2013年2月1日更新
パリを拠点に活躍する辻仁成さんが監督・出演する映画『その後のふたり-Paris Tokyo paysage-』は、15年間公私をともに過ごしてきたが、別れを決意した映画監督のカップル、純哉と七海の物語。坂井真紀は、ドキュメンタリー映画監督として、女性として人生を模索する七海を繊細に演じている。
こういうオリジナル作品が増えてほしいと願っています
── 10年ほど前、共通の知人を通して知り合った辻さんから、自主映画を撮りたいともちかけられ、出演が実現した。
「決め手はなんと言っても、辻さんの少年力ですね(笑)。それが一番大きいです。
辻さんから『これやりたいんだ。真紀ちゃんにやってほしいんだ』と少年のような熱く真っすぐな眼差しで言われると…(笑)。ものを作る意欲というかパワーというか、そういうものがすごくある方なんです。私ももの作りに関わる人間として、そこはすごく愛おしいなって。私でできることがあればと、どういうお話になるのか、まったくわからないままお返事をしました。」
── そして、上がってきた台本の印象は?
「別れた男女が全然会わなくて、パリと東京で往復書簡を繰り返すという設定がすごい面白いなって思いました。七海も、面白いキャラクターだなと。彼女は、とても女性的な人。別れたあと、女性のほうがすっきり背負わないって一般的に言うじゃないですか。私も決めるまでは長いけど、決めたらすぱっといく方なんですけど、彼女は遠く離れて暮らしながらも純哉とつながりを保ち続けようとするんですよね。私は十何年も付き合った経験はないけれども、時間に関係なく、そういう感覚はわかります。いつもそばにいた人がいなくなるっていうことは、片腕をもぎ取られたような感じなんだろうなって。夫婦のような兄弟のような関係になっていたから、七海の執着も強かったんでしょうね。」
── 役作りでは、七海の人生を想像する作業が楽しかったと振り返る。
「台本をいただいたときから、七海についてたくさん想像するのが楽しい作業でした。純哉とどんな15年を送ってきたんだろうとか、結婚はなぜしなかったんだろうとか、想像の余地が残されていましたね。それだけに難しい役でした。言葉ひとつにしても、どんな歴史があってどんな思いがあるのか、その奥深さを感じました。」
── 破局後、東京で暮らす七海は、ドキュメンタリー映画監督して、そしてひとりの女性として、人生を模索しながらも、なかなか前に踏み出せない。その揺れ動く七海の心情がリアルに伝わってくる。
「純哉と別れたあと、七海は人生に迷います。演じる上で、七海が一歩前に踏み出すとき、核になるものが必要でした。その部分を、私なりに付け足していけたらいいなと思いながら演じました。七海には辻さんの女性像が込められていると思ったので、自分が脚本を読んで感じたことを、辻さんと話し合って共有しながら演じていきました。」
── 現場では、監督、辻仁成の熱意と、ものを作る上での行動力に感銘を受けたという。
「辻さんのそばで見させていただいて感じたのは、自分がやりたいことを自分で切り開いて実現していくにはどうしたらいいのかということ。勉強になりましたね。私は小規模で撮影していくような作品もやらせていただいているので、こういう雰囲気かなという想像があったんですけど、また違いましたね。辻さんを愛して集まったスタッフたちなので、監督、カメラマンさん…多分現場にいらしたのは10人ぐらいなんですけど、みなさんのケアが行き届いましたし、辻さんを筆頭に熱気がすごいありました。」
── 女優、坂井真紀にとって、映画の現場の魅力とはーー?
「一番は、みんなでひとつの作品を作ることかな。同じ方向にみんなで向かっている中にいるのがすごく幸せです。監督が作りたいものを作っている場所にいられることが楽しいですね。」
── ものを作ることが好き。それは、感受性あふれる写真とともに綴られるブログにもあらわれているが、出産を経験して、演じることや感性の面で何か影響はあったのだろうか。
「母になるということは、強くならないといけなくて、子どもに背中を押してもらっているなって感じます。小さなことを気にしなくなりました。親になると、いろいろな場面で成長させてもらっているなって感じますね。大変なこともたくさんありますが、年の功なのか、ふとその大変さを楽しめる感じもあるんですよね(笑)。子どもは1歳を過ぎて、意思の疎通ができるようになったこともあって、ますますかわいいです(笑)。」
── 最後に。辻仁成監督の思いやバイタリティが詰まっているこの作品が、観客にどう届いてほしい?
「感じて、想像してもらいたいですね。七海と純哉が別れたあと、新しい出会いや創作について、人生について、それぞれが模索する日々を季節の移り変わりとともに描いていくんですけど、その風景の映像が言葉以上に物語ってくれていると思います。ただ木が風に揺れているだけで、時間の流れを感じたり、人生を感じたりできるのが、この映画の魅力だとオススメしたいですね。そして、監督の思い入れが詰まった、こういったオリジナル作品がもっとたくさんあってほしいなって個人的に願っていて、自分が出演させてもらいながら応援しています。」
Writing:杉嶋未来
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『その後のふたり-Paris Tokyo paysage-』
2月9日(土)より渋谷アップリンクほか全国順次公開
映画監督の純哉と七海は、15年間もの間公私を共にし、ドキュメンタリー製作に没頭してきた。だが、ある日、二人の意見は真っ向から対立し、それが引き金となって彼らは別れることになる。東京に残った七海とパリへと旅立った純哉は、自分たちを題材に別れたカップルのその後を追うドキュメンタリーを撮ることになり……。辻さんが映画をもとにもうひとつの世界を綴った小説『その後のふたり』(河出書房新社刊)が発売中。
(C)Jinsei Film Syndicate
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