「監督とはほぼ同世代で、一緒に歩みをそろえて映画を作れる数少ない同世代の仲間です。今回は監督にとっては初の原作もので、自分に少しでもできることがあればと参加しました。原作は出演が決まってから読ませていただいたのですが、すごく美しい物語で、純粋でもあり、その中で生活のささやかな幸せや光が宿っていると思いました」
「撮影が始まってからだと制作日数はそんなにないですし、時間もないので、クランクイン前に話せるだけ話したいと思いました。疑問点や作品への思いを共有するというか。制作会社の東京ニューシネマのみなさんも受け入れてくださって、ディスカッションする時間がたっぷりあってありがたかったです。これまでこういう機会はあまりなくて。リハーサルの時間をたくさん設ければできると思いますが、どの作品も時間がない中で作りますし、なかなか難しいと思います。僕たち俳優部はスタッフさんたちが積み上げてくださった中、参加することが多いので、前段階のところから監督といろんなコミュニケーションがとれたのは良かったです。役についてもですが、この映画はどこに向かうべきか、そういう話し合いができたのが大きかった。主人公を演じる上でどうしても自分が映る時間が長くなり、そういう意味で行助を通した映画という部分、映画を通した行助という両面を行き来しながら、いろんな話し合いができました。僕にとっては、監督とこの映画についての作戦会議をしていた感覚です」
「とても難しい役でした。とても真っ直ぐで純粋な話でありながら、展開はとてもシンプルなので、行助とこよみのやりとりにいろんなものが宿ってないといけないと思いました。行助は足が不自由でそれがコンプレックスだったと思うんですよね。そのコンプレックスも行助の人間性だと思いますし、なおかつそういう人は他人の痛みに敏感な気がして。人の痛みに寄り添える人間だと思いました。それがきっと行助とこよみをつなぎとめる部分で、そういう優しさや健気さを丁寧に演じられたらいいなと思いました」
「そう思ってもらえたら、嬉しいです。優しいだけの人では、この現実は終われないと思うんですよね。実際にこういう状況はなかなかないかもしれないけど、優しさだけでは続かないと思うし、綻びが出るはず。そういうところに行助の人間味みたいなものが出てくるだろうなと思って、そのシーンは大切にしました。そんなところもありつつ、やっぱり純粋さにも溢れているという部分も意識しました」
「衛藤さんとの、会話ややりとりは自然とありました。同い年だったので、一緒にお昼にお弁当を食べたりして、いろんな話をしました。衛藤さんはすごく気遣いのある方で本当に優しかったですし、現場に来るだけでパッと明るくなって救われました。衛藤さん自身もすごく芯があって、こよみと共通点はあると思いました」
「20代後半の二人で年齢的に若々しいという感じでもないんですけど、それでもすごくピュアで、自分たちの欲望の手前に優しさがちゃんとあるんですよね。それは素敵な関係性だと思いました」
「演じる上で想像しました。やっぱりすごく辛いことで、そういう状況と向き合うのは毎日が大変だと思います。行助がなんとか頑張るけど、途中で綻びが出るのはリアリティがあると思いました」
「中川監督は若いけど、しっかりビジョンがあって、それに邁進していく行動力がすごくある方なので、その行動力を尊敬しています」
「いろんな要素がこの映画にはあって、宮下さんが書いた原作のピュアで美しい部分を核にして、個性的で素敵なキャストの方々がいらして、素晴らしい映像に音楽があって、それらを中川監督という才能が集約し、形になったことにほっとしました。僕にとっても、同世代の監督とこのようにできる機会はなかなかないですし、撮影の期間、スタッフの方々と一致団結して、全員野球みたいな感覚で一緒に映画を作れたことが本当に楽しくて幸せでした。一人でも欠けたら、全然違う形になっていたと思います」
「気づいたら30代が近づいてきたので、20代でしか残せないものをしっかり残して、30代に向かっていきたいです。そういう意味で作品選びも慎重にして、一作一作重みを持って演じられたらいいなって思います。いい作品と出会っていきたいです」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
2月7日(金)公開
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