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来年1月より上演される『マーキュリー・ファー』で初舞台を踏む北村匠海。これまで意識的に避けてきた“板の上”へと彼を誘ったのは、自身の内から溢れて止まることのない「芝居へのさらなる希求」にほかならない。今まさに新たなフィールドへ踏み出そうとするその胸の内や、いかに──

最初で最後の挑戦でもいい。
今の自分を“ゼロ”にして、新しい“1”を探したい。

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―― 『マーキュリー・ファー』はイギリスの劇作家フィリップ・リドリーが2005年に書き下ろし、日本では2015年に白井晃の演出により初上演されたストレートプレイ。過酷な状況下で生きる兄弟の姿を中心に、暴力的且つ美しい強烈な個性に彩られたこの人間ドラマは観る者に激しい衝撃を与える“問題作”とも言われているのだが……奇しくも北村は本作を劇場で“体感”していた。

「混沌とした世知辛い世界で常にお互いの愛だけを頼りに生きているエリオットとダレン。その兄弟ふたりの感じは愛おしさもあったし痛々しさもあって。それがとても今のこの時代にもマッチしている部分があったなと思ったし、実はそういう世界って時代背景関係なく今も昔も僕は変わっていないんじゃないかと思っています。形を変えて、言葉を変えて、世の中は混沌とし続けている。そういった中でこの『マーキュリー・ファー』という作品が今ここに存在する意味って、すごくあるなと思いました」

―― 暴力と略奪がはびこる世界の片隅で兄弟が準備する怪しげなパーティ 、そして起きてしまう予期せぬ“事件”。この残酷なファンタジーは出会った観客を魅了するのはもちろん、表現者たちも虜にしてしまう魅力に満ちている。出演はある意味、必然だったのでは?

「いや、最初にお話をいただ時はすごく悩みました。というのも、僕はもともと舞台はやらないという感覚でいたので。それは音楽で“生なライブ”というものも経験している自分が、さらに“生な表現”をやることに…2つ抱える責任を持つということに、いまいち勇気が出なかった。でもこれはあの『マーキュリー・ファー』だ、どうしよう、と」

―― やはり即答で「NO」とは言えなかった。作品の魅力に引き止められていた?

「でもだからこそ生半可な気持ちで“ありがたくやらせていただきます”とは言えなかったので、まずは一度しっかり台本を読ませてほしいとお伝えしました。で、台本を読み、これはすごくいいタイミングだと思った。これまで自分は映像、映画に生きてきて経験を積み重ねてきたという自負がある一方で、自分の中でいろいろ“自分流”が生まれ過ぎているよな、一度そういうのをぶち壊さないといけないと、どこかでずっと思ってたんです。自分の中で自分が思ってきたお芝居というものを一回壊せるいいタイミングが、この『マーキュリー・ファー』という作品であり、ダレンという役なんだと直感でわかったので、そこで改めて“やらせてほしいです”とお返事をしました。お芝居を8歳ぐらいから始めて16年、未知 なことが沢山あると思うんです。ただ自分の中で16年培った信念だったり、理念だったり、自分が信じている芝居というものがあり過ぎるからこそ、新しいものというのを要求するというか、今の自分を“ゼロ”にして新しい“1”を探したい、みたいな感覚は逆にものすごくあります」

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―― 自身の信念や理屈を超える“作品の放つパワー”が、責任を持つ勇気へのジャンプを後押ししてくれた、というわけだ。

「行くならこれしかないって、僕はすごく思えた。だって、戯曲の内容もですし、演出が白井(晃)さんで、エリオット役が(吉沢)亮くん。僕にとってこんなにありがたい場所はないですよ」

―― 演出家・白井晃への信頼もすでに揺るぎないものに。

「身近な友人が何人も白井さんと舞台を一緒にやっていて、みんな口を揃えて言うんです。白井さんのこと、めちゃくちゃ好きだって。そして、めちゃくちゃしごかれてるよ、とも(笑)。もともと僕は舞台を観るのは好きだったし、白井さんの舞台も拝見していました。そういう時に彼らの言っていたことを思い出すこともあり、どこか自分の中で漠然と“もしやるなら、自分の初舞台は白井さんとぜひご一緒したい”と思っていたところもあったので」

―― そして、漠然とした予感は現実に。白井とは実際に会うことも叶った。

「白井さんには今日の朝、ビジュアル撮影でやっとお会いできました。ちょこちょこお話させていただいたんですけど、すごく物腰の柔らかな白井さんが、僕と亮くんがカメラ前にツーショットで立ったら、そこでディレクション開始。その瞬間、白井さん自身人が変わったように『マーキュリー・ファー』の世界に溶け込んでいく感じがあって、“誰よりも演じていらっしゃるんじゃないか”というのを感じました。ディレクションというよりはもう僕も亮くんも『マーキュリー・ファー』の世界の、ある種、罵声みたいなものをずっと浴びせられるっていう時間だったんですけど、2人で。それはそれはすごく楽しい体験だった。より一層稽古が楽しみになりました」

―― 稽古場での白井は愛のある厳しさでも知られているが…。

「はい。稽古はきっと楽なものではないし大変なことばっかりだと思うんですけど、純粋に芝居と向き合うというその時間は何にも代え難い。芝居の稽古は一定期間、定時のスケジュールで拘束される。そうやってひとつのものだけに集中することって、意外と役者として、いや役者だけじゃなく・・・なかなかないんじゃないかとも思います。だから今回この『マーキュリー・ファー』に携わる期間というのは、本当にお芝居というただひとつのことだけに集中できる時間。とっても楽しみ。ま、実際そこで自分がどうなってしまうかは、自分も全く分からないですけどね」

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―― ちなみに、観客として楽しんでいた時の舞台への思いとは?

