2014年9月3日更新
映画の企画・制作は名護市民で結成された「名護まち活性計画有限責任事業組合」。いわゆるご当地映画とは異なり、映画の権利を地元が持ち観光誘致を図るもの。全国初のプロジェクトとして注目を集めている『がじまる食堂の恋』。大人になり、なかなか自分の気持ちに素直になれない4人の恋愛模様を、名護のゆったりした空気がやさしく包み込んでくれる。
ゆったりとした温かい雰囲気の名護。
帰りたいな、と思える第二の故郷になりました。
── 那覇から車で2時間ほどのところにある名護市。蒼い海と緑豊かな街を舞台にした『かじまる食堂の恋』。樹齢300年ともいわれるガジュマルの木「ひんぷんガジュマル」が印象的だ。
「ガジュマルの木で撮影初日を迎えました。妖精が住む木といわれているだけあって、独特な雰囲気がありましたね。初めて見たときは撮影用のセットかと思うほどで(笑)。でも、触ってみると不思議なエネルギーを感じて、見るたびに好きになっていったんです。ここから物語がはじまり、ストーリーの要となるシンボル的存在の木。見守られている気分になりました」
── ガジュマルの木だけではなく、名護市長をはじめ、地元キャストが映画を盛り上げた。
「この映画は本当に名護市の方たちが作り上げたもの。地元の人たちの笑顔も魅力のひとつです。初めて名護市を訪れたのですが、大好きな街になりました。海はきれいだし、山もあって自然が豊か。食事もおいしくて、毎晩、スタッフさんたちと『おいしいねー』と楽しい食事ができました。撮影スケジュールはタイトで大変な面もありましたが、名護のゆったりとした時間の流れのおかげで疲れも感じずに過ごせたのかなと思っています。ストーリーを楽しんでもらうのはもちろんですが、映画を観終ったあとに『名護に行ってみたいな』と思ってくれたらこの映画は成功なんじゃないかな。僕自身、完成した作品を観ながら『ああ、名護に帰りたいな』と思ったほどですから」
── 名護の魅力にとりつかれ「第二の故郷ができたみたい」と語る小柳。撮影の合間も名護を楽しんだようだ。
「オリオンビールの工場があって、共演者のみんなと工場見学に行きました。ビールができる行程を見ることなんてないので、楽しかったです。そしてそれ以上に、見学後のビールがおいしかった!! できたてのビールですからね。2~3時間はいたんじゃないかな(笑)。食事は本当にどれもおいしくて、一番のおすすめはグルクンが中に入ったもずくの天ぷら。外はさくさく、中はとろ~りの食感でやみつきになりました! 思い出しただけでよだれが出てきそうです(笑)。名護にいたのは3週間ほどでしたが、本当に充実した時間で、もっと長くいたような気がします。一緒に食事をする機会が多くて、いつも以上にスタッフさんたちとコミュニケーションが取れたのも大きいかもしれませんね。おいしい食事を前にすると話もはずみますから」
── 環境も雰囲気も恵まれたなか、芝居も充実したものとなったという。
「最近は少し変わった役が多かったので、久々に恋愛ものを演じるのが楽しくもあり難しくもありました。しかも“大人”な役ですし。隼人は冷静に物事を見ることができる大人の男なんだけど、そこが女性からしたらさみしい部分でもあるのかな。男女4人の複雑な関係を会話で見せていくものだったので、隼人という人物を固めずに、相手との対話のなかで作り上げていけたらなと思って臨みました。
莉子役の竹富さんは初対面でしたが、波瑠ちゃんと、(桜田)通くんは10代の頃に会ったことがあったので、お互いに成長を感じられたのが嬉しかったです。それぞれが大人になって、大人の恋愛ものを演じているっていいですよね。僕も役者として経験を積んできたこのタイミングで新たな挑戦ができたのがよかったなって思います
」
── 不思議な四角関係が続くなか、海を訪れる4人。翔太(桜田通)と海辺を歩くシーンが印象に残っているという。
「自分のなかで、隼人の大人な部分をしっかり見せられるのはココかなと考えていたので大切に演じました。いいシーンになったと思うので、ぜひチェックしてください。自分のなかでも新たな一面が出せたなと思っています」
── 突然の出会いや思いもよらない再会。4人それぞれが小さな嘘を重ねながら、本当に大切なものは何かを探していく。
「人の気持ちってひとつじゃなくて何重にもなっているから、そこをうまく表現できたらなと思っていました。上っ面だけじゃない、その根底にあるものとかね。大人だからこそ素直になれない部分もあるし、何かしら抱えているものもある。そんな4人が集まったことで思わぬ方向へと転がっていくんでしょうね。演じながらも隼人が成長していくのがわかったし、作品を観たときにもそれをしっかり感じ取れたのがよかったですね。映画の主題である『本当にそばにいたい人は誰ですか?』ということを観終ったあとに考えてもらえたらいいかな」
── では、小柳友にとって大切なものとは?
「大切な人でいえば、やはり家族ですよね。宝物として考えれば、最近は名護で拾ってきた貝殻を加工して作ったネックレスかな。ヤスリをかけるのが楽しくて! 日本料理屋の知人にこのネックレスを見せたら、色々と貝殻をくれたので新たな作品も作りました。サザエの貝殻は中をくりぬいて小さな鉢植えやおちょこにしたんです。それをプレゼントしたら喜んでくれて嬉しかったですね。昔からモノづくりが好きで、作品がたまってきているのでいつか個展が開けたらいいなと考えているところです」
── 最後に役者として大切にしていることを聞いた。
「自分自身が一番のお客さんであることでしょうか。台本を読む段階からお客さん目線でを忘れずに、いかに楽しんでもらえるか、面白いと思わせるかということを考えています」
── 1~2月にかけての名護での撮影。日を追うごとに日焼けをして精悍な顔つきになっていく小柳。心の中に抱えた思いをはき出せずにいる隼人が名護での出会いを通じて、成長していく過程とリンクし、日焼けした肌が隼人のたくましさを演出しているようだった。名護の美しい風景と温かい空気のなか、新しい一歩を踏み出そうとしている4人の男女を見届けてほしい。
Writing:岩淵美樹
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『がじまる食堂の恋』
9月13日(土)沖縄・名護先行公開
9月20日(土)全国ロードショー
沖縄県名護市の一角にある小さな食堂を舞台に4人の男女が織りなす恋物語。おばあから引き継いだ「がじまる食堂」のオーナー・みずほ(波瑠)のもとに、見知らぬ旅行者・隼人(小柳友)が転がりこんでくる。時同じくしてみずほの元彼・翔太(桜田通)が5年ぶりに現れる。さらに東京から来たという美女・莉子(竹富聖花)が食堂を訪れ複雑な四角関係へと発展。名護の自然やゆったりとした空気も堪能できる心温まる映画です。
(C)2014名護まち活性計画有限責任事業組合
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