「僕が「FUNNY BUNNY」に出会ったのは、高校1年生くらいの時でした。監督と出会って間もないころ、監督から小説をいただいて、その時はまさか自分が演じるとも思っていませんでしたし、映画化の具体的なお話もまだありませんでした。それから監督と何度かお仕事や食事をさせていただき、“いつか「FUNNY BUNNY」を映像化できたらいいね”って話していたんです。その後も監督とのお仕事が続いていく中で今回こういう形になりました」
「剣持を自分がやるという意識はなく、まっさらな状態で小説を読んでいたので、自分の中の剣持をはじめとするキャラクター像というものが強くありました。みなさんも小説を読んでいると、頭の中でキャラクター像が出来上がると思うんですけど、それは僕の中にもあって。僕自身が剣持というキャラクターが大好きですし、剣持はこういう男であってほしいというようなものが、自分の中にも出来上がっていたので、それが体現できるかプレッシャーでした」
「どんなときでも楽しむことを忘れないところです。ユーモアがすごくあって、普通だったら焦るだろうという状況でも、常に楽しんでるんですよね。それは何かと言ったら、物事に対して命をかけられるからかな、と。それはある種、覚悟が決まっていないとできないことですし、とにかく人生を全力で生きてるんです。ギャンブルに全財産を注ぎ込んでも、なんとか生きていけるだろうっていう強さみたいなものもあるし、楽しめる心もある。そういう剣持のユーモアというのは、どこから来るのかと考えると、闇のある過去の部分だったり、彼自身の抱えるダークな部分からなんですよね。でも、人間ってみんなそうだと思うんです。バランスが取れないと、どちらかに傾いて崩れてしまう。だから、剣持は、人には自分の過去や弱さを見せないんです。結果、剣持の持つユーモアだったり、強さだったり、どちらも同じぐらい重くしていかないと、バランスが取れなくなってしまうというのが、剣持のベースにあると思って、そこを意識して役作りしました」
「話し方一つ変わるだけでも、大きく印象が変わってしまう難しい役でした。とてもクレイジーな男なんですけど、言葉に魔法があって、だからこそみんながついていって、うさぎの被り物をする人間が増えていきます。言葉などに説得力がないと、この映画が全く成立しないので、その説得力ってなんだろうと考えました。そして、やっぱり自分の経験や自分が背負っているものでしかないと感じました。人の痛みがわかるからこそ、言えることがあって、現実がわかっているからこそ、甘くないよっていう残酷さも伝えられる。剣持の背負っている痛みみたいなものを、自分も背負わないと、言葉に重みがなくて、ペラペラになってしまうんですよね。軽いと、こいつ何言ってるんだよって、ただの痛い奴になってしまうから、お客さんを引っ張っていけるぐらい、剣持の持つ魔法みたいなものや、説得力を出しながら演じるのが一番の課題でした」
「人物像についての話し合いは、ほとんどしなかったです。先ほど監督と一緒に取材を受けていて、監督がおっしゃっていたんですけど、監督自身が書いた本なので、そこに縛られたくないって監督もおっしゃっていて。自分が何年も前に書いた本なので、そこに縛られすぎると、遊びや幅がなくなっていってしまう。だから、監督自身縛られないでいこうと決めていて、現場ではそれぞれが持ってきたキャラクター像を作っていきました。僕が考えた剣持像が大きくずれていなければ、監督から何かアドバイスをもらうということもなかったですし、監督は僕が持ってきた剣持像を受け止めてくれたと思いますし、共有できたと思っています。監督とは何本もやらせていただいていますが、今までの中で監督と話す時間は一番少なかったですね。自分が剣持をやりながら、背負っているものは監督が全てわかってくれているっていう安心感というか、剣持を生み出したのは監督で、その監督が全部わかってくれているし、拾ってすくい上げてくれるという、その安心感はとてつもなくありました」
「剣持の十字架となっている過去があるからこそ、剣持は達観しているんです。漆原が初めて友達になる瞬間だったり、1人で背負わないといけないと思っていたことを、みんなが感じてくれたシーンがあって、そこは剣持の気持ちがちょっと軽くなった瞬間なんですけど、僕も演じながら感じられて良かったです。でも、図書館のシーンはヘビーでしたね。かなり疲れました。夜から朝まで撮影して、というのを毎晩毎晩やっていたんです(笑)。連日連夜やっていたので、何度やっても、ずっと図書館という感じでした(笑)。でも、あの図書館というシチュエーションだからこそ、お客さんもあの空間を思い切り感じられるというか、没入してもらえる感じになっていたらいいなと思います。芝居の力が試される部分もあるし、エネルギーが本当に必要だったので大変で疲れましたけど、いいシーンになって良かったです」
「天音くんとこんなにガッツリやるのは初めてでしたし、モトキさんは個人的にすごく好きな役者さんで、初めてご一緒できてすごく嬉しかったです。親友の漆原役が天音くんで良かったです。台本について、2人でものすごく話しましたね。天音くんも時間があれば、ずっと台本読み込んでいる方で、ずっと考えているし、何か見落としている部分はないかって、そういうことをすごく大事にしている方なので、台本の理解や解釈についてたくさん話しました。答えがないことがいっぱいあるんですよ。ミステリーでもあるので、実際のところどうだったんだろうということが劇中にあって、そこは僕ら役者が想像で補っていくしかないところなんですけど、そういう話もずっと天音くんとして、2人で考えたことを監督に持っていったり、監督に聞いたりとか、そういう時間が楽しかったです。モトキさんとのシーンは、剣持が人のことに首を突っ込むので、相当エネルギーがいるし、覚悟がいるんですよね。親友とか、家族だったらまた話は別だと思うんですけど、結局は他人で関わらなくても知ったことではないんだけど、剣持はそこに全力で踏み込んでいくので、全力でぶつかっていけるそのエネルギーを体現することを大切にしました。それができたのは、モトキさんのおかげで、モトキさんが役として苦しんでいる姿を見て、剣持の気持ちになれました。モトキさんとの共演も本当に楽しく、たくさん刺激をいただきました」
「僕も含めて、今の子供たちは、生まれたときからインターネットがあって、人と顔を合わせなくても繋がれますよね。大人も、今はコロナ禍という状況で、顔を見たことも会ったこともない人と仕事をしている人もいると思います。人と面と向かい合い、直接深いところで繋がっていく。そういうことがなかなか少なくなっている時代ですし、情報も調べればいくらでも出てくる。これって何だろうって気になったことは、すぐ調べられるじゃないですか。それで育ってきている子供たちがいっぱいいるから、わかった気になってしまうことはいっぱいあると思うんですよね。人とのやりとりもそうですし。でも、僕はそれが一番怖いことだと思っていて、答えがないとか、見えないことだからこそ、ちょっとの想像力で、人に優しくなれたり、自分が前を向けることはいっぱいあると思います。想像というのは、全人類に与えられた権利だし、誰にも邪魔できるものではないと思います。また、今自分が見えてるものは、果たしてこれが全てなんだろうかってもしかしたら、物事の一辺しか見えていないのかもしれません。決め付けるのではなく、いろんなことを想像して、事実がどうなのかわからないことがいっぱいあるので考えられるきっかけになる作品だと思います。大人はもちろん、子供たちや若い人たちにも見てもらいたいです。剣持はかなり刺激が強いと思いますが、今の時代、これぐらいの刺激があった方がいいんじゃないかなとも思います(笑)」
Writing:杉嶋未来
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4月29日(木・祝)より、映画館&auスマートパスプレミアムにて同時ロードショー
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