2013年11月22日更新
直木賞受賞作家・角田光代による短編小説集「かなたの子」が、主演・坂井真紀、監督・大森立嗣でドラマ化され、12/1よりWOWOWプライムでオンエアされる。原作について「とにかく重かった」と声を揃える二人に、撮影時のエピソードや、作品を通して届けたいテーマなどについて聞く。
人と人とのつながりや、生きることについて深く考えさせられるような作品だと思います。
── それぞれに闇を抱え、一泊二日の富士登山ツアーに参加した人々。その中心に描かれるのは、坂井真紀が演じるシングルマザーの日都子。一人娘のなつきを失い、罪の意識を抱えているという難役にどう向き合ったのか。
坂井真紀「台本に書かれていることと書かれていないことをたくさん想像して、日都子が自分の娘を殺してしまう理由を紐解きたかったのですが、監督との打ち合わせの中で「きっと確かな理由なんてなくて、もっと衝動的なものなのでは」という言葉を頂いたときに、ハッと目を覚まされた感じがありました。」
大森立嗣「日都子は自分の娘を殺してしまったんです。人間が絶対にやっちゃいけないことを、日都子はやってしまう。脚本でそこをちゃんと描かないといけないんだけれども、俳優が「絶対にやっちゃいけないと理屈ではわかっているのにやってしまう」芝居をするときに、理屈の積み重ねだと収まらない。僕がいくら言葉で説明しても、その行為から言葉はこぼれてしまう。それよりも、立ち姿ひとつ、表情ひとつで表現してほしかった。だから言葉であまり説明せず、打ち合わせも一回だけ。あと俺にできることは、真紀ちゃんをちゃんと信用することしかないと思ってました。」
── その後、衣装合わせをしてクランクイン。初日から、重たいシーンの連続だったという。
坂井「初日はやはり緊張しました。なるべくニュートラルな気持ちでカメラの前に立ちたいと思っていました。重たいものを背負っている状況だからこそ、あえて私自身何も背負わず現場に立つことが、日都子の生活のリアリティにつながっていくのではないかと思っていました。」
大森「きついシーンだらけなので、精神的に大丈夫かどうか、正直ちょっと心配でした。演技がというよりも、その後、ひきずらないかどうか。真紀ちゃんはそういうところを見せないようにしてくれたので、僕としては助かりました。」
坂井「そう心がけました。役を忘れたり、役から離れたりしても、スイッチが入らざるを得ない状況だったので、距離感をとるようにしていました。」
大森「真紀ちゃんは現場での瞬発力がすごい。日常ではない状態に自分を置きつつ、少し戻すというやり方なのかな。すぐにパーン!とくるので、すごい力だなと思いました。いやあ、すごいっすねえ(笑)。」
坂井「(笑)」
── 富士登山ツアーのシーンは、撮影クルーは5合目まで車で行き、そこを基点に撮影を重ねていった。雨はもちろん、ときには台風の影響も受け、撮影が中止になることもあったという。
坂井「簡単な山ではなかったです。天候も含めて、やはり登山しながらの撮影は大変でしたよね。」
大森「うん。撮影中止になった日が2回くらいあるんだけど、一度、途中で雨がバーッと降ってきたときは吹き飛ばされそうになったよね。」
坂井「はい。一瞬「あ、死ぬ」って思いました。放送中止になるかもしれないと思うくらいの自然の厳しさでした。」
大森「ラストシーンの方の撮影で7合目に宿泊して、ご来光に合わせて頂上アタックをするときに、台風がきちゃったんですよ。それで一度中止になったりして。」
坂井「永瀬(正敏)さんが山にいるときはずっと天気が悪かった(笑)。でも永瀬さんの撮影が終わったあとは大丈夫で。台風も、永瀬さんと一緒にいなくなりましたよね。」
大森「だったねえ(笑)。大変だったけど、富士山良かったよね。」
坂井「はい。一生に一度は登るべきだと思います。雲の形が瞬時に変わるし、明るさも変わる。「景色が変わらない」と言うようなことを聞いていたのですが、私は飽きることなく登りました。」
