか?”という脚本の永森(裕二)さんの声で動き始めました。今後も何があるかはわからないですね。現場では、修学旅行などで飛行機に乗り、給食で機内食を食べるというのもありなんて声も出ています(笑)」
「一世一代の芝居を目指していきたいという気持ちがあります。散り際に何を咲かすことができるのかを、そろそろ考えなければならない年齢なのかなと思ったりもします。何かを失ってもいいからやっていかなきゃいけない芝居があるような気がしています。具体的にそれが何なのか、今はまだわかりません。これまで制限される表現や芝居の中で、ずっともがきながらも、生々しい芝居がしたいと思い続けてきました。自分で撮るのか、映画になるのか、長編なのか短編なのか、どんなものになるかはわからないけれど、何かものを作っていきたいという欲がすごくありますし、大事だと思っています。自分から何かを仕掛けてものを作る作業として、写真を撮ることはやっていますが、自分の本線である芝居や作品の中でも、何かを発信して行くべきだと考えています。しっかり自分が役者であるために、何かをやり抜く、そんな作品を作ってみたいです」
Writing:タナカシノブ/Photo:笹森健一
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