増田璃子「全く外見が変わらず、お若いままだったので(笑)、会った瞬間はそのままだー!!って思いました」
金井純一「そんなことないでしょ、老けましたよ(笑)」
増田「外見もそうですが、監督として前作と同様に私が演じやすいように色々と工夫をしてくださったので、とてもやりやすかったです」
金井「『転校生』では、わりと暗い役だったんですよ。今回は全盲ではあるけれど、明るい面もある役なので、そこがうまく表現できるのかなと思っていたのですが、みごとに演じてくれて頼もしかったですね。女優さんとして成長しているのではないでしょうか」
金井「和歌山出身のプロデューサーに出会ったのがきっかけです。和歌山市で映画を撮らないかという話をいただき、初めて訪れました。その時に、『あ、ここなら以前からやってみたいと思っていた盲目の少女と美容師の話ができるかも』とピンときたんです。街を歩いているうちにアイデアがどんどんわいてきて、まとめられるかなと不安になった記憶があります」
増田「初めてききました。嬉しいです。でも、役をいただいたときは私にできるのだろうかと不安でした」
金井「その気持ちを言ってくれたらよかったのに」
増田「和歌山に入るまでは確かに不安だったんです。でも、和歌山盲学校を見学させてもらい、生徒さんや先生たちの話を聞いて緊張と不安がとけていったんです。それまで目が見ないことは大変な障害だと思っていましたが、普通に生活を送っている生徒さんたちを見て、そんなことはないんだなと感じました。もちろん不便なことはあるだろうけれど、彼女たちにとっては見えないことが日常なわけですから……」
金井「できるだけサポートはしたいなと思っていましたが、特にこうしてほしいという指示は出しませんでした。盲学校の生徒さんたちと触れ合うこともできましたし、また撮影場所としてお借りすることもできたのでそれが役をつくるうえで役にたったのではないかなと思います」
増田「想像しているだけでなく、実際の授業風景を見ることができたのもよかったですね。点字の教科書や地図を見て、目が見えないということは触れて情報を得るんだということを体感しました。ちょっとしたことでもウソにならない演技につなげることができたのではないかと思います」
金井「娘のように可愛がっていた少女が10年の時を経てあらわれ、距離が縮まっていく。大きくジャンル分けをするならラブストーリーなわけですが、二人の距離感はとても難しいんですよね。年の差を考えるとヘンなとらえ方をされてしまう場合もある。でも、孤独感と繊細さ、優しさをもった直人を吉沢悠さんが素敵に演じてくれたので、ウソっぽくない関係性を描くことができました。増田さんも孤独を抱えつつ、明るく前向きに生きるサキを一生懸命に演じてくれたので、ふたりのおかげでいい作品になりました」
増田「髪を切るシーンは一発勝負なので、かなり緊張しました。サキにとって精神的につらい状況のシーンだったので、私自身のつらい気持ちをリンクさせて演じました。また、女優として初めて泣くシーンがあったのですが、なかなか泣くことができず苦戦してしまい……。監督から色々とアドバイスをいただきながら、時間をかけてサキの気持ちをつくりあげて泣くことができました。女優として得ることが多い作品になったと思います」
金井「初めての泣く芝居だったとは知りませんでした。それは難しかったよね。僕は器用に泣ける役者がいいとは思っていないので、どんなに時間がかかっても泣く表情を引き出したいんです。どんな感情でもいいから涙を出してほしいと思っていましたが、試行錯誤するなかで、やはりサキとしての気持ちで泣いてほしくて、胸に抱えている思いを叫んでもらいました」
増田「サキが生きてきた中で抱えている思いを大きな声で叫ぶうちに自然と涙が出てきました。サキの気持ちを当て書きで書いてくださったので、その思いは私の思いでもあるのかなって。演じているんだけれど、ありのままの私でもある。難しいシーンも多かったけれど、自分を出せたのがよかったなと思います」
金井「何といっても吉沢さんと増田さんの芝居です。ふたりの芝居、空気感がとても素敵だと思います。そして、和歌山市のみなさんがいなければできなかった映画です。直人の美容室は実際に営業されているところで、映画の雰囲気に合った場所を見つけたときには奇跡だと思ったほど。盲学校、美容室、和歌浦天満宮、マリーナシティ……。魅力的なロケーションと、そこで本当に生活しているようなリアリティのある芝居をぜひ観てほしいです」
増田「脚本を最初に読んだときはラブストーリーなのかな?とクエスチョンマークが頭のなかに浮かびました。何度か読むうちにサキの中に芽生えた恋愛感情を理解できるようになってきて、そうはいっても、現実的に考えると父親と同じくらいの人に恋愛感情がわくのかなとも思ったのですが、吉沢さん演じる直人と接していると“あり”だなって思えてくるんです。不思議ですよね。また、私が印象に残っているのは和歌浦天満宮から見た景色。石段を登り切って振り返ると住宅街の先に海が広がっていて、その景色に感動しました。和歌山の方たちはとてもあたたかくて、撮影場所となった美容室の方ともお友達になったんですよ! きっと映画を観た方たちも和歌山のあたたかさを感じ、行ってみたいなと思っていただけるはずです」
Writing:岩淵美樹
MOVIE
11月19日(土)より和歌山先行公開中
12月3日(土)渋谷HUMAXシネマ期間限定レイトショー他全国順次公開
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