杢代和人「すごく楽しかったです!」
武藤潤「僕らにとって初のミュージカルだったので、本当の意味での“オープニングナイト”でした」
大倉空人「まさに人生の初舞台だったからね」
武藤「普段自分たちのグループでやる曲とかダンスとは全然違ったし、舞台裏にいる時も『いま舞台上はどんな状況か』って常に確認しながら進んでいくあの時間は、ちょっと特別でした」
大倉「いつもの自分たちのライブと舞台の一番違うところって、“流れ”だと思います。ライブは曲ごとに歌詞に寄り添う感覚があるんですが、舞台って、頭から最後まで同じ役で、最初にどれだけ自分たちがノッていけるかによって、終わりの感情が全然違ってくるんです。演出家の方に教えていただいたんですけど、テンポ感とか目線とか手の動きとか、何かちょっとでも別のところに意識が向いていたりするだけでも、観客と一緒に感動することができない。流れはすべて最初で決まるから、本当に大事だなと思っていて。ライブでは曲ごとの瞬発力が必要になるんですが、ミュージカルでは持久力が欠かせないというか」
杢代「僕が感じたミュージカルの特別感は、“何もしていない時”にこそあって……」
大倉「“何もしてない時”って何(笑)? 要は、セリフがない時でしょ?」
杢代「そう。セリフがなくて、他の人が芝居している後ろで立っているだけの状態の自分を、お客さんに観られている……っていう瞬間が、今までにない感覚ですごく不思議だった」
大倉「僕らのライブの場合は、基本的に歌っているか踊っているかで、ただ立って聞いているだけという瞬間はほぼないからね」
武藤「止まっているとしてもその時はMCをしているから、確かに“何もしてない時”ってないかもしれない」
杢代「そのシーンまでのお芝居を自分の中で振り返る時間でもありますし、逆に周りの人たちのお芝居を見て『あ、今日はこういう感じなんだ』って把握した上で『じゃあ僕はこういうふうに合わせよう』って、一回リセットして頭を切り替えるための時間にもなりました」
武藤「いくら同じようにやろうと思っても、毎回全く同じにはできないし、やればやるほどだんだん良くなっていく感覚もあって」
杢代「そうそう。だからといって、必ずしも千秋楽がベストとも限らないところが難しい」
杢代「今日はいつもよりちょっと自分が頑張らないといけないなって思う時はありました」
大倉「わかる!あまり調子よくなさそうだから、気合い入れ直さなきゃって」
杢代「リハとかゲネプロでやった時はしっかり形になっていても、本番で『こうなっちゃったから、次はここで立て直さなきゃ』みたいな場面もあります。逆に『ここは上手く積み上がってるから、さらに良くするためにはどうすればいいんだろう』って思うこともある。毎回新鮮な気持ちで臨めています」
武藤「一瞬ちょっとセリフの間があいて、勢いを止めてしまったことがあったんですが、その瞬間めちゃくちゃ焦って、『どうにかしなきゃ!』って、アドレナリンが出まくりました。でも奇跡的にちょうどマイトも焦りを感じる場面だったので、なんとか乗り切れたんですよ」
大倉「ひとり語りに近い長台詞だったから、助け船を出したくても出来なかった」
杢代「僕も稽古の時からずっとマイトの隣にいたけど、念を送るぐらいしか出来なかった。僕自身も、結構セリフを噛んだりはしていましたし……」
大倉「そういえば、舞台上ですっ転んだ和人を見て、潤くんが一番喜んでた!」
杢代「え~っ? 喜んでたの?!」
武藤「いや、喜んでない、喜んでない! めちゃくちゃ心配してたよ!」
杢代「でも意外と僕自身は『あ、転んじゃった!』みたいな感じだったんだけどね」
大倉「立て直し方がめちゃくちゃすごかった」
武藤「早かったよな」
杢代「僕は失敗してもワンチャン、『無かったことにならないかなぁ』と思ってやっているんです。『え? 僕、噛んでませんけど……?』って(笑)」
大倉「和人は本当にすごいですよ。『今のは大丈夫っしょ』って。逆にちょっと落ち込んだ時は、『うわぁ噛んじゃったなぁ……いや、大丈夫、大丈夫!』って自分に言い聞かせてる」
杢代「割と僕は失敗してもすぐに立て直せるというか、普段から『行ける!大丈夫!大丈夫!行こう!』って、意識的に切り替えるようにしています。今回はそれを舞台上で改めて確認できた感じはあります」
大倉「父親役の福井(貴一)さんがあまりにもすごすぎるから、僕も『これは絶対ミスれないぞ……』ってプレッシャーが半端なかったです」
杢代「そのプレッシャーに打ち勝てるのは本当にすごいよ!」
大倉「でもさ、そのシーンが終わるたびに毎回下手から上手にいる2人のところまで行ってたよね」
武藤「わざわざね(笑)」
杢代「そう、わざわざ会いに来てくれるんだよね」
