「岸田(一晃)プロデューサーが口頭でこういう物語があるんですってあらすじを話してくれて、そのときに面白そうだと思って、数日経っても頭の中から消えなかったので、読んでみたいですとお願いをしました。当時まだ発売されていなかったので、発売を待って、発売された日に買って読みました。映像化する上でこうしたいなっていうのがすぐに浮かんで、プロデューサーにアイデアをお送りしました。口頭で聞いていたときから、この物語に惹かれていましたね」
「この作品は発光病というかなり奇抜な設定で、人が光るというのをどういう意味合いで捉えて映画にすべきなんだろうと自問自答しながら脚本作りをしました。原作に“死が近づくにつれて輝きが強くなる”という設定があったのですが、これが命の輝きにも見えるようにしたいと考えました。そこで発光病を生と死の両方の象徴として描こうと方針を定め、死が近づくことと、まみずが生きる喜びを全身で感じている場面に絞って描くことにしました。2017年の秋には脚本を書いていて、そのあと僕は2本映画を撮っていて、撮影を終えてから改めて読み返して、書き換えたものを原作者の佐野さんにも見ていただき、完成に至りました。自分で脚本を書きながらも、間をあけて読むとすっかりお客さんと同じ状態で読めて見えてくるものがあるので、別の作品を挟んで戻ってくるのがいい方向に向いたなと思っています」
「役者がそのキャラクターをどう捉えたのかを聞きたいと思っています。僕が思うように、いいなりになって動いてくださいとなると、自分が想像したものしか作れないんですよね。共同作業なので、自分の想像を超えてほしいと思っていて、役者さんがどう考えているのかを大切にしています。ある程度、自分はこうだと思うものは持っていきつつ、基本的にはどう考えているのかということを聞きます。このシーンのまみずはどうなりそう?とか。それを話しながらやってみて、やってみたらこうでしたとか、僕からはこう見えたけど、どう思う? とディスカッションしながら作っていきます。今回は特に固めすぎず、新鮮なお芝居を撮りたいと思ったので、テストをやらずにいくことを最初に伝えて、ファンタジーだけど生っぽい自然な息遣い、今まさにその出来事が目の前で起こっているようにお芝居をすくい取っていきたいと思いました」
「芽郁ちゃんは技術が確実にあるんですけど、最終的に感覚でぽんと投げてくれるので、決まった芝居を見ているなという感じではなく、今まさにこの人が生きていると思わせてくれる新鮮さがあります。一発目が一番いいんですよね。こうなるとどうかなってリクエストするよりも、最初に彼女から出てきたものがすごくいいので、テストもテイクも重ねずにやれたのが良かったなと思っています。実際、どちらもできる方で、朝ドラではきっちりリハーサルを重ねるスタイルだったと伺ったので、今回はお芝居が新鮮なうちに撮る方針にしました。相手のお芝居を受けて反応も変わるし、素晴らしい掛け合いになったと思います。
匠海くんは全幅の信頼を置いている役者さんです。彼ならどんな芝居でも受けてくれるだろうという信頼感があります。今回、芽郁ちゃんがどんなに自由に動いても、匠海くんならすべて受け止めてくれるだろうって思いました。不確定要素のある演出でも、彼がいてくれたからやれました。彼ありきで撮影の方針が決まっていきました。カメラマンも『君の膵臓をたべたい』のときと一緒で、匠海くんの動きは掴めています。さあ、芽郁ちゃんは何をしてくれるんだろうって待ち構える感じでした。毎回、一緒に作ってくれるのが匠海くんのいいところというか、スタッフともすごくコミュニケーションをとるし、経験を積んできているはずなのに、中学生のときに会ったときのままのイノセントな空気をまとって成長してくれています。撮っていて楽しいですね」
「天候に恵まれたんですよね。雨降っているから無理かもしれないと思っていたら、雨が止んで夕日が出るとか、そういうことが結構ありました。そういうとき、匠海くんはカメラマンと一緒に喜んでくれるんですよね。そういうのを含めて、共同作業をしているって感覚になります。今回は一緒にどう作ろうかってワクワクしてきます」
「冷静に見ないといけないと思いながら、見ていたら泣いてしまいました。モニターを見ていて、パッと顔を上げたらスタッフもみんな泣いていて、内容をよくわかっている人たちが見ているのに号泣という。今まさに2人が目の前で掛け合いをしているのを目撃した感覚に現場がなっていました」
「僕は娘がいるので、及川光博さん演じるまみずの父親のシーンはぐっときました。原作になかったんですけど、お父さんだってまみずに会いたいはずだよねと思って作りました。まみずと卓也は屋上でプロポーズごっこをやるから、卓也とまみずの父親は結婚の挨拶ごっこもやるかなと思って。それがなんとなく親子らしいかなと思って、ワンシーン書いて作りました」
「難病の女の子が出てくる話というと、悲しくて泣けると思われるかもしれませんが、あくまでも生きる、生きていくということについての映画にしたいと思いました。限りある時間で濃密な時間を生きた人の話です。代行するというのがこの作品の新しさだと思います。やがて、一人になってしまうかもしれないけど、2人で生きられる話だなっていうところにもこの作品の新しさがあるので、そこを楽しみに観ていただけたら嬉しいです。決して悲しい映画ではないです」
「お芝居を撮るということに関しては、CGとかアニメとか、完璧を追求したらどこまでもいけるので、細かい精度を上げるよりも実写の場合は、その瞬間にしか撮れない芝居を狙いたいというモードになってきた中、『君は月夜に光り輝く』を撮ることができました。がっちり固めるのもいいなと思いつつ、この作品を撮る上では、何回もこの時間を生きられるわけじゃないというものにシフトしていきました。この数年、いろんなジャンルをやらせていただいて本当にありがたいです。新しいジャンルもやっていきたいという気持ちがあります。アクションをやりたいですね。自主映画を撮り始めたときは、本当にアクションをやりたくて、拳銃で撃ち合っているようなものから撮り始めていました。今は青春映画やラブストーリーが多いのですが、アクションをやりたいという気持ちは未だに捨てずにいます(笑)」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
3月15日(金)公開
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