「ちゃんとした環境で、これからの有望な監督たちが映画を撮ることができる。なにより、全編フィルムで撮れることが大きいと思います。フィルムで撮るということは、必然的にフィルム全盛期からやってこられたベテランのスタッフさんと一緒に撮ることができるのですが、これはすごく貴重な経験になると思います。今回劇場でも映写機でかけるんですけど、これからますます映写機で映画を観られる機会はどんどん失われていくと思うので、一映画ファンとして嬉しいです。『罪とバス』はフィルムで撮影し、フィルム上映するにふさわしい作品だと思います。監督のこだわりとして、日本だけどどこか日本じゃないような、70年代のアメリカ映画の色味を意識されていました。その質感にすごくフィルムが合っているなって」
「脚本から、監督の思いの丈が伝わってきました。正義は勝てないけど、前を向いていくしかない。最近の作品は勧善懲悪のすっきりしたものが多いですが、そうでないところを描けるのは、商業映画ではなく、こういう若手育成作家プロジェクトだからこそできることなのかなと思いました」
「ゴローという人間が何を考えて生きているのか、すぐにはつかめませんでした。監督が、昔の「トラック野郎」シリーズのような快活さがある感じにしたいとおっしゃって、自分にその快活さがあるのかなとちょっと心配になりましたが(笑)。また、監督のテーマ的に、天才バカボンの「これでいいのだ」があると伺ったことがヒントになりました。ゴローは、それを体現できるキャラクターであるべきだと思い、そこに向かいだしてからつかむことができました。過去を抱えてうまく処理できない部分もありながら、シリアスになりすぎず、すべてを受け入れて生きている、そんな感じで居られたらいいなと思いました」
「この役はどう感じているのか、役の人生を、役のこの場面での気持ちを理解しようとします。新しく知り合った人と友だちになろうとする感覚かもしれないですね。それでいろいろ理解して、共感していくと、友だちの悩みや苦しみを自分のことのように感じることができる。役のことを理解して受け入れ、共感していかないと、他人事になってしまうんですよね。最終的には、そういう思いが重なっていって、自分に近づいていくのかもしれません。プライベートでも、気が合わない人に対して、「よくわからないから、もういいや」って終わらせるのではなくて、「なんでだろう?」と考える。それは役作りにも役立ちますし、僕自身の人生においてもそちらの方がいいのかなって。人を受け入れることが、役を受け入れることにも繋がる。人生にいい影響を与えれてくれる、この俳優という仕事は、なんだかいいなと思うようになりました」
「クライマックスのシーンはなかなか自分の中に落ちてこなかったので、アクションと感情をすりあわせるように監督とお話をたくさんさせてもらいました。頭の中での構造と実際に動いてみての違いが起こることが多く、活字を追いかけてアクションをしてしまうと、どうしても固くなってしまったり、気持ちが離れてしまったりすることがあったので、監督とコミュニケーションを取ってゴローの気持ちを一緒に探りながら、気持ちとアクションが一致するように演じました」
「映画をやらせてもらったなって感じがしました。今回はフィルムで撮っていただいたということもあってか、本番になるとピリッとするような感じがあり、撮影している時とそうでない時のメリハリが大きくあった現場だったかなと思います。僕自身にとっても、フィルムで撮っていただいたことはすごく大きくて、フィルムで撮影する映画がまだ多かったデビュー当時の『ラヴァーズ・キス』という作品に通じる感覚を思い出しました。目の前で起こっていることを、切り取っていく。現場では、その作業が大事なんだなって改めて感じることができた作品です。上映期間は短いですが、ほかの3作品も個性的ですごく面白いので、たくさんの方に観ていただきたいです」
Writing:杉嶋未来
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