「まず、自分から動いてみるという感じで、割と自由にやらせていただきました。衣装の段階から、色味や数珠のイメージなどを提案したのですが、柴田啓佑監督と描いていたイメージが一致していたので、話し合いながらやるというより、阿吽の呼吸のようなものをお互いに感じながら、自然な流れで風太郎というキャラクターが出来上がっていきました」
「原作があるキャラクターなので、まずは、この作品に関わるすべての方に敬意を払って、この機会を与えてくださったことに感謝の気持ちを持ちながら演じました。風太郎というキャラクターは破天荒でちょっと風変わりな僧侶なのですが、その根底には母との物語が過去にあるがゆえに、仏法というものに救いを求めていた。作中では、人と顔を合わせなくなったSNS社会とか、義理人情が薄れてきた世の中やいろいろなことに対して、風太郎が言葉を発するのですが、それは決して押し付けではない。風太郎の中から自然と出てきたものなんです。起きた出来事に対して、風太郎が息をするように返していることが、実は現代で失ったことだったりする。一昔前だったら当たり前だったことや、侘び寂びといった日本独特の古き良き心を失ってしまった現実を、改めて感じさせてくれるキャラクターでした。だいぶ破天荒なキャラクターなのですが、そういったものを感じさせてくれる不思議な魅力があります」
「普通の人とは違う風太郎のポジションは、僕にはしっくりくるというか、どこか性に合っていると感じました。風太郎の考え方、見せ方、捉え方はいろいろあるとは思うけれど、仏法をひたすら信じ、そこに救われた男の孤独な寂しさや、哀愁が垣間見えるところが好きです」
「胸元が大きく開いている衣装なので、寒かったです(笑)。でも、衣装を着ると役に切り替わるスイッチが入るので、衣装が助けてくれる部分というのはありました」
「すごくあります。ここまで自分の思いをしっかりとブレずに据えているというのは、本当にうらやましいです。時代が変わっていく中でも、変えてはいけないアイデンティティとかがある一方で、いろいろなものを変えていかなければいけない時代の中で、自分の思いなどもどこかで抑えることの方が多いですからね。昭和とかちょっと前の時代なら、フェイス・トゥ・フェイスで顔を合わせて話していたり、ご近所づきあいがあったり、銭湯で知らないおじちゃんに怒られたり、地域で子どもを育てるというのは当たり前だったのに、今は、人に触れないことが自分を守る一番のすべだったりする。そういうことに対して、悲しさを感じることもあります。人は、ひとりでは生きていけないし、自分のことは自分ではわからないもの。自分がどういう人間なのかは、人に評価されて初めて具体化されるものだと思っています。自分が相手に寄り添いながら、いろいろなものを見出していく。そこには喜びもあれば反省もある。さまざまなことがある中で、風太郎の「ストレートに自分の信じたことをパッと言える」という姿はとても気持ちいいです。破天荒なのに社会派なところが面白いです」
「破天荒で矛盾だらけだけど、深みがある。そこには母親とのエピソードも影響していると感じています。母親と離れ離れになり、血の繋がった人は誰もいない。そんな中、大僧正に拾われて、寺が家族のようになり、寺の教えが家訓となった。ある意味、恵まれているのかもしれません。そんなところも、深みを与えている理由だと思います」
「入れて欲しいことはいっぱいあります(笑)。着崩れたことを見直して、それを正す。そのために入れて欲しいですね、喝を。自分自身、言われるのも嫌だし、押し付けるようなことを言うのも嫌なんです。でも、本気で笑えて、本気で泣けて、本気で悔しがれる人生がいいと思っているので、何事も「こなしていく」とか「なんとなくやる」ということは避けたい。本気にならないことで、本当の楽しさが見えないのはもったいないことだし、そういうスタンスの人の姿を見ると切なくなります」
「現場では僕が彼の背中を見ていることが多かったです。すごく真面目で、真摯な方で、何度も何度も繰り返しやって答えを見つけていく姿から、学ばせてもらうことがたくさんありました。今でもお芝居に対してこういう向き合い方ができる人がいるということを教えてもらった気がして、嬉しかったですし、力をたくさんいただきました。大先輩である麿(赤児)さんとも、言葉を交わすというよりは、滲み出る人生観から感じるものがあった気がしています。大僧正にしか見えなかったです(笑)。表現者として、いろいろなものと戦い乗り越えてきた目をしていらっしゃる方。そういう方とご一緒できたのは本当に嬉しかったです」
「常に感じています。いいことがあれば悪いことがある。その逆もあるし、悪いことをしたらバチが当たるとも思っているので、「いいことをしなきゃ!」という気持ちでいます。作品を一緒に作った方だけでなく、観てくださる方にも縁だと思っています。たとえもう会えなくなった方でも、ご縁はずっと残っていくものなので、大切にしていきたいです」
「酒と女好きの破天荒な僧侶が、現代社会でいろいろなことに巻き込まれながら展開していく気軽に観れる“エンターテインメント作品”です。「ちょっと自分を見つめ直したい」「ポジティブな気持ちになりたい」という方に、肩の力を抜いて観ていただきたいです。風太郎はとても風変わりな人間なので、ちょっと小馬鹿にするくらいの気持ち、茶化す気持ちでもいいので(笑)、ぜひ、劇場で楽しんでいただければと思います」
Writing:タナカシノブ
MOVIE
11月1日(金)公開
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