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2014年5月2日更新

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現在放送中のNHK木曜時代劇『銀二貫』で、主人公の松吉(まつきち)を演じている林遣都。初の時代劇出演で得たものは──豊かな経験、生きる強さ。

松吉を通して“生きる上で大切にしなきゃいけないこと”を、僕もたくさん学んだ気がします。

── まずは本作への出演が決まったときの心境を教えてください。

「“NHKの時代劇に出られる。これは家族孝行になるぞ”って思いました。最初に原作を読んだんですが、それがあまりにもいい話で、主人公もとても魅力的だったので…もう、ガッツポーズでしたね。今、このときにこんな素敵な作品に出会えた喜びを凄く感じました」

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── 林が演じる主人公・松吉は、幼い頃に目の前で仇討ちにより父親を亡くし、すんでのところを偶然居合わせた寒天問屋の主人・和助(津川雅彦)に“銀二貫”で救われる。そして武士としての名も捨て、丁稚として商人への道を歩み始めます。“生きる厳しさ”をとことん突きつけられる人生を背負った青年ですね。

「まったく知らない世界にひとりで飛び込んでいって、そこで“生きろ”と言われるのはどれだけ辛いことだろうか…と常に感じていました。僕が演じたのは14歳?33歳まで。最初はやはり松吉の成長をしっかり見せていかなくちゃと強く意識していたんですが、撮影は朝3話を撮って夜からは7話とかバラバラなことも多く、スケジュールもかなりハードだったので正直“これは厳しいぞ”と。そんな中、ベテランのカツラ師の方とお話ししていたときに“男ってね、そんなに分かりやすく変わらないんだよ。大丈夫だよ、気持ち込めて演じてりゃ。お前はちゃんと気持ちが繋がってるから”って言って頂いて…その言葉に凄く説得力があって、なるほどなぁって。成長してく中でもいつまでたっても変わらない部分っていうのも確かにあるし、目に見えるモノを変に変えようとするのではなく、そういう“常に持っている意識”が結果的に成長としてうまく出ていれば、と思うようになりました」

── いつまでも変に不器用なのが松吉の魅力でもありますし。

「そうですね。とにかくクソ真面目ですぐ周りが見えなくなってしまう男。頼りない部分もあるし、傷を背負っている分ずっと暗かったりもするし…。ダメなところもいっぱい持った男ではあるんですけど、これは天性だなって思うのが、自分が大事にしたいと思った人を笑顔にする、幸せにするためならもう周りの目も自分の身すらどうでもよくなって、その人のためだけに生きることができるところ。松吉はそういう素質と才能を持った、ホントにカッコいい男なんです」

── その松吉が“大事にしたい人”が、料理屋の娘・真帆。

「僕がこの作品の中でも特に好きな部分が、松吉と真帆の恋愛模様。このふたりの恋愛って、終盤に差し掛かるまでふたりとも“これが恋愛感情だ”ということに気づいていなくて──そもそも恋愛というモノが身近にある環境に生きていない人たちのお話なので、ホントにお互いずーっと“なにか分からないけど凄く気になる人”で、この人には笑顔になってもらいたいって思いやり合いながら過ごしている。そして長い時間をかけてやがて松吉の中でその“想い”が溢れ出したときに、初めて“あ、これは恋なんだ。自分は彼女を女性として愛しているんだ”ということに気づくんです。素敵ですよね。劇中で松吉が真帆と一緒になると決めて初めて思いを伝えるというときの言葉も本当に素晴らしくて、ぜひ注目していただきたいのですが、時間と思いの積み重ねの末、ようやく口にした言葉の重み…!今はLINEとか簡単に他人と繋がれるツールがたくさんありますけど、便利な分、言葉の重みが薄れていっている気がするんですよね。そうじゃなく、簡単じゃなく、心の底からの思いをここぞというときに全身全霊で伝える。ホントに“恋愛はそうでなきゃ”!」