大森「標高が高いから、空がダイナミックなんです。頂上は雲の上なんで。そこの景色はもの凄かった。ちゃんと映像に撮ってます。」
── 二人の出逢いは10年前にさかのぼる。「謎のFLYING SAUCER2 FAKE OR LOVE?」(99)という作品の撮影で、一緒にアメリカへ行った。
大森「当時、僕は助監督でした。4~5人の小さな組で、真紀ちゃんは宇宙服を着てました(笑)。」
坂井「アメリカのロズウェルまで行きましたね(笑)。たしか私、一泊で帰ったんですよ。」
大森「ご飯を食べる暇もないくらい慌ただしい撮影だったよね。」
坂井「その後は共通の友人と飲んだりする席に居合わせたりする関係。」
大森「真紀ちゃんは僕が好きな映画に出ていたりしてたので、全然別の場所にいる人ではなかった。今回、真紀ちゃんが演じてくれて良かったと思える役と作品でようやく一緒にできた。いくら自分たちがやりたいと思ってもこういうのって巡り合わせだから、ツイてました。」
坂井「私も監督の作品がすごく好きで、一緒にできたらいいなと思っていたので、この作品で大森監督とやれて、待った甲斐があったなって。すごく嬉しかったです。」
── 初めて受けた大森監督の演出について坂井はこう語る。
坂井「お芝居がすごく好きなんだなって伝わります。役者のお芝居をちゃんと見てくれるから、安心してお芝居ができました。カメラの横で、役者と一緒に台詞を言いながら芝居を見てくれるんです(笑)。」
大森「役者の目線に入るのが好きなんですよ(笑)。」
坂井「監督は、モニターで芝居を見る人と、カメラの横で見る人に分かれる。大森監督はイメージ通り、後者でした。物語の捉え方、深さみたいなものを感じます。」
大森「モニターって芝居が見えにくいし。役者って、役に入り込みながらも、どこかで自分が見られている意識が必要だと思うんですよ。芝居って見せ物だから。俺が近くで見ていることで、そこを保ちたいというのがある。でもまあ、一番の理由はただ近くで見たいからなんですけどね。」
── 作品のテーマ、メッセージとは?
大森「世の中の道理やモラルに照らし合わせると、この話はアウトな人たちが主人公です。だけどそれでも生きていかなきゃいけない、さあどうする? という問いかけを真正面から描いているから見応えはあると思います。普通に日常を送っている人も、ひとつボタンを掛け違えたらアウトな状況で生き続けなきゃいけなくなるかもしれない。自分には関係ないと思わずにこういうフィクションを観て想像して考えることが、他者に対する優しさになったりしますからね。」
坂井「監督が仰るように、遠いところにある話じゃないなって思います。普段、うもれてしまいがちな届かない叫び声を届けられたらいいなと思っています。人と人とのつながりや、生きることについて深く考えさせられるような作品だと思います。」
大森「本当に面白いので、ぜひ見てください。撮影が大変だった甲斐があるくらいいい作品になっている思います(笑)。」
Writing:須永貴子
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連続ドラマW『かなたの子』
12月1日より毎週日曜22:00~WOWOWプライムにて放送
※全4話・第1話無料放送
過去に闇を抱えた人は、どうしたら前を向いて生きていけるのか? この真摯なテーマを描いた角田光代の同名短編小説集を映像化。娘を殺めてしまった日都子(坂井真紀)、かつての交際相手に恐怖を抱く啓吾(宮﨑将)、小学校時代、同級生・大吾の死にまつわる忌まわしい過去をもつ亮一(井浦新)と真(永瀬正敏)。富士登山ツアーに集った人たちが、頂上を目指して歩き続ける中で、過去に向き合っていく。
(C)WOWOW
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