「そうですね。バンドとして出るシーンは全て本気で演奏して本気で歌っていますからね。稽古を振り返っても、年末にメンバーで集まって、年明けにPVを撮って、さらに個人練習もしつつ本稽古前の10日間くらいはバンドでがっつりスタジオに入っていましたし…やっぱり、そのあたりの記憶は強烈だなぁ。音楽監督の岡崎司さんは劇団☆新感線でずっと舞台の音楽をやってきている方ですし、布袋寅泰さんの曲に森雪之丞さんの詞ですからね。超一流のクリエイターの方とやってるんだっていうのがホントにすごくて。バンドはベースの慎之助さんはプロなんですけど、あとの僕らはホントにいろいろ言われてヘコんだりもする中、みんなでちょっとずつ進んでいった感じです。最初はちょっとだけ動きながら演奏するだけでもグッチャグチャでしたから(笑)。あと、狭いスタジオで横でドラムを叩かれて、会話も何も聞こえない状態…(笑)。でも不思議なモノでやっているうちに耳がミュージシャンモードになるというか、爆音の中でも普通に喋ったり芝居したりできるようになりましたし、メトロノームに合わせて弾くのも苦手だった自分が“ドラムがあるから安心して弾ける”って思えるようにもなりました。みんな一緒に本番までやれることは全部やりました」
「そこがまた難しいんですけど、台詞はホントに日常というか普通の台詞が多いんですよ。余計なこととかあまり言わないから、人間関係ってところではわりと普段の役者同士、ふだんの“サイケデリック・ペイン”のメンバーの関係に近いような気がしますね。演出の茅野イサムさんも僕らがやることを拒否しないというか、まずこっちが出していくことを尊重してくれて、“そうするんだったら、もっとこうすれば面白くないか?”と広げてくれる。打ち上げのシーンも…まぁほぼ下ネタですけど(笑)、けっこう弾けてみたりしてもなにも言われず、けっこう自由にやってます。演出家が役者の思いを尊重してくれるので、充実した楽しい稽古でした。具体的に言われたのは“腹筋割れよ”くらいかな(笑)。だからガタイはよくなりましたね」
「そこは実は大変だった部分かもしれないです。茅野さんはホントに熱い方で、あまり細かいところを要求するタイプの演出家さんではないんだけど、“嘘はダメ”“ガチが大事”というのはすごくおっしゃってました。あたりまえのことができないと怒られる(笑)。“人がこうきたらこうなるだろ”とか、“ちゃんとホン(台本)を読めよ”とか。それって一番大事なことだけど、案外おろそかになりがちなところでもあって…そこを見られているのはとても緊張感があったし、自分にとっても改めて為になりましたね。俺が一番傷つくのは“それ、ROCKじゃねぇよ”って言われること(笑)。演奏してるときの空気とか、芝居でもですけど“それじゃ自分のまんまじゃん。ROCKじゃないじゃん”…って言われてもどうすればいいんだっ!?(笑)。一生懸命弾いてても“それじゃずっと下向いてるだけだよな”って言われたり。ただ、そこはもう誰かに教えられて出せるモノでもないので、他のバンドの映像を見たりとか、いろいろ自分で考えて、結局は数をこなしていくしかないし、最後は自分に自信を持つとかそういうことなのかなぁって。演劇としてバンド演奏する難しさも知った気がします。あと、メンバーがいい意味でみんな狂っているのが良かった(笑)。みんなで一緒にやって、誰かが上がるとほかの誰かも上がるっていう相乗効果が一番大きかった。フロントの小越勇輝君はもちろんカッコイイし」
「『サイケデリック・ペイン』は物語も歌も音楽もすべてが完全オリジナルですし、そこはカンパニー一同ホントに誇れる部分。爆音でテンション上がるし、雪之丞さんの素晴らしい詞は本当に大事に歌いたいなって思いますし──なにより作品全部が熱い! “なんなのこれ?”ってなにも分からないまま観にきても、絶対楽しめるはずです。もちろん、役者が本気でバンドをやってるのも大きな見どころなので…まぁ始めは勇輝を見ててもいいけど、途中からはちょっと後の俺らのことも見て欲しいかな(笑)。タイプの違う表現者が集まっているので、そこの“みんなが主役”みたいなところもすごく面白いんじゃないかと思います」
「そう! だからもう難しいことは考えずにそこに没頭して前のめりになってもらって…すごく中毒性のある作品なので、気に入ったら何度でも見て欲しいです。俺たちの熱さと…あと天使のソフィちゃん(七木奏音)がホント天使なんで、俺みたいに心の汚れた人間も(笑)、この舞台を観たら心が浄化されると思います。めちゃめちゃ盛り上がって、キレイな心で帰れる舞台。かなりスゴいんで、ぜひ!!」
Writing:横澤由香
STAGE
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