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日本統治時代の台湾の地から甲子園大会に出場した〔嘉義農林学校〕野球部の実話を基にした台湾映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』。国境を超えた映画人たちのコラボレーションから生まれた珠玉の一作に鬼監督・近藤兵太郎の妻役で出演した坂井真紀が、本作に寄せる“大切な思い”を語った。

“同じ目標に向かっているとホントに国境を超えられるんだ”と実感しました。

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―― 本国・台湾で、すでに大ヒットを記録している『KANO 1931海の向こうの甲子園』の日本公開が決定した今、坂井の胸には改めて熱いモノが込み上げてきているという。

「台湾で大ヒットしているというニュースは日本にも届いていましたけど、「やったぞっ」っと、そっと一人でガッツポーズしていたので…だから、この作品がやっと日本のみなさんにも観てもらえるんだと思うと本当に感慨深いですね。普通、自分の出ている映画はちょっと距離を置いて観てしまうものなんですけど、この作品に関しては私、ホントにただのいちファンになってしまっていて(笑)。なんでしょう…本当に素晴らしい映画だと思います!オープニングからどんどんどんどん映画の世界の中に連れて行かれ、出てくる人たちが愛おしくてたまらなくなるんです。後半の甲子園での試合のシーンも、きっと野球を知らない方でも手に汗握ってしまうと思います。時間としては長いほうの作品だと思いますが、 “もっと観たい。まだ観ていたい”って思ってしまう、熱くて、暖かくて、優しくて、強い、とっても魅力のある映画だと思います」

―― 面に広がる水田、広く続く空といった雄大な台湾の大地を背景に、素朴で大らかな笑顔で野球の練習に打ち込む高校生たちの青春が描かれていく本作。坂井が演じたのは、泥だらけの球児たちを甲子園へと導く鬼監督・近藤(永瀬正敏)の妻だ。

「彼女を見てまず感じるのは“古き良き日本の女性像”、ですよね。でも決して三歩下がって…というだけではない、きちっとした強さがある人で、彼女の「強さ」は彼女の魅力でもあるので大切に演じようと思いました。球児たちのお母さん代わりという部分では、彼らのあの真っすぐな純粋さに引っぱられ、彼らの母でありたいと強く思い、永瀬さんとのシーンも、鬼監督が家族との時間の中でふと見せる人間性のようなものが伝わるシーンになったらいいな、と思いながら演じていました。実際、当時のおふたりは決して裕福な暮らしではなかったようなんですが、それでも奥様は自分の家庭の分を削ってでも球児たちのために…とやりくりしていたようで、大変な生活だったと思いますよ。でもあんなに一生懸命な球児たちと触れ合って、そして彼らを甲子園に連れて行くために全力で指導している夫がいて。やっぱり妻としては支えたいなと思うでしょうね。真っすぐに思いに向かっていく人って素敵ですから」

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―― 監督のマー・ジーシアン氏はこれが長編デビュー作。スタッフも台湾チームという現場での撮影で、戸惑いはなかったのだろうか。

「“映画を創ること”は万国共通と言いますか、言葉が通じなくても映画を創るという熱のもとに集っている事実は変わらないんだ、ということにすごく感動しました。特に、“全力で創る”というみなさんの姿勢。日本でも台湾でも創る中での制約というのはどうしてもあると思うんですが、そこへのこだわり方や抗い方が非常に熱いというか…見ていて“日本人のほうが制約に対してはちょっと大人しいのかな”と思いました。自分たちの中にやりたいこと、伝えたいことが明確にあるからこそ、彼らは納得いくまで何度でもトライする。ホントにみなさんすっごく粘るんですよ。それってすごくシンプルだけど、一番大事なことなんじゃないかなって思って…私自身ちょっと羨ましくもありましたし、いい刺激をもらいました。とにかく迷いのない現場でしたね。  監督はとてもシャイな方なのであまりいろんなお話はしなかったんですけど、ご自身が俳優でもあるので、演出の言葉、感情を伝える表現がとても的確でわかりやすかったです。永瀬さんとも久しぶりに共演させて頂きましたが、やっぱり圧倒的な存在感をお持ちで、すべてを預けられる方だと再確認しました。なので、ふたりのシーンはもう安心してポッと(笑)、夫婦にならせてもらいました 」

―― 日本人の文化、日本人の精神、そして台湾の人々の不屈で大らかな人間性が心地よく融合した作品世界。“高校野球”という最強の共通言語で民族の壁を悠々と超え、人々の心がひとつになっていく清々しさは、この作品の最大の魅力だろう。

「日本のことや歴史のことを皆さん本当に丁寧にリサーチされていて、セットも細かいところまで感動的に素晴らしかったです。私のお着物も台湾の若い女性のスタッフさんが着せてくださってたんですよ! そういうことひとつひとつからも力をもらって、安心して撮影に臨ませて頂きました。そして、“同じ目標に向かっているとホントに国境を超えられるんだ”という実感は、人間としてもいち役者としてもすごく嬉しい体験でしたね」

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―― では、“本作の一番のファン”としておすすめの見どころは?

「やっぱり最後の甲子園の試合のシーンですね。球児たちはみんな野球が出来ることが第一条件で選ばれた役者さんたちで、その迫力はこの映画に素晴らしい感動を与えてくれています。私も泣きながら応援せずにはいられませんでした、お恥ずかしいですが(笑)。撮影して、野球の練習をして、次のシーンの台詞を覚えて…と、現場でも休むことなく頑張っていた球児たちの真っすぐで力強い姿をぜひ観て頂きたいです」

―― 2015年はこの『KANO 1931海の向こうの甲子園』公開と共に、現在ドラマ『怪奇恋愛作戦』もオンエア中の坂井。正統派映画女優の顔から、キュートでちょっとエキセントリックな怪優路線まで。振り幅大きく“女優”を愉しむそのスタンスも魅力的だ。

「“こういう役をやってもらいたい”ってオファーをいただくと毎回、“あ、そんな風に思ってもらえてるんだ。私でお役に立てるかな?”ってどんな役でも嬉しいです。そうですね、流れるようにと言いますか、まぁ私は私ですし(笑)、どんな役もマイペースに楽しんで演じています。もともとあまり役を引きずらないほうというか、ひとつひとつに全力を注ぎつつ淡々と生きておりますので(笑)。終わってコーヒーを一杯飲むとか、ビールをいただくとか。そんなことですぐホッとできちゃうんですよ、私(笑)」


Writing:横澤由香

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(C)果子電影

MOVIE

『KANO 1931海の向こうの甲子園』

2015年1月24日(土)公開

日本統治下の1931年、台湾代表として全国高校野球選手権に出場し、準優勝を果たした嘉義農林学校(通称:嘉農=かのう)野球部の実話を描いた台湾映画。
台湾の嘉義農林学校の野球部に、新監督として日本人の近藤兵太郎が赴任。連敗続きの弱小チームだったが、近藤の鬼のようなスパルタ式訓練で野球への情熱と勝利への強い思いが湧き上がる。そして1931年、台湾代表大会で優勝した彼らは甲子園の土を踏む―。

▼公式サイト
http://kano1931.com/

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