「日本のアニメーションは『君の名は。』以降、『AKIRA』や『攻殻機動隊』のようなサイバーパンクと言われるカッコいいアニメーションが盛んだった時代がリバイバルしてきている風潮があるんじゃないかと僕の中では感じていて。『HELLO WORLD』も、一見普通のラブストーリーとして始まるけれど、世界がひっくり返ったり、ぐるぐる世界が回ったりするSF映画でもあります。そこにカッコいい音楽が流れてくるので、大きなスクリーンと良いスピーカーのある映画館で観ると、非現実の世界に没入できる。アニメーションの良さを実感できる、実験的で新しい映画だと思いました」
「『HELLO WORLD』に描かれる“クロニクル京都”という世界観は、僕からすると、『AKIRA』の“ネオトーキョー”に対する絶妙なオマージュに感じました。東京とは違う古都の雰囲気に、温かみのある太陽の光が差し込む感じがすごくきれいで。直実とナオミがタッグを組むシーンで、徐々に夕陽が指していくところも美しかったし、明るい未来を感じました。自分が暮らす世界を直実が飛び出して、記憶の狭間にいるときの、鳥居をモチーフにした不思議な空間の映像もすごく好きです。“記憶装置アルタラ”“グッドデザイン”“無限の記憶装置”“この世界はデータだ”といったSF的な肉付けに、アニメやSFを見慣れていない人は頭がぐちゃぐちゃになるかもしれないですが、まずはいい音楽と、美しい映像と、直実(ナオミ)と瑠璃の一途なラブストーリーを追っていただけたらと思います。僕自身、SFを好きになったのは、一発で理解できなかったから。2回、3回と観ることで、作品の世界を貫く軸みたいなものがわかってくるとより面白くなると思います」
「初挑戦だった上、アフレコではなくプレスコという手法だったので、右も左も分かりませんでした。キャラクターデザインと台本をもとに、監督の演出を受けつつ、自分の想像だけで台詞を吹き込んでいったものに、絵や色や音をつけて命を吹き込んでいただきました。取材を受けるために完成度が30%や65%のものを観ていたので、監督さんやスタッフさんと一緒に経過を見守っている感覚を味わえて、今日、完成した作品を観て達成感がありましたし、本当に感動しました。『やっと世に出せるんだ』という嬉しさと、ストーリーへの感動とが相まって、最後にNulbarichさんの「Lost Game」が流れるところでうるっときました。自分の声に関しては、反省点がたくさんあります。でも、監督やプロデューサーさんが信じてくれたものを、僕も信じます。もしもまた声優をやらせてもらえることがあったら、この経験を生かして、全然違うアプローチができると思います」
「声だけで伝えられる情報ってたくさんあるんだなって。自分はそんなに台詞の言い回しが上手でもないし、滑舌が特別に良いわけでもなかったので、違うところで勝負しようと思っていたんです。目線とか、歩き方とか。でも今回、直実の声を作るために自分の普段の声と向き合ったことで、今一度、言葉の大切さを感じました。その後の実写の作品では、声のトーンみたいなものを、改めて考えるようになりました」
「僕だと思われたくなかったので、トーンを上げて、常に弱々しい感じを意識しました。松坂桃李さんが演じる10歳上のナオミがすごく強くてカッコいい人だったので、対比として、僕はダサくてボロボロでもいいのかなぁ、と。ナオミの10年間を回想するシーンがすごく切ないんです……。ナオミがこの10年をどんな想いで生きてきたのかを知ると、直実とナオミはかけ離れていたほうがいいなと思ったんです。でも実は、僕と桃李さんの声質はわりと似ていて、「そのままの声でいい」と言われていたんですけど、最終的には、初めての声優の仕事ですし、直実のキャラを考えた結果、声を変えました。弱々しくてかっこ悪い直実が、瑠璃のために立ち向かって、強くなっていく姿を表現したかった。そういう身近なヒーローのほうが、中学時代の僕のような男の子たちの背中を押せると思うんです」
「2人ともお久しぶりでした。桃李さんは相変わらず落ち着いた温かい雰囲気で、懐かしかったです。3年ぶりの美波ちゃんははつらつとしていて、そして快活になって驚きました。最近、作品に入るとどの現場に行っても、過去に仕事をした方が必ずいるんです。『重力ピエロ』の音声さんやメイクさんとは9年ぶりに再会しましたし、『FLY! BOYS,FLY!僕たち、CAはじめました』のプロデューサーさんは違うドラマの助監督さんとして以前ご一緒させて頂きました。そういう意味で、美波ちゃんとこうして一緒にお仕事をできるのは役者としてすごく嬉しいし、お互いの成長を感じられるのは面白い瞬間です。僕はたいてい『変わらないね』って言われます(笑)。でも、『子役の頃はめちゃくちゃうるさかった』とも言われます。14年前のことだからか、全然記憶にないんですけどね(笑)」
「直実がグッドデザインを使うために努力をするのは、瑠璃を救うため。僕はそんなふうに誰かを強く想う覚悟や純な愛情に惹かれました。自分に自信がなかった主人公が、一歩踏み出して、自分を信じるようになる姿を見て、信じる力の大きさや強さをすごく感じました。そういう意味で、この作品はSFラブストーリーでもありながら、人間の強さ弱さにも触れられる、勇気もらえる映画になったと思います」
Writing:須永貴子
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