「最初に『恋妻家』という言葉を目にしたときに、なんて読むんだろう?って不思議に思ったのを覚えています。こいさいけ? こいづまか?とかいろんな読み方が頭の中をめぐりました(笑)。脚本を読んでみると、そこに描かれていたのは、子供が巣立った後の夫婦の話。世の中には若い人たちの恋愛作品はたくさんあるし、触れ合う機会が多いからすごく新しさを感じました。でも夫婦にだって若いときがあって、恋人同士の時代がある。結婚してしまうと、男女というよりはお父さんとお母さんになってしまう。この作品では、お父さんとお母さんになった二人が、また恋人だったときのように戻っていく姿がほっこりと描かれているんです。単純にひとりの観客として、あたたかな気持ちになりましたね。ふと、私がこの先結婚したら「お父さん、お母さん」と呼び合うようになるのかなぁなんて想像したり……」
「美代子の性格はパキっとしていて、反対に旦那さんになる陽平はすごく優柔不断で、ぽやんぽやんしている。子供を授かったと意を決して伝えるんですが、まさか陽平が『結婚しよう』と言ってくれるなんて想像もしてなかった。“産まない”という覚悟を心に据えた上での告白だったと思うけど、その心の奥にはもちろん『産みたい、結婚したい』という気持ちがあったと思うんです。でも美代子はすごく現実的な女性だから、今の状況で自分たちができることを考えたときに、産むという選択は難しいことだってきちんと理解しているんですよね。そういう心の強さとか理性の部分をお芝居で伝えられたらと思って演じました」
「陽平は、子供が大きくなってからも、あのとき僕はあの決断をしてなかったらどうなってたんだろうって考えてるじゃないですか。それはありえない!と女性としては思いました。子供は産まれたら、どんどん育っていく。結婚生活が現在進行形の中で、過去のことを考えないでほしいなって。もしかすると男性はいつまでたっても夢見る部分があるのかもしれないですね。私の友達の中にもお母さんになってる人、お父さんになってる人がいるんですね。女友達はちゃんとママをしているけど、男友達はまだまだ遊びたい気持ちが残ってる人が多いように思います。もちろん家族のために一生懸命働いているし、頑張っているのはわかるんだけど、どこか“お父さんになりきれない”っていうのかな(笑)。私が今21歳で、演じた美代子とちょうど同じくらいなんですが、もしその立場になったら……と考えさせられる作品でもありました。仕事をやめて家庭に入って、子育てができるんだろうか?って」
「あと少しで22歳になるんですが、いろんなインタビューでもずーっと『22歳で結婚する』と公言してきたんです。けれど、さすがにもう無理だろうなと悟っています。時間がないこともあるけれど、何よりもまず仕事が楽しいし、冷静に考えても今の状況で結婚生活と仕事を両立するのはさすがに難しい。願望を言っているだけじゃ生きてはいけないなと、自分でも大人になってきたなって思うんですよね。発言にしろ、考え方にしろ、もう子供じゃないし、わがままも言っていられないなって思えるようになってきました。ようやく(笑)。ただ一応、自分なりにプランはあったんです。同じ干支の子供がいると運気がいいと耳にしたことがあって、24歳で子供を産みたかった。逆算していくと、妊娠期間1年、新婚生活1年があるといいなと思っていたから、じゃあ22歳で結婚だ!となったわけです。子供が大人になったときに自分自身もまだまだ若くて、友達のような親子関係を築けるのかなと思うと憧れてます。なので、できるだけ早めにとは思ってます。あくまで願望ですが」
「こう見えて、リードはされたい派なんです。自分で色々と決めたりしそうって思われがちなんですが、自分が自由でいたいから、男性にはちゃんと計画を立てたり、考えてくれるタイプの人がいいかなって。実はめんどくさがりですし、自分で計画を全然立てないんです。友達との旅行にしても、スケジュールからチケットの手配などテキパキ進めてくれるコのプランに乗っかるほう。めんどくさがりな分、フットワークだけは軽い! よく美代子っぽく見られがちだけど、ここまではしっかりしてなくて。もし、そういう印象を持っていただけているなら、しっかりしてる風に見せるのが上手なだけかもしれないですね(笑)。あとは顔立ちがキリっとしてるせいかなと思います。そのせいで、クールな印象を持たれがちなんですが、ここ最近はそれがいいギャップとして捉えてもらえるようになりました。今回もですが、撮影現場に入ると、みなさんに『よくしゃべるね』『よく笑うね』と言ってもらえるんです。いい印象につながってるようなので、ある意味ラッキーだなって思います」
「遊川監督は、わかりやすく物事を伝えてくださる人。天海さんと遊川さんは長いお付き合いということもあり、天海さんの仕草だったり、『天海祐希はこうやってやるんだよ』と実際にご自身で演技をしてくれたり。それが面白くて『わかりましたー!』と笑いながらやっていました。楽しくほがらかな現場で、それが最後のシーンにも反映されていると思います。映画のシーンとは思えない展開なんですが、阿部さんが何かをしたらマネをしたり、決め打ちではなくてアドリブで自然に撮影されています。この作品はすごく大きな波があるわけじゃないけれど、夫婦や恋人の“あるある”が詰まっていて、誰の心にも鋭く刺さってくる。クライマックスに向けてどんどん心が暖かくなるので、色んな方に観てもらいたいですね。ポッと心があたたかくなるので、誰か大切な人と一緒に!」
「色んな経験をさせていただきましたが、あまり覚えてないこともあって。上手に忘れることができているから、忙しさでキィーってなることもない。でも一番は、考え方が変わったこと。自分でなんでもやらなきゃって思ってる時期が昔はあって。色んな方と出会って、もっと頼ってもいいんだ、甘えてもいいんだと思えるようになってから、仕事もプライベートもラクになれて楽しめるようになりました。よく思うんですが、俳優をしている人ってドMだと思うんです(笑)。仕事柄、大変な状況に追い込まれることもあるけれど、作品が出来上がっちゃうとそのツラさを忘れてしまう。それに、ツラい日々のことよりも、『この仕事楽しいな』って思える瞬間が上回るから、結果オーライで乗り越えられるのかも。みんな、きっとそうなんだろうなって」
「家でゆっくり過ごせるときは、録画したドラマをひたすら観ています。仕事でお芝居をさせてもらってるけれど、昔っからテレビっ子でドラマが大好きなんです。演じるのはドラマも映画も好きなんですけど、自分が観るとしたらドラマが好き。そのときは完全にいち視聴者であって、勉強として観ていないかも(笑)。完全に私の中では娯楽なので。恋愛ドラマを観ながら『結婚しちゃえばいいのにー』とかキャピキャピしています」
Writing:長嶺葉月
MOVIE
2017年1月28日(土)公開
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