「岡崎京子さんの「ジオラマボーイ・パノラマガール」を映画化しませんかとお話をいただいて、岡崎さんの漫画は好きだったので嬉しかったです。その一方で、この話を今の時代として描くのはどうしたらいいんだろうとかなり悩みましたね。高校生の片想いがありつつ、主人公に憑依するおばあちゃんの話や、ませすぎた小学生の話とか、細かいエピソードがいろいろと入っていて、映画化する上でどの部分を切り取るのかが難しかったです。プロデューサーからこういう方向性でいきましょうと提示があるのかなと思ったら、一緒に考えていきましょうと言われまして(笑)。それからどうしていくのかを、長い時間かけて試行錯誤して、結果、ハルコとケンイチの2人の話となっていきました」
「ハルコとケンイチの2人の話だけど、実は2人が一緒のシーンはあまりないんです。そこと二つのストーリーを当時にどう見せていくのか、また、みんなの思いが一方通行という面も意識しました。そして、高校生の空気感も大事に。現代の高校生の空気感と原作の空気感が混ざっているものを目指して、ロケハンで出会った高校生に話を聞いたりして、私なりにリサーチしました。それが実際にどんな空気感としてみなさんに伝わるか自分ではわかりませんが、何か伝わるものが出ていたらいいなと思っています」
「山田さんとは「セトウツミ」というドラマで1日だけご一緒して、もう一度一緒にやりたいなと思った女優さんでした。別の形で別の役で、また見てみたいと思ったんです。シーンごとに表情が変わって、いろんな表情を見せてくれる女優さんです。撮影ではいろいろ考えながらやってくださって、クレバーな方でした。心身ともに本当にタフで、何回も笑顔でやってみましょうって言ってくださったんです。走るシーンもたくさんあったので、助けられました。鈴木くんは、本人自身、ガツガツもしていないけど、やる気がないわけでもない、今どきのつかみどころのない雰囲気がそのままケンイチでした。原作を読むと、ケンイチは衝動的に動く男の子で、嫌なやつに見えてしまうかもしれないんですけど、鈴木くんがやるとチャーミングで憎めないケンイチになりました。男のかわいさとかずるさを、うまく表現してくださいました。脇を固めるキャストでは、滝澤エリカさん、平田空さんも印象的でした。2人は芝居が初めてとは思えない存在感を堂々と楽しんで発揮してくれました。そして、ケンイチを翻弄するマユミ役の森田望智さんも小悪魔的というか、柔軟な存在感で魅せてくれます」
「日本は原作の30年前も再開発していましたが、去年もオリンピックを目指して再開発をしていて、どんどん景色が変わっていたんです。撮影は昨年の10月だったんですけど、これはもう今しか撮れないと思いました。毎日景色が変わってしまう勢いだったので、この作品は変わりゆく東京の街の記録とも言えると思います。そこを狙って渋谷や湾岸エリアをロケ地にしました。岡崎さんの漫画にもある余白を、湾岸の人工的な風景が表現してくれました」
「ボーイ・ミーツ・ガールの物語で、好きという気持ちが、いろんなところで右往左往します。不器用な恋の行方を追いながら、好きな人に好きっていう気持ちが伝わったとき、どうなるのか。そういうことを発見した若い人たち、そして大人になっても昇華できない人たちのお話だと思います。大人がキュンとして、微笑ましい気持ちで、自分が若いときはこうだったなって思いながら見ていただけたらと思います。もちろん高校生など若い世代の人たちも、ドキドキできる作品になったんじゃないかなって思います。今回、岡崎さんの作品に挑んでみて思ったのは、セリフや言葉が古びていないこと。自分では生み出せない言葉がたくさんあって、それを映画の中で生かせたのかなと思います」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
11月6日(金)公開
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