「映画もドラマも“芝居”だけれど、舞台って、映像の芝居よりもよりいろんなものが削られて、その芝居の良さそのものが伝わりやすいというか、生で観るからこそ芝居を非常に間近に感じることができる。そこはちょっと映画館で観る映画と近いところもありますが、舞台はもう本当に目の前で芝居が繰り広げられていて、その世界に観ている人も吸い込まれていくあの感じや他の雑念が全く耳に入ってこない感覚が素晴らしいと思います。あれだけ芝居っていうものだけに集中できる空間にいると、すごく本質的なものを見せられているような気がして。その感覚が学生の時からとても好きで、観劇には今でも本当によく行ってるんですよ」

―― だからこそ、自分がその空間へと踏み出すこの一歩というのは、相当大きな覚悟を持った一歩となるわけで…

「自分の中では“最初で最後かな”というくらいの気持ちでのトライです。今まで、役者と音楽を両立する為にどちらも120%両立するんだ!って根詰めて突き進んでいる頃の自分は思い返せば機械のようだったところもあるかもしれない(笑)。そういう時期を越え、今は心の余裕もあって、よりクリエイティブな思考が回る中でこうやって生きてきてる。でもここでさらにそれすらも一回全部取っ払って、芝居だけに、舞台だけに集中するっていう期間を過ごすことを決めたのは、いろんなことを経て自分の中でちゃんとそれができるのは今だと思ったから。素直に挑戦したいと思えたから。で、これがさらに『マーキュリー・ファー』を経てまた“じゃあどうする”ってなった時に始めて決断できることがあるんだと思う。例えば“半年芝居だけに集中できるんだったら、ぜひ舞台をやりたいです”とか」

―― 自身の表現活動に誠実だからこそ、マルチには振る舞えない。その不器用さは北村の良心でもあり、クリエイターとしての矜恃でもあるのだ。

「自分の中でずっと意識してきたのが、どっちかのイメージが先行するのではなく両方ともしっかりバランスを取りながらやること。やるからには全部手を抜きたくないんだ、全部100でやるんだって。それはもう自分の性格ですね。両方いろんなことをやっている人=僕という存在として見てもらいたいと、ずっと思って生きてきました。それが今少しずつ認められてきているのかなと思えるから…この勝負、できるなって」

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―― 先ほどから名前が挙がっている“盟友”、吉沢亮がその勝負の場に居るのも意味深い。

「実際、亮くんが居たのもこの舞台をやるって決意した理由のひとつです。今までは『さくら』や『東京リベンジャーズ』など、亮くんに支えてもらってばっかりだったので、今回は亮くんが主人公の兄で、僕は弟役。舞台は初めてなので相変わらず支えてもらうこともいっぱいあるだろうけど、でも作品内の兄弟みたいに、弟として亮くんをしっかり支えられる機会が来たことをとても意気に感じています。これまでの恩返しも込めて、ぜひ一緒にこの舞台をやりたい。やっぱりお互いにとても信頼を置いているし、人としても、役者としても。そのリアルな関係値があるからこそ、僕らはここでエリオットとダレンを演じられるんだと思います」

―― 人生でただ一度の“初舞台”。本番までのゴングは鳴った。

「本当に内容はとても過激だし、約2時間の中でお客様はいろんな感情になると思いますが、僕は今、この時代も届けるべき内容だと確信している。難しいようで、実は兄弟2人に流れている問題ってすごい単純なことで、愛情だったり…今こそそうしたモノに気づく時代だとも思うので、そこは僕らが生で作ったものをちゃんと届けますので、みなさんもちゃんと生で受け取りに来てくれたら嬉しいなと思います。やるからにはね、やっぱりしっかりぶっ壊したいです。自分自身のなにかを」


Writing:横澤由香/Styling:Shinya Tokita/Hair&Make-up:佐鳥麻子

インフォメーション

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撮影:設楽光徳

STAGE

『マーキュリー・ファー Mercury Fur』


ボロボロの部屋にエリオット(吉沢亮)とダレン(北村匠海)の兄弟がやって来る。パーティの準備にかかるが、そこに1人の男が突然顔を出し、「バタフライ」が欲しいので手伝うと言う。しばらくするとローラと呼ばれる美しい人物と、パーティの首謀者らしき男と謎の婦人がやって来る。彼らはパーティのためにそれぞれの役割を、異常なほどの饒舌な会話を交わしながら行う。やがて、パーティゲストがやってきて、パーティプレゼントが用意されるのだが、パーティプレゼントの異変により、パーティーは思わぬ展開に…

★STARDUST WEBにてチケット先行予約実施!
https://fc.stardust.co.jp/
【東京・西宮・神戸・愛知公演】2021年10月27日(水)12:00~10月31日(日)18:00
【長野・福岡公演】2021年12月8日(水)12:00~12月12日(日)18:00
※会場により受付期間が異なりますので、ご注意ください。
※本受付は先着順ではございません。抽選による先行受付となります。
※お1人様1公演につき、2枚までお申込みいただけます。複数公演をご希望の場合は、各公演ごとに複数回に分けてお申込みください。
※お申込みには、STARDUST WEB有料会員登録が必要です。
※【新潟公演】につきましては、STARDUST WEBでのチケット先行予約のお取り扱いはございません。


▼公式サイト
https://setagaya-pt.jp/performances/202201mercuryfur.html


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【応募締め切り】2021/11/08(月)12:00まで
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