「この物語は、これまでの人と動物が主人公のお話とはひと味もふた味も違うと思いました。ナナが最後、悟に向かって話す言葉があるのですが、それがもうたまらないなって。そして、悟自身の在り方がとても素敵で感動しました。悟は自分の人生を卑下することなく、周りに感謝をしながら、いろんな人に会いに旅をします。法子の立場からすると、もっとこうありたい、こうだったらなど、そういう思いはなかったの?っともどかしくなるのですが、悟の代わりに、法子が吠えているんだろうなって思ったり(笑)。また、感謝の気持ちや人に思いを伝えるのは、その時じゃないとダメなんだというのは改めて感じました」
「法子は、まっしぐらな人だと思います。家族思いで、姉や義兄がどんな思いで悟と接していたのか、痛いほどわかっていたし、その思いが絶たれることで、悟がどうなるのか。同情以上に心配になってしまったのかな、って。法子の悟を守ってあげたいという気持ちは母性以上に正義感だったじゃないかなって」
「悟との暮らしでは、法子はうっかり口にしまうことも多くて、日々反省しながら、悟のことを愛おしいなって思う、その繰り返しだったんじゃないでしょうか。「お小遣い足りてる?」って聞いたら、「うん、足りてるよ」って言いながら、こっそりバイトをしている悟を見れば見るほど心配になる。私にはわがままを言ったり、甘えたり、できないのかな。そういう環境を自分は用意できなかったのかなって、法子は自分を責めてしまいます。それでも悟のために頑張ろうって、法子もそんな悟に支えてもらってもいるんだろうなって感じがしました」
「そうなんですよね。親子とも違って、姉弟みたいな関係というか。もしかしたら、二人ともすごく孤独だからかもしれません。お互いいなくなったら、天涯孤独になってしまう、そういう部分で似ているのかなって」
「監督からも姉弟みたいな距離感でお願いしますと言われました。母であろうとするより、保護者として自分が立ちふさがろうという気持ちで入っていきました。時代は飛び飛びなので、たまに会う悟がどんどん大きくなっていくんですよね(笑)。家の中に、大きくなっていく悟の写真が増えていくのを見ると、こうやって生きていたんだなって感慨深くなりました」
「撮影現場は、スタッフ全員がナナに無理をさせない意識を持っていたので、適度な緊張感と優しいまなざしに包まれていました。「ナナが膝の上に乗る」って台本には当然のように書かれていますが、猫ですからそう簡単にはいかなくて(笑)。ナナがそうしたくなるまで、見守るように待つ。撮影前の段取りは監督が猫のぬいぐるみを操りながら、ニャニャニャ!って感じの導線で走ってもらおうと思います!って自らがナナになりきっていて。それが毎回面白いんです(笑)」
「ナナはツンデレというか、ちょっとやさぐれたところが魅力のかわいい子でした。そして少しカールがかかった独特な毛並みが、ぬいぐるみみたい。あと、少し生意気そうな表情だったり、仕草や佇まいが、とにかく可愛いいんです」
「福士さんとは初めてご一緒したのですが、相手に無理をさせないよう細やかな気配りをしてくださるので、撮影期間はとても穏やかで居心地が良かったです。お互いに無理しない距離感で、どこに行っても、自宅のリビングでくつろぐような感じでした(笑)。高畑さんのナナは、とてもかわいい! ナナの生意気なところ、可愛げがよく出ていてすごいなって思ったのと、音としてナナの声を聴くと、ナナの気持ちはそういうことかとか、心の叫びみたいなものがより実感として沸きます。猫の口角のキュッとした感じが、声から伝わってきて、本当に素敵でした」
「自分が出ていないシーンが多いこともあって、悟とナナの旅はこうだったのかって、見守るような気持ちになりました。悟の青春時代や交友関係を始め、彼がみんなに愛されているんだなと知って叔母としてもとても嬉しいです」
「猫好きにとってはたまらない作品なのはもちろんですが、犬やフェレット、ハリネズミなど、家族同然のあの子たちと言葉が通じないから一方通行かなと思ったら、そうでもないよって安心させてくれる作品です。もし、この子たちが自分に言葉をかけてくれているとしたらという目線で観たら、早く帰って、早く触れたいって思うはず!(笑) 動物を飼ったことがあるなしに関わらず、優しい気持ちになると思いますので、ぜひ劇場でご覧ください」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
10月26日(金)公開
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