── 映画『旅するボール』で主役・小雪を演じた西畑澪花は、スクリーンで観たときよりも背が伸びて、ずっと大人びて見えた。しかしインタビューがはじまるとやや緊張気味。それもそのはず、女優としてキャリアをスタートさせたばかりの中学１年生。まずは主演が決まったときの話を聞いてみた。

「あの日は学校から帰ったら母から電話がきて、主演に選ばれたことを知りました。最初は嬉しいのと安心した気持ちで“よかったーーー！”と喜びました。家に帰ったら母も同じくらい喜んでくれていたのも嬉しかったですね。電話越しだとわりといつもどおりな感じで話していたから(笑)。でも、いざ決まってみると今度は“私に出来るのかな？”っていうプレッシャーがジワジワとわいてきました」

── 西畑が演じた小雪は、両親と一緒に仮設住宅で暮らす女の子。東日本大震災で家を失い、仕事が決まらない父とパートで生計を立てる母と暮らしている役柄だ。本作が初の映画出演だが、脚本を読み、どんな役作りを心がけたのだろうか。

「小雪は自分もつらい状況のはずなのに、仕事を失って笑顔が消えたお父さんを心配するような心の優しい子でした。一人っ子という設定なので、3人兄弟の長女の私には共感しづらい部分もあったけれど、家族を思う気持ちや“私がお父さんを勇気づけなきゃ”という責任感のもとに行動を起こす部分は似ているなって。私が小雪と同じ境遇になったときに、お父さんのためにお父さんの同級生を尋ね歩ける気がするから。役作りはとにかく考えました。きちんと考えて、まず自分が思う小雪を演じてみようと思って。わからないからと考えもしないで監督に相談するのは違う気がして」

── 初の映画にして、初の主演。プレッシャーも相当のものだったが、そこで支えになったのはベテランの共演者たちだったそう。

「NGを出してしまうこともあって、みなさんにご迷惑をかけたと思います。お母さん役の中嶋（朋子）さんはさりげなくフォローしてくださって、“ここではちょっと低い声で話したほうがいい気がするよ”など、演技についてアドバイスをいただきました。先輩がたのおかげで演じきることができたと思ってます」

── そして映画の舞台は東北。撮影も現地で行われ、被災地にも足を運んだ西畑。

「震災当時、私は自宅に１人でいて怖くてしかたなかった。あれから１年以上たってから被災地に行ったのですが、本当に何もないんです……。新しく家が建っているわけでもなくて。別のところでは、がれきがそのまま残っている場所もあって、時が止まったままという感じでした。あのとき見た光景は絶対忘れない」

── だからこそ映画を通して伝えたいことがある。

「家族がいることのありがたさや、震災で人や生活がどう変わってしまったか、今自分たちに何ができるか……そういったことを知るきっかけ、考えるきっかけになる映画だと思います。小さなことだけど、私ももうちょっと妹や弟にやさしくしてあげなきゃなって思ったり」

── また、このスクリーンデビューをきっかけに活躍の場は広がるばかり。将来の目標について聞いてみると……。

「今日は、このインタビューの前にCM撮影をしてきました。CMも初めてのことだったので緊張しました。これから新しいことがたくさんあると思いますがとにかく一生懸命がんばりたいです。演技では妹役を演じてみたいかな。そうすればもっと妹の気持ちを理解できるようになれそうだから兄弟ケンカも減りそう(笑)。将来は、竹内結子さんのようなかっこいいけど女性らしい女優さんが目標です！」