「『やらないの?早くやらないと』ってせっつきました(笑)。私としては「もぎりさん」が完成したときから、ある程度の長さになったら、地方なり、いろいろな映画館に持っていくことを野望にしているので。おかげさまで前作もとても好評だったったので、無事「session2」の制作となりました」
「瀬田なつき監督は「片桐はいり4倍速」という作品で、メイキングを撮ってくださって、ぜひ今回監督としてご一緒したいと思いました。鈴木太一監督は前作の4、5、6話の脚本を担当してくださって、もぎりさんのテイストをわかってくださっているので安心してお任せしました。とはいえ、1作目の踏襲にならないように『監督の好きなようにやってください』ってお話しをしました」
「前作からの持ち味を生かしながら、今回も両監督それぞれの個性が出た楽しい作品になりました。前作は6本を一晩で撮ったんですが、今回は二晩に分けていただいたので、余裕が少しはあって、思いっきりやれましたね。でも、一晩の方が勢いでできるから気持ちと体は楽かも(笑)」
「前作の監督たちも絶対妥協しませんでしたが、今回のお二人もそうでした。瀬田監督も鈴木監督も試行錯誤しながら、何回も撮り直したり、粘っていらっしゃいましたね。鈴木監督は自分のイメージがあって、そこに近づけていこうとなさっていました。瀬田監督は、逆にその場でイメージがどんどん広がっていく感じ。私といえば、もぎりさん名物だって言われているんですけど、この作品ではロケハンにもシナハンにも私がいつもいて、リハーサルも助監督ではなくて本人がやるという、そういうふうに最初から参加して作れるのが楽しい。これからも続けたいですね」
「この作品に関しては、家でメイクをして、衣装を着ていって、もぎりさんという人物を演じているけど、私自身は特殊なことをしているつもりはないんです。でも、もぎりさん自身は特殊な存在で、前作を手がけられた大九明子監督は『もぎりさんって実はいないのかも』っておっしゃっていて、そういうニュアンスはあるのかもしれませんね。そもそも「もぎりさん」のような4コマ漫画的な映画はあまりないですよね。ショートショートというのはありますが、「もぎりさん」のようなオチのある作品はあまりないと思うので、新しいジャンルとして成立できたら嬉しいなと思っています」
「『はいりさん、観ましたよ』って声もありつつ、私がもぎって、『はいはい、席はこちらですよ』って「もぎりさん」を上映している横で案内しても特に何も言われないのが面白い、って言ったら変ですけど(笑)、これはこれでいいのかなって。特殊なことをやっているようになってないのが良いなと思って。あえてことさらなことをやっているわけじゃないですか。だから、このぐらいの扱いでいいのかも。『ああ、はいはい』って感じで受け止めていただいているのが私としては心地いいなって思いました」
「観てくださった方でそう言ってくださる方がいてとてもありがたいですし、プロデューサーも言うんですけど、「もぎりさん」は始まりがそうじゃないですからね。「サザエさん」が4コマ漫画で発祥して、テレビのアニメは10分、10分、10分、計30分では成立したけど、ドラマはともかく、映画にするには難しそうじゃないですか。「もぎりさん」も10分までならいけるのかもって冗談で言っていますが、どうでしょうね」
「鈴木監督は『くそガキの告白』という映画をキネカ大森で公開した際、駅で看板を着て立っていらっしゃって、それでキネカ大森を知った方がいらっしゃるぐらいキネカ大森と縁のある方です。瀬田監督は、私が瀬田さんの作品のファンでご一緒したくて。それぞれの監督の嗜好や映画館との関わり方が出てくるので、前作の大九明子監督と菊地健雄監督の映画館あるあるじゃないですけど、今回は鈴木監督には私の方から古い映写機へのこだわりや、フィルムに対するリスペクトを入れたいとお願いして、映写室のシーンがあったりします。どちらの監督の作品にも、映画にまつわるファンタジーだったり、映画と映画館への思いが描かれているので、楽しんでいただけたら嬉しいです」
Writing:杉嶋未来
キネカ大森先付ショートムービー
7月12日(金)よりキネカ大森にて先行上映後、テアトル系劇場などでも公開予定
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