「この映画はYOASOBIさんの楽曲の原作になった『たぶん』という小説から生まれた作品なのですが、3組のカップルの『別れ』を描いた作品ではあるものの、どこかほんわかとした不思議な雰囲気が漂っていて、あたたかい印象を受けました。映画ではいろんな世代のいろんな別れが描かれているからこそ、より共感できる部分もあるのかなぁと思いました。特に私が出演した川野と江口のパートは、小説とは違うストーリーなので、台本をいただいた時は『どうやったらオリジナルと同じような雰囲気を出せるかな?』って、実は少し不安な部分もあったんです。でも出来上がった映像を観たら、伊豆の綺麗な風景にも助けられて、まさに青春真っ只中の初々しい感じがすごくよく伝わってきて……。川野役を演じた寄川歌太くんは私よりひとつ年下で、2人ともリアルな高校生だったからこそ、あのナチュラルな雰囲気が出せたんじゃないのかなって思います」
「数多くのコンテンツがある中でもYOASOBIさんはいろんなジャンルとコラボしたりしてたくさん露出もされているので、自然と耳にする機会も多かったです。まわりの友達に聞いてもYOASOBIさんのことを知らない子は一人もいないくらいだし。だからこそ、この映画の原案となった原作小説やYOASOBIさんの楽曲『たぶん』の中にある『みんなから愛されている世界観』を崩しちゃいけないなっていうプレッシャーもありました。YOASOBIさんのミュージックビデオのコメント欄を見ていると、『この曲(『たぶん』)が一番好き!』っていう方が結構多くて。私もこの小説や楽曲の雰囲気が大好きなので、その世界観を壊さないように気を配りながらも、映画に登場する3組のカップルそれぞれが、ちょっとずつ違うものを出していけたらいいな……っていうのが、今回自分の中で特に意識した部分です」
「とにかく聞き上手な監督で(笑)、オーディションの時から既に、過去の自分自身の別れのエピソードだったりを、割と何でも話せてしまったような記憶があります。なので、江口役をやらせていただけると聞いた時は、『わぁ!やったー!』ってすごく嬉しかったです。きっと監督ご自身が優しくて柔らかい空気をお持ちの方だからだと思うのですが、現場の雰囲気もすごく和気あいあいとしていました。衣裳合わせの時に寄川くんと本読みをやらせていただいたんですが、まさに今のコロナの状況を取り入れた作品でもあるので、川野と江口が携帯のビデオ通話でやりとりする場面が出てくるんです。でも、ビデオ通話をしながらの演技というのは、私も寄川くんも過去に経験したことがなく……。最終的には『きっと伊豆のロケーションで撮るからこそ生まれる感情もあるんじゃない?』『まずはその場で感じるがままにやってみよう!』という話になりました。ビックリするくらいのスケジュール感の中で、一気に『トントントン!』っていろんなことが進んでいきました。スケジュール的にはかなりバタバタでしたけど、素敵な現場だったからこそ、これほどスムーズに出来たんじゃないかな」
「友だちに相手役をお願いしてビデオ通話の練習をしてみたんですけど、画面の中に相手の顔だけじゃなくて自分の顔も写るから、つい前髪が気になっちゃったりするんですよね(笑)。だから『本番で上手く演じることができるのかなぁ?』って心配だったんですけど、実際のビデオ通話のシーンの撮影でも寄川くんが電話の向こう側で相手をしてくれたので、あまり意識しないでできました。やってみるまではいろいろ不安でしたが、やれば意外とできるもんなんだなぁ、ビデオ通話って画期的だなぁって思いました。でもやっぱりちょっと恥ずかしいから、プライベートではたぶん使わないと思います(笑)」
「江口はまさか川野が直接会いに来てくれるなんて思ってもいないわけだから、サプライズ感も味わえるというか、ある意味理想的なシチュエーションとも言えますし、余計キュンとしちゃいますよね(笑)。考えずに衝動的に動いてしまえる高校生らしさも感じられて、私自身『いいなぁ~江口!』って思いながら、お芝居しているような部分もありました(笑)。私自身は、三日間撮影に参加させていただいたんですが、一日目は東京で、二日目と三日目は伊豆に行ったんです。東京の撮影時にちょうど台風が直撃していたので『大丈夫かなぁ』って思っていて。結果的には“ササノとカノン”の心情的には雨がピッタリで、今となっては高校生パートの伊豆のシーンとの対比もあって良かったなって思えるんですけど、当日は『明日本当に晴れるのかなぁ』って、不安でいっぱいでした。でもいざ蓋を開けたら二日間連続ですごくきれいに晴れて。一日目は夕日が落ちるときにちょっと雲がかかっていて、紫色っぽくも見えて、さらに二日目には、雲が一切かかっていないきれいな夕日も見られました。『両方の夕日を見る機会なんてなかなかないよ!』って、現地の方も驚いていたくらいだったので、本当に良かったなぁって思いました。あんなにきれいな景色の中でお芝居ができるなんて、すごく贅沢なこと。あのシーンは、ぜひスクリーンで観ていただきたいです」
「この映画の中で描かれる“別れ”は、ある種大きく変わってしまった世の中の情勢がもたらす新しい別れというか、今の時代を生きている私たちだからこそ感じられる、新たな恋の障害とも言えるんじゃないかと思います。もしこれが今じゃなかったら、どこかファンタジーになってしまうような気もするんですけど、『たぶん』に出てくる3組のカップルの別れはソーシャルディスタンスの世の中でリアルに起きていることでもある。この映画を通じてすごく自然な形で新しい別れを体感できるところは、ある種の強みでもあって……。まさにこの時代だからこそ生まれた“新たな別れ”を描いた映画になっているんじゃないかなって思います」
Writing:渡邊玲子
MOVIE
11月13日(金)公開
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