大倉「2人から『めちゃくちゃよかったよ!』って言ってもらえると、自分でも『本当? うわぁ、よかった~!』って安心できるんです。ノーミスで乗り切れたのは、2人のおかげでもあるんです」
杢代「舞台裏の僕たちの姿を見たら、きっと『全然緊張してないじゃん!』って感じると思う」
大倉「でも僕たちとしてはそうすることで1回リセットしているところもあるよね」
杢代「そうそう。逆にそうじゃないとやっていられないくらい、緊張しちゃうっていうのもある」
大倉「一旦リラックスしてから、出番が近づいた頃にまたお互い一人の世界に戻って、しっかり集中するようにしていましたね」
杢代「これができるのも、やっぱり同じグループだからこそだと思います」
武藤「そうだね。1人ずつの仕事だったら、きっと乗り超えられなかったと思います」
大倉「父親に自分の思いを伝える場面は、何回やっても終わると必ず胃が痛くなりました(苦笑)。父親に反抗していたオウタが、ある意味初めて自分の心をひらくシーンでもあり、物語のなかでも大事なパートの一つだし、僕自身にとっても一番の見せ場になるので……」
杢代「僕は、意外と3、4公演目あたりが一番大変だったかもしれません。1、 2公演目でひと通り流れがわかってくると、だんだん欲が出てくるというか『ここは自分なりにもっとこうやりたい!』っていう気持ちになるんです。でも、『ここをこうしたらもっと良くなるぞ!』って自分で思いながらやる時って、大抵あまり良くならないものなんですよ(笑)」
大倉「その気持ちをグッと抑えるのに葛藤するよね」
杢代「そう。自分の自我が出ちゃうとうまくいかない。僕は潤くん演じるマイトの親友役あり、マイトから熱量をもらって僕自身もだんだん変わっていくという役どころなので、自分ひとりでいくら大げさにやろうとしても、浮いてしまうことに気付きました」
大倉「よく和人と潤くんが相談しているのを見かけたもん。和人から『俺はこうしたいんだけど、潤くんどう思う?』って聞きにいったり、逆に潤くんから和人に言いにいったりして。2人だけのシーンだからこそ互いに支え合っている感じは、傍から見ていても分かりました」
武藤「僕が大変だったのは第一幕と第二幕の幕間。ようやくミュージカルを一緒にやってくれる仲間が集まったところで一幕が終わり、二幕の頭ではそれぞれのキャラクターの過去や人となりを掘り下げていくんです。一幕で高まったマイトの気持ちや勢いを途切らせることなく二幕に繋げるためには、どうバランスを取るべきなのか、幕間に一人で考えていました」
大倉「確かに、潤くんは幕間だけは舞台袖に残ってたよね」
杢代「そう。皆は休憩している時間帯で、舞台裏に残っている人は誰もいないんですけどね」
大倉「僕たちは身体を休めたり台本を確認したりしながら反省会をしてるんですけど、潤くんだけは『俺はちょっとここに残るわ』って」
杢代「そうすると演出家さんに『あれ? 潤どこ行った?』って聞かれて、たいてい僕が探しに行くことになるので、『なんで戻ってこないの?』とも思いますけど(笑)。でも結果的にそれが良い舞台につながるので、思い思いの過ごし方をするのもすごくいいと思います」
大倉「僕なりに手ごたえは感じられたんですが、初演のときはまだオウタを演じるうえで少し余計なことを考えていたような気がします。どんな場面でも高校生なりのモヤモヤみたいなものを理由にしていたから、どこか感情が出しずらくなっていた部分がある。再演では、もっと素直にフラットな状態で、オウタという役に向き合っていきたいです。初演より会場が広くなる分、もっともっと熱量を出して客席の皆さんにもその熱が伝わるように精一杯頑張りたいと思っています」
杢代「僕は比較的セリフは少ないものの、基本的にはマイトと一緒に舞台上に出ずっぱりで、マイトの熱量に巻き込まれていく。男子高校生の気持ちが動かされる瞬間って、綺麗ごとじゃなくて、やっぱり本心が伝わった時だと思うので、そこを大切にしつつ、リピーターの方にも、初演より再演の方が満足度が高かったと感じてもらえるような舞台にしたいです」
武藤「この作品は、『ミュージカル部を作りたい!』という強い思いを持ったマイトと、『将来のために今は勉強を頑張らなきゃいけないんだ』という先生たちとのぶつかり合いをしっかりと描きながら、コメディの要素や青春っぽさも、存分に味わえるミュージカルです。初演で学んだことを活かしつつ、より多くの方々に感動を届けられるように気合いを入れて頑張ります!」
Writing:渡邊玲子
STAGE
日程:10月29日(金)~11月7日(日)
劇場:新国立劇場 中劇場
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