葵わかなが、10月より上演される舞台『セツアンの善人』で主演を務めることが発表された。

世田谷パブリックシアターでは、10～11月に、芸術監督・白井晃氏演出による『セツアンの善人』が上演される。同作は、第二次世界大戦中、ナチスにより市民権を剥奪されたドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが亡命先で執筆した作品で、スイスのチューリッヒで1943年に初演され、いまでも世界各地で愛され続けているファンタジックな要素も楽しめる寓意劇。ブレヒトは、第一次世界大戦への徴兵経験から、反戦を訴える作品や、資本主義を風刺した作品など、社会性の強い戯曲を多く世に送り出したが、それと同時に叙事的演劇や異化効果といったメソッドも提唱し、その偉大な功績から20世紀最大の劇作家と称されている。そうしたブレヒトならではのエッセンスが『セツアンの善人』にはふんだんにちりばめられ、舞台ならではの醍醐味が堪能できる作品になっている。

同作は、畏怖すべき象徴の神様たちが、人間臭い立ち居振る舞いで下界に現れて「善人探し」をするという奇想天外な設定からスタートする。貧民窟に暮らす心優しき娼婦のシェン・テ（葵わかな）は、神々から「善人である」と認められ、褒美として与えられた大金を元手に商売をはじめるが、「善人であること」と「生きること」の両立は矛盾することだらけで、さまざまな困難が立ちはだかる。元来がお人好しのシェン・テの家には居候が増え続け、しまいには自分の財産まで分け与えてしまう始末。このままではいけない、我が身が滅びるだけだと悟ったシェン・テはある計画を思いつきます。それは、冷酷にビジネスに徹する架空の従兄（いとこ）シュイ・タ（葵わかな・二役）を作り出し、自らがその従兄に変装をして、邪魔者を一掃するというものだった。
「人はどこまで善人でいられるのか」「人はお金で幸せになれるのか」という現代社会に生きる私たちにも響く痛切な問いかけが、葵が一人二役で演じ分ける、心優しき女性シェン・テと、ビジネスに徹する冷酷な青年シュイ・タという真逆な人物を通して描き出されていく。
また、劇中にはミュージシャンのライブ演奏もあり、数々のミュージカルに出演してきた葵ならではの歌声も聴くことが出来るという、見どころ、聞きどころ満載の舞台になる予定だ。

出演にあたり葵は、「世田谷パブリックシアターに立てる事がとても嬉しいですし、白井さんが演出される世界に飛び込む事にとてもワクワクしています。 私が演じる役は、お話の中で別の人物を演じ、周りを信じ込ませる役どころなので、難しさもあると思いますが、挑戦できることに喜びを感じています。稽古の中で試行錯誤しながら、白井さんや共演するキャストの皆様と、作品を創り上げられたらと思います。」とコメントを寄せた。

『セツアンの善人』は、2024年10～11月世田谷パブリックシアターにて、11月兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。
ぜひご期待ください！