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不器用で一筋縄ではないキャラクターたちの日常と”ジワる”人間臭さを照射し、心に刺さる台詞の数々と骨太な構成でファンを獲得し続ける鬼才・大野大輔監督が描く、変わりゆく時代を生きる”持たざる者”たちのほろ苦い青春ラプソディ『辻占恋慕』が、5月21日(土)から新宿K’s cinema他で全国順次公開される。本作の主演で、“月見ゆべし”の芸名で活動するシンガーソングライターを演じた早織に、役作りの裏側や見どころを語ってもらった。

『辻占恋慕』は私にとって、たやすく“消費されたくない”映画になりました

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―― 作品のプロットに惹かれたという早織。自身の境遇と重なる部分もあったのだろうか。

「オファーをいただいたのが2019年の初頭で、ちょうど私が31歳になる年だったんです。主人公と私は全く違う人生を歩んで来てはいたんですが、30歳になるまでに私自身が抱えていた不安や、どれだけ苦労したり腐心したりしてもなかなか望むものが手に入らなかったりするような状況にも共感できたので、『このタイミングで月見ゆべしの役をいただいたのも、きっとなにかの巡り合わせだな』と思って、『これは私がやる役だ!』とすぐに心が傾いていました」

―― 劇中で、“月見ゆべし”として早織が披露するギターの弾き語りのシーンは堂に入ったものだが、未経験から始めてこの域に達するまでには、相当な覚悟があったことがうかがえる。

「もともと音楽自体は好きで、これまでにも仕事で歌わせていただく機会はあったものの、精緻な音程が取れたり、伸びやかに歌い上げられたりするような技量はなかったですし、歌が得意といった意識もありませんでした。とはいえ、やると決めた以上は主演としての責任がありますし、特に今回はクラウドファンディングで企画に賛同いただいた皆さんに出資していただいていたこともあり、私としては決して生ぬるいものにしたくなくて。ミュージシャンの役を演じるにあたって、観ている方々に“俳優が演じている”ということを忘れ去ってもらう境地まで達するにはどうすればいいのか、ずっと模索していた気がします」

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―― アクの強い登場人物たちがエッジの効いた会話を繰り広げるのも本作の特徴のひとつ。とはいえ、あくまでも音楽の世界でなんとか生きようと必死にもがいている人たちの物語であることを、“月見ゆべし”として演奏する姿やその佇まいから伝えたかったのだという。

「脚本上だと、ゆべしと、彼女をマネージャーとして支える信太との掛け合いが中心で。もちろんそれ自体とても面白いものではあるのですが、お互いに勝手なことを言い合っているので、“ただいがみあっているだけの二人”という印象で終わってしまったら、監督がこの映画で届けたかったことが目減りしてしまうんじゃないかと思いました。ベースは音楽の世界で表現しながら生きている人たちの話なんだということを、観てくださる方に自然と感じていただくためには、『私がまず偽りなく、歌やギターを必死でやってみるしかない』と思って、まだ正式に撮影が決まる前から自分でギターの先生を探して、自主的に練習を始めたんです。“月見ゆべし”が生きているように見えたなら嬉しいです」

―― 劇中には、いままさに夢を叶えるためにガムシャラに走っている人や、かつて夢を追った経験のある人たちに刺さるセリフが、いくつも登場する。早織は、『何も残らない人生を怖がってちゃだめよ。人生は人生なんだから』というセリフが特に印象に残っているという。

「夢とは何なのか。名声を得たいのか、たくさんのお金が欲しいのか。本当に自分が心から求めているものはなんなのか、分からなくなる時があるんです。でもある夢に向かってひたむきに進んだ末、たとえ何かしらの結果が残っていなかったとしても、人生そのものを引き受けて生きていく潔さみたいなものを、このセリフから感じました。実は、ゆべしと同じように東京で表現活動に邁進してきた私の身にも、ちょうどコロナ禍に入るタイミングで思ってもみなかったことが起きたんです。京都で暮らしている父が突然入院してしまい、親が老いていくという避けられない現実や、やがてこの先自分自身も確実に老いていくんだってことが大変リアルなこととして感じられ、感情が大きく揺さぶられました。そんななか、コロナ禍でいつこの映画の撮影ができるかわからなくなったときもずっとギターの練習は続けていて、ギターを弾いたときに音楽から得られる力に自分自身が支えられていることに気がつき、『私にとって音楽は生きる上で欠かせないものだ』と確信しました。その体験を通しての実感が、ゆべしを演じる上での芯になったと思っています」

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―― ゆべしの職業が俳優ではなかったからこそ、思い切り演じられた部分もあるという。

「ミュージシャンの知人に完成した映画を観てもらったんですが、『ミュージシャンにとってギターは大切な商売道具だから、絶対にそれで人の頭は殴らない』と言われて、『ですよね……』と返すしかありませんでした(笑)。自分と同じ業種だったらツッコミどころが目についてしまい変更を加えたい気持ちが生まれていたかもしれませんが、厳密には知らない音楽の世界だったから、映画として面白くなる方向へ気にせず進めていたのでしょう。クライマックスで信太が取る行動についても、脚本を読んだとき、『あのシーンはどうやって演じるんだろうな』と楽しみにしていました。『辻占恋慕』はゆべしとはまた別の、信太の人生を同時に描いている物語でもあります」

―― 劇場公開を前に、改めてこの作品を試写で観直したという早織。「時間が経って客観的に観られるようになった」というものの、「観客として感情がかき乱された」と振り返る。

「信太役の大野さんが監督も脚本も担当されているのですが、大野さんのワードセンスは抜群に面白い。『なんてめんどくさい人たちばっかり出てくるんだろう!』『あぁこいつも…うわぁこいつも…』と久しぶりに見て随所で笑いました。大野さんて日頃どんなふうに人間を眺めているのかなと興味深いです(笑)またクライマックスの信太を見ているときは苦しく切なく、えも言われぬ感情で胸の中がぐちゃぐちゃになりました」

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―― 「もう今のわたしには月見ゆべしを演じられないと思います」と自らコメントを寄せるほど、当時の自身のすべてを注ぎ込んで演じた“月見ゆべし”や『辻占恋慕』という作品は、早織にとって、切っても切り離せないものになったようだ。

「奇遇なことに大野さんもカメラマンさんも私と同い年で、スタッフさんも20代後半~30代前半が中心の現場でした。同世代の人たちがそれぞれの技術を寄せ合い、身を粉にしながら9日間で撮りました。当初の映画のリード文で『思い出なんかにしたくなかった』という言葉があったのですが、私にとってもこの映画は“思い出”という言葉にはおさめられず、自身の“源”のような存在となりました。月見ゆべしはきっといまもこの世のどこかで音楽を続けているはずですし、私もそんなゆべしと並行して自分自身の人生を生きていく。表現することも終わることはありません。ゆべしのセリフじゃないですが(笑)、『辻占恋慕』は“消費されたくない”映画になりました」


Writing:渡邊玲子/Hair&Make-up:灯(ROOSTER)

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MOVIE

『辻占恋慕』

5月21日(土)公開


ロックデュオ「チカチーロンズ」のボーカル・信太(大野大輔)は、ある日の対バンライブでギターの直也にドタキャンを食らわされる。路頭に迷う信太に救いの手を差し伸べたのはシンガーソングライターの月見ゆべし(早織)だった。売れない、金ない、時間ない、三十路同士の二人は共鳴し、やがて信太はゆべしのマネージャー……そして恋人となる。しかしメジャーに進出させたい信太と自分のスタイルを頑なに曲げないゆべしの溝は、日に日に深まっていくばかりで……。

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