「この作品のお話をいただくまでトラベルナースという言葉自体を知らなくて、トラベルナースが一般のナースとはどう違うのか、どんな仕事をするのかなどスタッフの方が丁寧にまとめてくださった資料を読み、理解を深めていきました。アメリカでは全看護師の10%も占める40万人もの方たちがトラベルナースとして働いているそうです」
「中園さんとお会いするのは初めてでしたが、今まで携わってきた作品のことや、仕事に対する思いを嘘偽りなく話すことができたんです。本音をさらっと言えることはあまりないので、不思議な感覚でした。内山プロデューサーとは、僕が10代のころに『生徒諸君!』というドラマからご一緒させていただいているので、こうやってまた仕事ができることが嬉しかったですね。それもあってなのか、おふたりの持つ雰囲気がそうさせるのか、心に秘めていたことをどんどん口に出していて、家に帰りながら思い返したら急に恥ずかしくなりました(笑)。どんなことを話したかは恥ずかしいので、秘密です」
「映画では共演シーンは多くなく、お芝居で深くセッションをすることがなかったので、もっと貴一さんとお芝居ができるようになれたらいいなと当時は思っていました。10年という時を経て、まさかバディを組めるとは思っていなかったので純粋にうれしかったです。あの頃より成長した姿を見せたいというよりは、自分をさらけ出しながら貴一さんをはじめ、共演者の方たちにぶつかっていきたいと思って、作品をよりよくするために『あのシーンはこういう風にやりたいんですけど、どうですか』など、深い話をさせていただきました。10年前より作品に対する気持ちや向き合う姿勢は深くなっていると思いますが、貴一さんを見ているとまだまだだなと思う瞬間があって。そんなとき貴一さんが、『お前がやりたいようにやりなさい、全力で僕が守ってあげるから』とおっしゃってくださいました。それからは全力で甘えて、こうしたい!という思いを強く持ちながらぶつかっていきました」
「ほかのナースと違うのは、NP(=ナース・プラクティショナー)という一定の医療行為ができる看護資格を持っていることです。アメリカで活躍し、知識も技術もハイレベルなナースだけれど、日本の医療現場ではその技術が生かせない。そして、はっきりと物を言うアメリカとは異なり、日本では思っていても口に出さないということが多いので、とっつきにくく嫌なヤツに見えてしまう。ただ、アメリカ社会で生き抜くためには、精神力、体力ともに強くないとやっていけないので、強いハートを持った歩に対してリスペクトしています。仕事をテキパキこなし、思ったことをズバッと言い、デキるけどどこか抜けている(笑)。そこは、中園さんの脚本の妙で、プライドの高い嫌なヤツだけではなく愛される要素をちりばめてくれています。完璧ではなく、どこか抜けているところが可愛いところだなと思いながら演じました」
「難しい専門用語は医師よりも少ないので、セリフを覚えることで苦労はあまりなかったのですが、手を動かしながら話すことが多いので、そこをいかに自然に見せるかということは意識しました。患者さんの様子を見に行く“ラウンド”から戻ってきて、点滴を用意したり、看護記録をつけたり。患者さんの体を拭くこともあれば、ベッドシーツをかえることもする。そういう作業がなるべく嘘にならないようにということは、貴一さんはじめナースチームとも話をしました。視聴者の方のなかには現役ナースもいれば、かつてナースだった方もいると思うので、「あるある」と共感を得られるシーンをひとつでも多く作っていきたい。なので、話しながら手が止まらないように、洗濯物を干しながら、食器を洗いながらセリフを覚えるようにしました」
「僕も33歳になりましたし、主演ですし、引っ張っていかなければ…とは思ったのですが、そうできない部分もあって(笑)。寺島(しのぶ)さん、野呂(佳代)さんが中心となって盛り上げてくださいました。毎日撮影に行きたくなるような雰囲気の現場にしたいと、スタッフ、共演者のみなさんと取り組んで、嘘なくみなさんと接し、不必要な緊張感は取り除き、明るい現場になるようコミュニケーションをとることを心掛けました」
「アメリカとの違いを感じながらも、静と出会うことで歩がどう変わっていくのかは見どころのひとつです。よりよい環境にするために衝突を恐れず言いたいことを言う歩と、穏便にことを進めるけれど、痛烈なひと言を放つ静とのかけ合いは、脚本が面白いので、無理に逆らわずに思いのまま演じていけば、いいものができる。反発し合いながらも、つながりが深まっていくところが伝わったらいいなと思います。ナースハウスで食卓を囲むシーンは、緊張感のあるドラマのなかでもホッとできる場面のひとつです。野呂(役名:森口福美)さんがわりと本気で食べているところもほっこりしますが、ぜひ着られている服にも注目してほしいです。1話で気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、エビフライのTシャツを着て、エビフライを食べていたりと、小ネタもちりばめられているので、是非チェックしてみてください。
ナースを演じて初めて知ることも多くありました。病棟ではたくさんの患者さんがいて、ひとりひとりの状態を正確に把握しなければなりませんし、患者さんだけでなくそのご家族のケアも必要になり、仕事内容は多岐にわたります。ものすごく体力がいるし、命を預かる仕事なので精神的にも負担が大きく、改めて大変な仕事だと実感しました。コロナ禍が続き、今も最前線でがんばってくださっている医療従事者の方々には頭が下がる思いでいっぱいです。だからこそ、なるべく嘘のない芝居をしていきたいと現場全員で取り組みました」
「毎回素敵なゲストが出てくださっています。ゲストの皆さんが演じられるさまざまな問題を抱えた患者さんにどれだけナースが寄り添っていけるか、そのなかで静とやり合いながら歩が少しずつ成長していく姿にも注目していただけたらうれしいです」
Writing:岩淵美樹/Photo:笹森健一
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テレビ朝日系
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