── 時代劇ならではの繊細な描写のひとつですね。

「実は今回、時代劇好きの祖父が撮影所に母と見学に来てくれたんです。ところが大勢のエキストラに役者にスタッフに…という現場を見てガチガチになってしまって、着いて早々“こんなところ無理! 帰りたい”と(笑)。それでもせっかくだからってスタッフの方に案内してもらううち、祖父が一気に魅了されていくのが分かったんです。“津川雅彦は貫禄が違うなぁ”なんて(笑)、撮影の様子にすっかり目を奪われていて。そのときに“ああ、役者って、ドラマや映画の撮影って、人を一瞬で魅了してしまう仕事なんじゃないかな”って感じて。特に時代劇は幅広い世代の人に発信していける力があるなぁと。今回は自分自身初めての時代劇ということで、できないことも知らないこともたくさんありましたし、そこは潔くすべてさらけ出してゼロから教えてもらう姿勢で臨みました。でも今はこれからもぜひ時代劇をやりたいという思いも強いですし、いつでも対応できるよう、所作だったりいろいろと自分自身の準備も怠りなくしておきたいと考えてます」

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── 作品全体としては命の恩人である和助を中心とした井川屋のアットホームな雰囲気も温かですし、個性的なキャラクターが揃う人情味溢れる手触りです。

「生きる目的や意味を見失っていた松吉が、運命的な出会いを重ね、その出会った人たちと触れ合い支え合ううちにどんどん人も変わって気持ちも変わっていく。松吉を通して生きる上で大切にしなきゃいけないことを、僕もたくさん学んだ気がします。井川屋の面々は血は繋がっていなくても家族のような関係を築いてますし、作品全体のトーンは親しみやすいですが、決して軽いだけじゃなく、台詞のひとつひとつに凄く重みがあって、深みがあって、人生の厳しさもしっかりと刻み込まれている。商人の生き方というのも凄いんですよね。身を削って始末して、才能を発揮して、神様を信じてひたむきにひたむきに過ごしていればいつかちゃんと報われる。店のため、人のため、お客さんのために自分を犠牲にして生きるというか…その、ただただ誰かのためを思って生きる姿勢はいいなぁと思いました」

── 厳しくもやさしい大人たちに見守られ成長していく松吉の姿を通し、“生きる”ことの尊さが伝わってきます。若い世代にもぜひ観てもらいたい時代劇ですね。

「そう思います。歴史の勉強とかも必要ない、親しみのある世界が描かれているので。でも、僕、第一回のオンエア前日に“明日か?”って、久々にドキドキしてたんですよ(笑)。撮影中あまりに入り込んだというか、京都に住み込み、自分なりに一生懸命取り組んだ3ヶ月間だったので…ひとつひとつを全然覚えていなくて! 終わってからもしばらくボーッと過ごしてましたし。振り返る間もなくというか、ホントに“実感がない”ってこのことか、という感じでしたね。もちろん僕がやり切ったからといって、絶対的に自信を持っているというわけじゃないんですが…まずなによりも髙田郁さんの原作がすばらしくいいお話で、感動があります。物語に登場する名もなき人々の一途な思いやひたむきに生きる姿は、絶対に人の心を動かす力になると思います。大事なメッセージがいっぱい詰まったドラマになっているので──観て欲しいな。その一言に尽きますね」

Writing:横澤由香

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INFORMATION

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木曜時代劇『銀ニ貫』

毎週木曜20:00~NHK総合にて放送中!

舞台は商人の町・大坂天満。主人公の松吉は仇討ちで父を亡くし、自分もあわや討たれるかというところを、偶然居合わせた寒天問屋・井川屋の主人・和助に銀二貫で救われる。生きるため井川屋の丁稚となった松吉だが、武士を捨て、商人の道を歩むことに心が揺れていた…。しかし、商人としての厳しい修行と躾や、数々の事件を乗り越え、松吉は商人の道をゆっくり歩みながら成長していく。得意先の料理屋の娘・真帆との淡い恋も絡め、関西風情たっぷりの空気感の中で、涙あり笑いあり恋愛ありの人情時代劇を描く!


▼公式サイト
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/gin2kan/

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(C)NHK

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