TV
内野聖陽 ドラマ「どこにもない国」試写会!
同作は、終戦後、旧満州に取り残された150万を超える日本人の帰国を実現に導くためにわが身を捨てて奔走した3人の男たちを中心に描かれる物語。
国家から見捨てられた同胞を故郷へ帰すための男たちの命がけの戦い、そしてそれを支えた妻たちの愛。複雑怪奇な冷戦下の国際情勢に翻弄されながら奇跡とも言われた引き揚げは、どのようにして実現に至ったのか―。歴史の陰に埋もれてきた戦後秘話を中国ロケも交え、壮大なスケールでドラマ化される。
内野は、同作の主人公・丸山邦雄を演じる。丸山は政治学を学ぶため大学卒業後、米国に留学。政治学の研究者を志すが、軍国主義下の言論統制に嫌気がさし、満州に新天地を求める。終戦時には鞍山にある満洲製鉄に勤務。終戦後、同胞の窮状を見かねて、満州脱出を計画する。
会見にて内野は、「私も戦争を知らない世代の人間でして、戦争の悲惨さは学習を通して知ってはいるつもりでした。本土の空襲の話、広島・長崎の原爆、あるいは沖縄地上戦の悲惨さなど、知識として知ってはいましたが、実は満州の引き揚げについての知識はほとんど皆無で、今回初めて知りました。いろいろな資料を読む中で、満州では、寒さ、飢え、病気、暴力というまさに生き地獄が展開されていたことを知りました。そして、そこから150万人もの日本人を救うために立ち上がった男たちがいたこと自体も知らず、これは凄まじいお話だな、いま演じる価値があるのではないかと思って二つ返事でやらせていただきました。あの悲惨な敗戦ムードの中で、男たちが負けない魂で行動していったことに勇気付けられ、パワーを感じました。観ている皆さんにも、そういったパワーが伝わればいいなと思ってやらせていただきました。」とコメント。
“いま演じる価値があるのではないか”と思った理由を、「日本の政府の人々すらも戦争を知らない世代で構成されている国になってしまいつつあるわけで、私も戦争というものを知識でしか知らない世代。そういう中で平和を訴えようという時に、自分の中に説得力がない感じが常にありました。どのように平和を訴えていけばいいのだという思いもあって、その中で唯一の救いは私たちの想像力というか、そこがこれからの戦争を知らない世代が背負っていく一番大事なことなのかなと。日本だけではなく全世界中で戦争による負の遺産というものを持っていますが、満州引き揚げに関して言えば、長野県に満蒙開拓平和記念館という施設があります。私はそこに行ってすごく感動して、歴史や、政治、国策、いろいろなことを考えさせられました。これからの時代、戦争を知らない人たちに平和を訴えかけていくには想像力に働きかけていくしかないのだろうと感じます。私たちは負の遺産みたいなものを学習していかないと、本当の平和を語れないのかなという思いが自分の中にあって、このドラマが何も知らない人のきっかけになるといいなと思います。大真面目に話をしていますけど、これはエンターテインメントですので(笑)楽しめる作りにはなっています。ただ、この作品をきっかけに僕と同じように満州の悲惨さを知らなかった人達にも、満州のことを知りたい、おじいちゃんおばあちゃんに話を聞いてみたいと思ってくれると嬉しいという気持ちが心のどこかにあります。」と語った。
同作では3人の男たちを中心に描かれているが、丸山の妻・万里子をはじめとする女性の存在が物語にどう影響していくかと聞かれ、「丸山が日本へ危険な旅路に出た後の、(万里子が言う)“私は彼を待っているのではないのです。私は彼を信じているのです”というセリフが凄く印象的でした。女性として受身の態度ではなく、彼の生き方を信頼してしまっているというところがあって、夫婦のつながりってすごく素敵だなと思いました。丸山は彼女がいたからこの危険な旅路を行うことができたと思います。私の勝手な設定ですが、前編で丸山の首に奥さんが付けるロザリオのマリア像こそが奥さんの存在。後編はそれを握り締めながら日本で頑張っていくのですが、丸山はいつも奥さんを思わせるものを首にぶらさげ、そういう形で彼女の存在を想って演じていました。」と振り返った。
その後、資金力に富む実業家で丸山の同志となる新甫八朗を演じた原田泰造さんに、内野が満州の資料を貸したという話題が上がり、「原田さんに貸した本のタイトルは忘れてしまいましたが(笑)、とにかく歴史的事実を知らなければこのフィクションを作れなかったのでたくさんの資料を読みました。満州の方々が苦労されたことが書かれた手記がたくさん残っていて、(引き揚げでは)150万人を救出したとありますが、150万人いれば150万人の“満州”があるんです。ですから、私が勉強したのは数十人、数百人という世界かもしれないですし、知らないこともあると思うのですが、こんなに悲惨なことがあったんだと涙なくしては読めないような内容がいくつもありました。その一部を原田さんにご紹介しました。」と明かした。
最後に、自身の役作りについて、「とにかく満州の悲惨さを知らなければならないということで、まずは残された方々の事実を書いた手記や資料を読みました。そして、自分の家族にこういうことがあったらどうなんだ、愛する娘やお父さんを荒野に置き去りにせざるを得ない状況はどうなんだということを自分に置き換え、その悲しさを自分の中に取り込んで、ここからなんとか脱出せねばならんという気持ちにさせていきました。」と話した。
特集ドラマ「どこにもない国」は、【前編】3/24(土)21:00~、【後編】3/31(土)21:00~NHK総合にてO.A。
ぜひご期待ください!
【ストーリー】
ソ連占領下の旧満州。全財産を失い、略奪暴行にさらされ、日本との通信連絡も途絶し人々は暗闇に取り残された。一日平均 2,400人が命を落とす極限状況を打開するために立ちあがったのは無名の民間人だった。丸山邦雄(内野)は自らが使者となって日本へと脱出し、窮状を訴え、日本を、そしてアメリカを動かすしかないと決意する。英語が堪能な丸山。資金力に富む実業家、新甫八朗(原田泰造)。中国語に堪能で快活な若者、武蔵正道(満島真之介)。チームを組んだ三人は、妻や家族を満州に残し、幾多の絶体絶命のピンチを乗り越え、遂に脱出に成功。吉田茂(萩原健一)、マッカーサーに早期の引き揚げを直言、さらにラジオで引き揚げの緊急性を訴え世論を大いに喚起していく。遂に、100万を超える在留邦人の満州からの引き揚げは実現した。その中には丸山の妻・万里子(木村佳乃)、新甫の妻・マツ(蓮佛美沙子)の姿もあった。だが、彼らを救うために闘った3人の男がいたことを殆どの在留邦人は知る由もなかった。
(敬称略)